後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔33〕神武天皇・ヤマトタケルが人名索引に! …今は中学校教科書の採択のとき。

2015年06月30日 | 市民運動
 「みんなで考える教科書採択(どうなる? どうする? 清瀬の教育)」という学習会が、6月28日(日)、清瀬駅近くのアミュービルで開かれました。講師はベテラン・元公立中学校教員で「大田の教育を考える会」世話人の朝倉泰子さんでした。
 学習会のタイトルは少し穏やかな感じですが、内容的には一般市民が知っておかなくてはならない、厳しい現実の教育状況でした。
 学習会のチラシには次のような案内が添えられていました。

 教育のあり方によって、社会の未来は変わります。そして、教育のあり方におおきな影響を及ぼすのが、“教科書”です。
 戦時中に使われていた「大東亜戦争」という言葉を「太平洋戦争」の代わりにあえて採用したり、憲法改正について2ページも割いたりしている、育鵬社の社会科(中学校)の教科書が、大田区で使われています。東京の教育、さらには日本の教育が少しずつ、現政権の思わくにしたがって戦争への道に組み込まれようとしています。
 今こそ、教育を、市民一人ひとりが自分自身の問題として真剣に考える時なのではないでしょうか。清瀬では8月に教科書が採択されますが、それに先駆けて、教科書の見本展示(6月19日~7月3日、中央図書館、竹丘図書館)があります。教科書を見比べて、是非ご意見をお書きください。
 歴史の真実をしっかり学び伝え、平和な世の中を築いていくために、教育、そして教科書について考えていきたいという思いから、この度、学習会を開催することにしました。清瀬の教育、日本の教育に関心をお持ちの方は、是非ご参加ください。

 14時きっかりに会は始まりました。教育問題ということで、司会は私がかってでました。
 まずは、主催者「清瀬・くらしと平和の会」の代表、清瀬市議の布施由女さんが、初登庁した6月議会の簡単な報告と講師紹介をしました。
 朝倉さんには教科書の具体的な内容に入る前に、「安倍政権の教育政策」について触れてもらいました。「教育再生実行会議とその提言」「教育委員会制度改悪」「道徳の教科化」「教科書検定制度の改悪」「教育政策の改悪は憲法改悪とめざす方向は同じ」という内容でした。1996年に新しい歴史教科書をつくる会が発足し、扶桑社の教科書が合格したのが2001年のことでした。東京では大田区、杉並区(現在は他社)、武蔵村山市などで扶桑社版が採用されたそうです。現在はこの「つくる会」が分裂し、扶桑社版を自由社が引き継ぎ、新しく育鵬社版が誕生しました。安倍首相や自民党が後押ししているのが育鵬社版です。全国シェアは自由社版はごくわずかですが、育鵬社版は4パーセントほどですが、これを10パーセントまで引き上げようと猛烈な売り込み運動を展開しているようです。
 朝倉さんは具体的な教科書の資料を使って、淀みなく、我々にわかりやすいように話してくれました。育鵬社の歴史と公民、現在清瀬で使われている東京書籍の歴史、清水書院の公民を比較して問題点をつかみ出してくれました。歴史では、日本の神話から始まって、日露戦争、日中戦争、戦後まで数多くの問題点を示してくれました。公民では日本国憲法から原発の問題まで、1時間半があっという間でした。
 2日後、つまり今日、中央図書館に出向き、教科書を閲覧して、アンケート用紙に記入してきたところです。数名の市民の方が閲覧しているので嬉しくなりました。「学び舎」の歴史教科書が並べられていました。現場の教師を中心に教科書づくりをして、ようやく合格させたものです。注目しておいてもいいと思います。
 それにしても、育鵬社と自由社には神武天皇が人名索引に載っているのでビックリしました。さらに育鵬社にはヤマトタケルも載っているんですよ。実在の人物だと思わせようとしているのでしょうね。
 教科書の具体的な内容については書くスペースがなくなりました。次のものなどを参考にしてください。

【参考資料】
⑴パンフ「ここが問題! 育鵬社・自由社教科書」発行・子どもと教科書全国ネット21
⑵「たみがよ通信」18号、2015年6月13日発行 「安倍政権の15教育法と教育現場」大森直樹
⑶「教育」2015年6月号 特集「問われる歴史認識と教科書」




