後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔192〕日本最高の画家のひとりでした。「没後50年 藤田嗣治展」(東京都美術館)

2018年08月16日 | 美術鑑賞
 健康維持、体力保持のためにやっていることが4つあります。週2回のバドミントン、月2回の駅頭演説とチラシ配布、年4回の地域チラシ配布、そして年数回の東京都美術館無料鑑賞です。東京都立の美術館では第3水曜日は65歳以上はただになります。
 美術館での鑑賞がなぜ健康維持に繋がるのでしょうか。まず家を朝の8時頃出て、猛暑のなか上野に行かなくてはなりません。美術館に着くのが9時20分頃でしょうか。開場は9時半ですが、9時20分頃から入場が始まります。今回の藤田嗣治展はさすがに人気があるようで、入場まで30分かかりました。もう少し早くから並べばすぐに会場には入れるのですが、早朝とはいえ暑いなか並ぶのもなかなかしんどいことです。今回の藤田嗣治展は見所満載で、見終わるのに一時間半ほどかかってしまいました。いつもの二倍近くの時間を要しました。
 昼食を摂って帰りに本屋でも寄れば、家につく頃にはけっこうぐったりします。これを年間数回でも続けることは確実に体力維持に繋がるのです。もちろん一番の利点は知的好奇心を大いに刺激してくれることです。東京近隣にお住まいの方、シニアデイお勧めです。

 さて今回の藤田嗣治展、かつてなかった史上最大級の大回顧展です。その概要を展望してみましょう。

■没後50年 藤田嗣治展(東京都美術館HPより)
 明治半ばの日本で生まれ、80年を超える人生の約半分をフランスで暮らし、晩年にはフランス国籍を取得して欧州の土となった画家・藤田嗣治(レオナール・フジタ 1886-1968)。2018年は、エコール・ド・パリの寵児のひとりであり、太平洋戦争期の作戦記録画でも知られる藤田が世を去って50年目にあたります。この節目に、日本はもとよりフランスを中心とした欧米の主要な美術館の協力を得て、画業の全貌を展覧する大回顧展を開催します。
 本展覧会は、「風景画」「肖像画」「裸婦」「宗教画」などのテーマを設けて、最新の研究成果等も盛り込みながら、藤田芸術をとらえ直そうとする試みです。藤田の代名詞ともいえる「乳白色の下地」による裸婦の代表作、初来日となる作品やこれまで紹介されることの少なかった作品も展示されるなど、見どころが満載の展覧会です。
○みどころ
1. 史上最大級の大回顧展
 没後50年の節目の機会に相応しく、史上最大級の規模で、精選された作品100点以上を展示します。
2. 欧米の主要な美術館所蔵の藤田の代表作が来日!
 パリのポンピドゥー・センターや、ベルギー王立美術館、アメリカのシカゴ美術館など、欧米の主要な美術館から、初来日作品も含め約20点の代表作が集います。
3. 藤田の代名詞ともいえる「乳白色の下地」による裸婦10点以上が集結!
 数年前に修復を終えた大原美術館の《舞踏会の前》や東京国立近代美術館の《五人の裸婦》など国内の代表作に加え、海外からも1920年代の最盛期に描かれた「乳白色の下地」による裸婦像が集います。
4. 上野に藤田が還ってくる!
 東京美術学校(現・東京藝術大学)で学び、昭和前期に日本に帰国した際には東京都美術館にて展示の機会を重ねた藤田にとって、上野は画家としての原点といえます。藤田の回顧展が上野、東京都美術館で開催される初めての機会です。


 いつもより鑑賞に二倍の時間が掛かったというのは、それだけ内容が濃かったからです。藤田はこんな絵も描いているんだ、という驚きで、ついつい解説文を丁寧に読むことになったのです。しかも鑑賞者が多いのでこれを読み切るのも難儀です。
 1990年代、藤田の作品が多く所蔵されているパリ市立近代美術館に初めて足を運んだとき、残念ながらお目当ての展示の部屋が改装中で涙をのんだことがありました。数年後再びここを訪ねたのですが、藤田作品は2点ほどしか展示されていませんでした。
 ところが今回、何と126点の作品が展示されているのです。(一部は期間限定ですが)
構成は次のようです。(配付資料より)

Ⅰ 原風景-家族と風景
 Ⅱ はじまりのパリ-第一次世界大戦をはさんで
Ⅲ 1920年代の自画像と肖像-「時代」をまとうひとの姿
 Ⅳ 「乳白色の裸婦」の時代
 Ⅴ 1930年代・旅する画家-北米・中南米・アジア
 Ⅵ-1 「歴史」に直面する-二度の「大戦」との遭遇
 Ⅵ-1 「歴史」に直面する-作戦記録画へ
 Ⅶ 戦後の20年-東京・ニューヨーク・パリ
 Ⅷ カトリックへの道行き

 まずは「Ⅰ 原風景-家族と風景」の4点はほぼ東京藝術大学時代の油彩画です。指導教官の黒田清輝の黒を使わない描写方法を駆使しているようです。キュビズムの作品、ユトリロを想起させるパリの街角の作品、モジリアーニふうの作品など、様々な技法を駆使して線と影の「乳白色の裸婦」に到達します。その変遷が実に興味深いのです。
 「Ⅴ 1930年代・旅する画家-北米・中南米・アジア」から「Ⅷ  カトリックへの道行き」あたりの藤田の画業については他の展覧会で部分的に見てきたことではあります。そして、ポンピドゥー・センターやシカゴ美術館や東京国立近代美術館などには何回か足を運んでいるので、こちらの作品も目新しいことはないのですが、今回の収穫はなんといっても、藤田嗣治の全貌をほとんど余すことなく俯瞰で捉えられることです。

 藤田嗣治は間違いなく日本最高の画家のひとりでした。

〔191〕懐かしい西口敏治さんの『詩が好きになる教室』(さ・え・ら書房)に偶然出合いました。

2018年08月13日 | 図書案内
 池袋での「埋めるな!辺野古 沖縄県民大会に呼応する8・11首都圏大行動」が東池袋中央公園で開催されたことは前ブログで書いたとおりです。その集会後、公園からごく近い、おそらく日本で一番大きなブックオフに「避暑」のためもあり滑り込みました。そこで2冊の本を買い求めました。山中恒『クラマはかせの なぜ』(偕成社)と西口敏治さんの『詩が好きになる教室』です。2冊とも安価の上に、なんとこの日から三日間、ブックオフでは全部の本が20パーセント引きなのでラッキーでした。
  『クラマはかせの なぜ』は私の大好きな本で、教室での読み語りの定番でした。この本が古本できれいな状態で安価な時は、つい買ってしまうのです。知り合いの子どもたちに分けても惜しくありません。もうすでに2冊は買ったでしょうか。今回の本は孫にあげるためです。先日、「山中恒 おもしろ童話」シリーズの『おとうさん×先生=タヌキ』を手に入れたばかりでした。シリーズが2冊揃うとけっこう豪華に見えるものです。

 さて、本題は『詩が好きになる教室』です。
 この本が出版されていたことは知っていましたが手に取る機会はありませんでした。
 さ・え・ら書房では、「さ・え・ら図書館」というシリーズを出していました。このシリーズはなかなかおもしろくて、何冊か私の本棚にも並んでいます。村田栄一『ことばあそびをしよう』、植垣一彦・向井吉人『作文わくわく教室』、長谷川孝・大沢和子・原正『新聞をつくろう』、石毛拓郎『詩をつくろう』、松丸春生『朗読をたのしもう』…。小学校や中学校での実践が元になって書かれた本が多く、読んでいて楽しいものばかりでした。個人的にもお付き合いのある人たちが書かれていたので親しみもあり、内容的にも信頼置けるものだったのです。
 『詩が好きになる教室』(1995年)はそのシリーズの後半に出版された本でした。著者は西口敏治さん、実は私の新卒時代ですから、もう50年近く前に出会っているのです。1972年、新卒の時に4年ほど日本生活教育連盟(日生連)に参加していました。そこで妻と出会い、2人で板橋の火曜会という月1回のサークルの事務局を引き受けていました。
 日生連の東京での冬の集会の時でした。2,30名の全体会の前に、数人での実践交流会がありました。そこで各人の実践発表をするように求められていました。サークルの中心は教育実践者として名高かった鈴木孝雄さんでした。名著『学級文化活動と集団づくり』(明治図書)を既に出版している方でした。連れ合いの学年主任で、結婚式にも参加していただいたのですが、40代半ばで若くして亡くなられたのです。
 私が「私の半年の実践」か「学級新聞づくり」といった発表をしたとき、日生連では名が知れていた実践者に、内容は全く忘れてしまったのですがそれを批判されたのです。それに対して反論してくれたのが西口敏治さんでした。彼は当時私立和光学園で教師をしていました。
 彼と再会したのはそれから20年以上たった、たぶん1990年代の半ばのことでした。村田栄一さんの『授業からの解放』(雲母書房)などの合同出版記念会に参加したときに、彼も来られていたのですが、日生連での出会いの顛末については覚えておられなかったようでした。当時、『詩が好きになる教室』を出版した頃だったのではないでしょうか。