〔32〕追悼・高瀬久男さん。刺激的で、難解なワークショップでした。

2015年06月24日 | 講座・ワークショップ
 演出家の高瀬久男さんが57歳の若さで亡くなられました。癌で闘病中という話はどこからか漏れてきていましたが、新聞の訃報欄を見たとき、人の世の無常を感じないではいられませんでした。
■毎日新聞(2015年6月2日)
訃報:高瀬久男さん57歳=演出家
 大胆で緻密な舞台を生みだした演出家で、毎日芸術賞・千田是也賞受賞者の高瀬久男(たかせ・ひさお)さんが1日、亡くなった。57歳。
 1980年に玉川大文学部芸術学科演劇専攻を卒業後、文学座演劇研究所に入所。85年に座員に昇格し、91年から1年間、ロンドンのナショナルシアターなどで研修を受けた。帰国後気鋭の演出家としての地位を確立し、2002年には文学座公演「モンテ・クリスト伯」で芸術選奨文部科学大臣新人賞を獲得し、翌03年には「スカイライト」「アラビアン ナイト」の演出で、千田是也賞を受賞した。12年の「NASZA KLASA」で読売演劇大賞最優秀作品賞を射止めた。子供向けの芝居も数多く手掛けた。
 近年はがんで闘病中だった。11日から始まる文学座公演「明治の柩(ひつぎ)」を演出中。5月26日に稽古(けいこ)場に来たのが最後となったという。

 私が所属する日本演劇教育連盟でも早くから注目していた演出家でした。冨田博之さんや副島功さんから、素晴らしく有能な演出家がいる、という話を聞いていました。訃報に「子供向けの芝居も数多く手掛けた。」とありますが、このあたりを劇団サイトは次のように書いています。
■文学座サイト 
 また子供向けの芝居も数々手掛けてきており、94年『あした天気になあれ!』(劇団うりんこ、脚本・演出)で第31回斎田喬戯曲賞受賞、96年『この空があるかぎり』(作・演出) では児童福祉文化賞(厚生大臣賞)を受賞するなど、この方面でも実力を如何なく発揮。

 『この空があるかぎり』はとりわけ記憶に残る子ども向けの芝居でした。いじめ問題を扱っているのですが、安易な解決は求めず、観客に課題を突きつける芝居になっていました。教育現場にいた私は、いじめの解決は簡単にはいかないよなあと、妙に得心が行ったのを覚えています。
 この劇を見てから数年後に願ってもないチャンスがやってきました。全国演劇教育研究集会で彼を講師に招いたのです。2007年、神奈川県青少年センターでのことでした。「演出」という講座の世話人に私は名乗り出ました。(詳細は、『日本の演劇教育2007』参照、同じ世話人の加藤弘一さんがこの講座の様子をうまく報告してくれました。)
 この講座は今まで私が体験したことがないような、ある意味難解で刺激的なものだったのです。
 20数名の参加者に対して、まずは、演出とは何かというところから語り始めました。
 次に、石原吉郎の「花であること」のプリントを配布したのです。

 花であること
  石原吉郎
花であることでしか               
拮抗できない外部というものが
なければならぬ
花へおしかぶさる重みを
花のかたちのまま
おしかえす
そのとき花であることは
もはや ひとつの宣言である
ひとつの花でしか
ありえぬ日々をこえて
花でしかついにありえぬために
花の周辺は的確にめざめ
花の輪廓は
鋼鉄のようでなければならぬ
     詩集「いちまいの上衣のうた」          

 この詩を数人で読み合い、ことばを使わずに身体だけで3つの静止像で表現させました。グループごとの発表を見ての意見交換と講師のコメントと続きました。詩も難解だし、講師の指示もけしてたやすくはありませんでした。
 次の課題は宮沢賢治の「ざしきぼっこの話」の中の4つの話から1つを選び表現するというものでした。
「グループで活発な意見交換が行われた後、それぞれのグループで考えた表現の練習が始まった。全てのグループが表現づくりに夢中になり、予定の60分はあっという間に過ぎてしまった。」と加藤さんは書いています。
 最後に参加者の質問に答えての講師の話で締めくくったのでした。
 ワークショップに世話人として立ち合った講座でしたが、からだ全体を駆使し、全神経を集中しないと参加できないような緊張感あふれるものでした。
 研ぎ澄まされた感性を持った、たぐいまれな演出家を失いました。合掌。