 『詩が好きになる教室』なかなか良い本だなと思いました。どんな本なのか、アマゾンにはこんなことが書かれていました。

*内容(「BOOK」データベースより)
 すきな詩をさがしてきて暗唱し、みんなの前で発表する―単純なこのくり返しの中で、詩が大すきになっていった子どもたちの、成長の記録。本書には、子どもたちが好んで口ずさんだ詩が長短あわせて57編つまっている。
*内容(「MARC」データベースより)
 国語の授業の中で、詩の暗唱と発表を続けて二年。詩に興味も関心もなかった西口学級の生徒たちは、たがいに影響しあい、すっかり〈詩が大すき〉な子どもに変わりました。五年生の少女志織の目をとおした、物語仕立ての実践記録。
 
 前半の紹介は、ほぼ本の扉に書かれていることです。
 後半の紹介文は厳密には修正が必要です。彼はお茶の水大学附属小学校に非常勤講師として入り、5年生3クラスの国語の授業の一部を担当したらしいのです。4月だけで15時間ということですから、1クラス週3時間程度でしょうか。授業内容としては、朗読、詩の暗唱と発表、ことば遊び、作文、漢字の5つの「仕事」です。「仕事の計画表」を子どもたちに配ったといいますから、おそらくフレネ教育的な実践といっていいのでしょうか。全般的に教師の教えより子どもの学びを重視する考え方が行き渡っています。
 西口さんの実践を引き継ぎ発展させたのが浅川陽子さんという方だそうです。彼女の実践もこの本の中に生かされていますが、後に『ことばの生まれ育つ教室―子どもの内面を耕す授業』(金子書房 2005/12)などの本も出版されています。

 実践は、自分で詩を選び、それを暗唱してみんなの前で発表するという行為から、詩の創作まで踏み込みます。この本に散りばめられた57編の素敵な詩を読むだけでも幸せな気持ちにさせられます。一番多く取り上げられた詩人は8編の谷川俊太郎さんです。彼がオビにこんなことばを寄せています。

 子どもが生きてる、先生が生きてる、教室がよみがえる。詩の声が学校に風穴を開けた。
                               谷川俊太郎




〔190〕「翁長さんの遺志を継ぐ」沖縄県民大会に呼応する8.11首都圏大行動、池袋に2800人参集!

2018年08月11日 | 市民運動
 東京では依然猛暑が続き、降雨も予想されるなか、清瀬の仲間3人でサンシャインの東池袋中央公園に着いたのが11時半少し前。ここでの集会は私たちにとって初めてのことでした。木々に囲まれているとはいえ、少しでも木陰を求めて多くの参加者が既に集っていました。手渡されたチラシはざっと30枚、林立している市民団体、正当、宗教団体、労働組合などの幟は200を越えていたのではないでしょうか。
 この集会の趣旨について「総がかり行動実行委員会」は次のように書いています。

●戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会〔チラシより〕
2018/08/11 埋めるな!辺野古 沖縄県民大会に呼応する8.11首都圏大行動(東京・豊島区)
 政府・沖縄防衛局は、新たな米軍基地建設のため、8月に美しい辺野古の海に土砂を投入すると発表しました。
 辺野古・大浦湾は262種の絶滅危惧種を含む5,800種以上の海洋生物が生息する豊かな海です。
 この夏にも埋められようとしているところは、ジュゴンの食料の海草がたくさん生えている、いわばジュゴンの餌場です。
 貴重なサンゴも確認され、浜はウミガメの産卵場です。
 埋め立てれば、それらの貴重な生物はすべて生き埋めにされてしまいます。
 このままでは、取り返しがつかないことになってしまいます。
 一方で、大浦湾の底はマヨネーズ状の軟弱地盤で、活断層の存在も明らかになりました。
 そこに米軍基地を建設することは大変危険なばかりか、工事費のさらなる増大が予想されます。
 当初の工事費試算は3,500億円でしたが、現在は1兆円を超える予想です。
 「森友の8億円」もそうですが、これらはすべて税金です。
 また、辺野古には54.52メートルの「高さ制限」を超える建造物が多数あることが報道されました。
 そこには、沖縄の子どもたちが通う学校や民家も含まれます。
 政府はこれをも無視して、違法な工事を強行しようとしています。
 止めるのは、今です。
 沖縄では、8月11日に奥武山公園で大規模な県民大会を計画しています。
 首都圏の私たちも、これに呼応して、沖縄と同時刻にアクションを起こします。
 多くの皆さんの参加を呼びかけます。

埋めるな!辺野古 沖縄県民大会に呼応する8.11首都圏大行動
と き◇8月11日(土)11:30集合 12:30デモ出発
   ◆県民大会の一部中継予定◆
ところ◇東池袋中央公園
    東京都豊島区東池袋3-1-6
    サンシャイン60隣り
    最寄駅◇地下鉄有楽町線「東池袋」駅5分
        JR・地下鉄・西武線「池袋」駅15分
    地図→https://loco.yahoo.co.jp/place/g-EqPUozcSlTg/map/
主 催◇沖縄県民大会に呼応する8.11首都圏大行動実行委員会
協 賛◇「止めよう!辺野古埋立て」国会包囲実行委員会
賛 同◇戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会
連絡先◇電話090-3910-4140(沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック)
    http://www.jca.apc.org/HHK/

<沖縄県民大会に呼応する8.11首都圏大行動実行委員会 参加団体>
 ピースボート
 辺野古アクションむさしの
 辺野古の海を土砂で埋めるな!首都圏連絡会
(アジア・ヒストリー
 安倍政権にNO!東京・地域ネットワーク
 沖縄と東京北部を結ぶ集い実行委員会
 沖縄の自立解放闘争に連帯し反安保を闘う連続講座
 沖縄の闘いと連帯する東京東部集会実行委員会
 沖縄のたたかいと連帯する東京南部の会
 沖縄への偏見をあおる放送をゆるさない市民有志
 <語やびら沖縄>もあい練馬
 三多摩ピースサイクル
 三多摩労組争議団連絡会議
 静岡・沖縄を語る会
 島ぐるみ会議と神奈川を結ぶ会
 Stop!辺野古埋め立てキャンペーン
 戦争・治安・改憲NO!総行動実行委員会
 戦争法廃止・安倍たおせ!反戦実行委員会
 中部地区労働者交流会
 南部地区労働者交流会
 バスストップから基地ストップの会
 日韓民衆連帯全国ネットワーク
 辺野古土砂搬出反対!首都圏グループ
 米軍基地に反対する実行委員会
 平和を実現するキリスト者ネット
 辺野古・高江を守ろう!NGOネットワーク
 辺野古への基地建設を許さない実行委員会
 北部労働者共同闘争会議)
(五十音順7月9日現在)

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土砂投入阻止に向けた沖縄県民大会
日時:8月11日(土)午前11時~
場所:那覇市奥武山(おうのやま)公園陸上競技場
   アクセス→https://goo.gl/rnbtwP
主催:辺野古に新基地を造らせないオール沖縄会議


 スピーカーの状態が必ずしも良いとは言えず、語り手の顔を見ることができず、内容が伝わりにくかったのが残念でした。しかし、カンパを集めていた女性が、おそらく70代後半であろうことに感動したものでした。
 この集会は2800人とのこと、【琉球新報電子版】は次のように伝えました。