〔参考〕
*劇評「人民とは 国家とは 問う」〔文学座「明治の柩」宮本研作、高瀬久男演出〕増田愛子(朝日新聞、2015,6,8)
*劇評「公害か戦争かの二者択一の時期」〔文学座「明治の柩」宮本研作、高瀬久男演出〕井上理恵(週刊新社会、2015,6,30)





〔31〕びっくり仰天、五日市憲法草案。こんなことがあるなんて…。

2015年06月03日 | 市民運動
 読者の皆さん、こんな奇遇があるんですね。とてもびっくりしたけど、嬉しくなる話です。
 「五日市憲法草案」って知っていますか。まずはその概略から見てもらいたいのです。手っ取り早くウィキペディア「五日市憲法」に登場してもらいましょう。

「五日市憲法(いつかいちけんぽう)は明治時代初期に作られた私擬憲法の一つ。1968年(昭和43年)、色川大吉によって東京都西多摩郡五日市町(現あきる野市)の深沢家土蔵から発見されたためこの名で呼ばれる。
 別名を日本帝国憲法という。全204条からなり、そのうち150条を基本的人権について触れ、国民の権利保障に重きをおいたものである。五日市学芸講談会のうちの一人である千葉卓三郎が1881年に起草したとされる。国民の権利などについて、当時としては画期的な内容が含まれ、現日本国憲法に近い内容もみられる。
 五日市憲法は東京都の有形文化財(古文書)に、深沢家屋敷跡(土蔵などが残る)は史跡に指定されている。前者は東京経済大学に保管されていたが、現在はあきる野市の中央図書館に移管された。」

 ここにあるように、当時東京経済大学の教授だった色川大吉さんが指導する色川ゼミナールのメンバーが日本帝国憲法と書かれた私擬憲法を発見するのです。それは1968年、明治100年のことでした。最初は大日本帝国憲法の写しかと思ったようですが、とんでもない、現在の日本国憲法にも匹敵するような、あるいは、部分的にはそれを凌駕するような内容が記されていたのです。調べた結果、起草者は仙台出身の千葉卓三郎ですが、学習結社「五日市学芸講談会」の存在が大きく関わっていたことがわかってきたのです。そこで色川グループはこの私擬憲法を五日市憲法草案と呼ぶことにしたのです。
 近刊『ガイドブック 五日市憲法草案』(副題、日本国憲法の源流を訪ねる、鈴木富雄著、日本機関誌出版センター、2015年3月31日発行)では、日本国憲法と対応させながら、五日市憲法草案の素晴らしさを説明しています。例えば、天賦人権説、平等権、個人の尊重、教育権、地方自治、国民主権などです。さらに草案では、「国事犯ノ為ニ死刑ヲ宣告ス可ラズ又其罪ノ事実ハ陪審員之ヲ定ム可シ」とあり、部分的な死刑廃止と、陪審員制度まで触れているのです。現在では私擬憲法は100以上見つかっているそうですが、内容的にはトップクラスのものだそうです。

 さて話したいことはここからです。
 現在私は白梅学園大学での教育実習指導にあたって4年目になります。今年も5人の学生の実習生に付き添っています。そのうちの一人の実習校は開校140年のあきる野市立五日市小学校でした。学生と事前訪問をしたとき校長室に通されました。帰り際に校長先生が歴代校長の写真を指さして言いました。
「2代校長が五日市憲法に関わっていたのです。」
 なんと、それが千葉卓三郎だったのです。現存する千葉の写真は1枚しかなく、そこにあったのはよく知られた肖像画でした。そして後からわかるのですが、初代校長が永沼織之丞で、やはり仙台藩の人で、千葉たち2,3人をつれて五日市に来たらしいのです。五日市学芸講談会のメンバーでした。いただいた学校要覧に2人の名前がしっかり記されていました。
 2回目の訪問の時、五日市小学校の前身の勧能学校跡や五日市郷土館(2階に「草案」の資料を展示、天皇夫妻が訪れ、美智子さんが大いに評価したそうです。)、五日市中学校にある「草案」の記念碑を訪ねたのでした。