■「翁長さんの遺志を継ぐ」 全国20以上の地域で県民大会連帯の集い 東京・池袋には2800人(主催者発表)2018年8月11日 14:20【琉球新報電子版】

【東京】沖縄での県民大会に連帯する「埋めるな!辺野古 沖縄県民大会に呼応する8・11首都圏大行動」が11日、都内の東池袋中央公園で開かれた。
 翁長雄志知事の死去を悼み、辺野古新基地建設で17日に予定される土砂投入への反対を確認し合った。
 約2800人(主催者発表)の参加者らは「翁長さんの遺志を継ぐ」などのプラカードを掲げて池袋駅前をデモ行進し、新基地反対への連帯を沿道に訴え掛けた。
 集まりでは首都圏のほか、北海道・帯広から東北、中部、東海、関西、福岡など全国20以上の地域でも県民大会に連帯する集まりがもたれたことが報告された。
 首都圏大行動では、沖縄環境ネットワークの花輪伸一世話人が主催者あいさつし「知事職務代理者により一刻も早く埋め立て承認が撤回され、17日からの土砂投入を中止させることを強く要請する。新基地建設絶対反対を私たち自身の問題としてとらえ、全国の市民と連帯して新基地建設を中止に追い込みたい」と述べた。
 集まりの冒頭には翁長知事に黙祷をささげた。沖縄の県民大会での謝花喜一郎副知事の知事職務代理者のあいさつが中継され、拍手が起こった。
 街頭デモでは「沖縄差別を許さない」「首都圏に住むわれわれの問題だ」「工事をやめろ」「サンゴを守ろう」「辺野古の海を土砂で埋めるな」などと沿道に呼び掛けた。
 沿道にはコール(呼び掛け)に応じて口ずさむ人や、辺野古新基地反対のチラシを手に取り中身に見いる人の姿もあった。



〔189〕難産の末『地域演劇教育論-ラボ教育センターのテーマ活動』(晩成書房)という本が出ました!

2018年08月01日 | 図書案内
 7月31日(火)に拙著の印刷が終了しました。そして本日、8月1日(水)その本が我が家にやって来ました。梱包を解いての第一印象は、明るい感じの本に仕上がったなということでした。晩成書房の社長、水野久さんのセンスです。さらに、採用させていただいたラボ教育センターのラボっ子たちの表現活動の写真が効いているなと思いました。今回の本は3回の校正もさせていただいているので、内容にはけっこう自信を持っています。近々大きな本屋さんには並ぶと思いますので、是非手にとっていただけると嬉しいです。
 どんな本なのか、まずは晩成書房のHPを覗いてみましょう。








●『地域演劇教育論-ラボ教育センターのテーマ活動』晩成書房HPより

 ラボ教育センターという魅力的な教育組織に出合ったのは1998年の夏のことだった。
 ラボ付属の言語教育総合研究所での研究活動を通して、ラボの活動が「優れた地域での演劇教育の典型」であることを確信するに至った。
 ラボ・テューターやラボっ子は活動のすべてに、私の提起する「ことばと心の受け渡し」を充満させ、他者とシンクロする「からだ」を兼ね備えていたのである。
 ここでは、子どもの生理や論理を優先させ、まさに「学びの地平」が拓かれつつあった。
 独創的で魅力にあふれたテーマ活動の一端でも紹介できたらという思いで出版を思い立った。(まえがきより)

まえがき
福田三津夫さんの新著に寄せて=松本輝夫
福田三津夫さんとの運命的な出会い=矢部 顕

第1章 地域の演劇教育─ラボの場合
■ラボ・ワークショップ全国行脚
1すべてはラボ教育センター本部から始まった
2ラボ・テューターとラボっ子から学ぶ
3各地でのワークショップ・アラカルト
4ラボ・テューターとラボっ子の「からだ」
■テーマ活動づくりとパーティづくり─ラボ・パーティ参観記
1研究テーマを設定する
2居場所づくりとテーマ活動─宇野由紀子パーティの巻
3テーマ活動「スサノオ」を創る─行松泉パーティの巻
4ことばとからだのハーモニー─高橋義子パーティの巻
5三つのラボ・パーティから視えたもの
■テーマ活動は地域の演劇教育
1演劇教育とは何か
2演劇教育の育てる力
3テーマ活動は地域の演劇教育
4テーマ活動は限界芸術の一つ
5テーマ活動における表現
■テーマ活動の表現を考えるための本

第2章 新・実践的演劇教育論
演劇教育の原点を探る1
高山図南雄の「あらためてスタニスラフスキー」
竹内敏晴『主体としての「からだ」』
鳥山敏子の教育実践
副島功の仕事
辰嶋幸夫のドラマ
渡辺茂の劇づくり「LOVE」
演劇教育の原点を探る2
寒川道夫の光と影
マリオ・ローディと演劇教育
演劇教育としての授業
大学の授業と演劇教育

あとがき
関連資料
初出一覧


 以上の紹介文は、まえがきの抜粋です。次に、まえがきの全文を紹介します。 
 

■まえがき

 ラボ教育センター(ラボ)という魅力的な教育組織に出合ったのは1998年の夏のことだった。
 その年、アジアで初めて、フレネ教育者国際会議(第22回)が埼玉県飯能市にある私立自由の森学園を主会場にして10日間にわたって開かれた。世界中から教師約170人、日本側のスタッフと参加者含めて約170人が集い、「学びの地平を拓こう」をメイン・テーマにした自主的自立的な教育研究集会になった。
私が参加したアトリエ(分科会)は「日本の昔話を身体表現で楽しむ劇活動による外国語習得」だった。ここでは主に外国からの教師を中心に日本昔話「おむすびころころ」を劇的に遊んで言語獲得を目差していた。その中心の指導者が、ラボから派遣された2人のラボ・テューターだった。(詳細は拙著『実践的演劇教育論』「演劇教育の広がり」)
この集会の報告を「演劇と教育」に掲載したことが、当時のラボの会長・松本輝夫さんの目にとまり、ラボ機関誌でのインタビューに応じたり、関西地区の講演を頼まれたりすることになった。
 その数年後、フレネ教育者国際会議の実行委員長だった村田栄一さんの出版記念会で松本さんと再会し、ラボ付属の言語教育総合研究所(言語総研)主催の竹内敏晴講演会に誘われた。
それ以来連続して言語総研に出席し、ほどなく正式な所員に迎え入れられることになった。
言語総研での研究活動を始めてからほぼ10年が経過した。この間、全国各地で私が講師に招かれての「ことばと心の受け渡し」ワークショップと、4箇所のラボ・パーティ訪問、各地区のテーマ活動(ラボの独特の劇的表現活動)の発表会を見学することができた。
こうした研究活動を通して、ラボの活動が「優れた地域での演劇教育の典型」であることを確信するに至った。ラボ・テューターやラボっ子はラボ・パーティという空間や、その中心的活動であるテーマ活動のすべてに、私の提唱する「ことばと心の受け渡し」を充満させ、他者とシンクロする「からだ」を兼ね備えていたのである。ここでは、子どもの生理や論理を優先させ、まさに「学びの地平」が拓かれつつあった。

私の師匠の一人、故・村田栄一さんが『ことばが子どもの未来をひらく』(筑摩書房、1997年)を出版している。これはラボ各支部での彼の講演記録を中心に構成されていて、ラボの活動を正面から紹介した貴重な1冊になっているが、この本以外には、外部からラボの活動を紹介した類書が見つからないのをかねがね残念に思ってきていた。そこで力不足を顧みず、独創的で魅力にあふれたテーマ活動の一端でも紹介できたらという思いで出版を思い立った。言語総研在籍10年で何が見えてきたのか、途中経過報告としてまとめてみることにしたのが第1章である。これらは学校教師の視点でのテーマ活動論であるので、ラボ関係者には当然異論があることを承知で報告させていただいた。大いに批判検討を加えていただきたいところだ。
そうしたなかで、巻頭言として、言語総研でお世話になった松本輝夫さんと矢部顕さんに、ラボの基礎を築いた谷川雁、鶴見俊輔、竹内敏晴、村田栄一との出会いと果たした役割について貴重な「証言」をいただいたことは望外の喜びである。

第2章では、「新・実践的演劇教育論」として、前著『実践的演劇教育論』で触れられなかった演劇教育の原点やその周辺のことについてまとめてみた。学校内外を問わず、演劇教育の根っことは何かを探ってみることになった。

本書が、地域での演劇教育の実践と理論を考える一助になることを期待している。

                              2018年5月 福田三津夫