 実は2010年にこの「草案」が発見された深澤家土蔵を清瀬・憲法九条を守る会の数人で訪ねているのです。案内してくれたのは故布施哲也さん、清瀬市議を4期務め、最後は一人会派「自由民権」を名乗っていた人でした。

【参考書】『「五日市憲法草案の碑」建碑誌』記念誌編集委員会、あきる野市教育委員会、1980年初版





〔30〕「『安全保障』関連法案の拙速な国会審議に反対する請願」これも請願ですよ。

2015年06月03日 | 市民運動
 1つ前の〔29〕のブログでは、あれあれ、国立大学にまで「日の丸・君が代」が強制されるのかよ、それはごめんだな、という趣旨の清瀬市議会への請願を紹介しました。はてさて、6月16日(火)、2週間後の総務文教委員会がどうなるか、楽しみになってきました。この請願が通らないようだと、清瀬市議会の知的レベルも問われることになるのではないでしょうか。いずれ事後報告をします。お待ちくださいね。
 そして、日本の政治が危機的状況にあるという現象は何も教育問題には限られません。一番憂慮すべきことは「戦争と平和」の問題です。「戦争法案」とも言われる「安全保障」関連法案が、たいした議論もなく11本まとめて国会を通過しようとしています。平和憲法をもち世界から尊敬されている日本が、集団的自衛権を行使して、軍隊を世界中に送ることができるような法案が、わずかの審議で国会を通過してもいいのでしょうか。
 清瀬の地で何ができるかと考えました。署名や集会も必要でしょう。やはり陳情か請願でしょうか。 
 清瀬市議会も頑張っているのです。市のサイトを調べたら、集団的自衛権に関する2つの決議と意見書が出てきました。

●議員提出議案 集団的自衛権行使のための憲法解釈の変更に反対する決議(2014年12月議会)
●議員提出議案 集団的自衛権行使を容認する閣議決定の撤回を求める意見書(2015年3月議会)

 しかしながら、いずれも否決されてしまいました。でもめげません。私たちの「清瀬・くらしと平和の会」で請願を出すことにしたのです。市民派の布施由女さんを議会に送り出したので、期待できるかもしれません。この請願についての委員会もたぶん総務文教委員会になるのではないかと思います。(確定ではありませんが)読者の皆さん、2つの請願見守っていてくださいね。
 それでは、請願内容を紹介しましょう。


   「安全保障」関連法案の拙速な国会審議に反対する請願
      2015年6月2日
〔請願の趣旨〕
 政府は新たな「安全保障」関連法案を国会に提出した。計11本に上る関連法案の多くは憲法の平和主義をないがしろにしかねない重大な問題をはらんでいる。歴史の検証に堪える緻密で十分な審議が不可欠である。
 清瀬市議会としては拙速な国会審議に反対し、国に意見表明することを要請したい。

〔理由〕
  政府が今国会に提出した「安全保障」関連法案は、戦後日本の安保政策の大原則である専守防衛を逸脱し、日本が攻撃されていなくても自衛隊が海外で武力行使できるようにする法案である。 戦後日本は、専守防衛に徹することで国際社会から信用を勝ち得、それは経済的な繁栄の基礎にもなった。
 そもそも憲法解釈を変更して、集団的自衛権を強引に閣議決定したことに問題が起因している。法案の内容以前にまず問わなければならないのは、昨年7月1日の閣議決定の是非である。
  憲法の規定を下位にある法律で改変するという、およそ立憲主義、法治国家、民主主義と程遠い光景がこの国で進行している。
 各種世論調査でおしなべて反対が賛成を上回るのに、委細構わず突き進んでいる。 
 国民の生活に大きな禍根を残しかねない内容でもあり、国会審議にあたっては国民の声に真摯に耳を傾けることを胸に刻むべきである。

    清瀬市議会議長
       渋谷のぶゆき様

                         清瀬・くらしと平和の会
                             阿部 洋二