後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔313〕私の「市議会傍聴者の知る権利保障に関する請願」が議会運営委員会〔12月10日(木)〕で審議されます。

2020年11月27日 | 市民運動
  私たちの仲間、無所属リベラル派、一人会派の布施由女さんを市議会に送り出してから清瀬市議会を傍聴し続けて数年になります。現在2期目です。本会議や各種委員会の傍聴ということになるのですが、この間いろいろのことがありました。我々傍聴者にちょっとした規制や嫌がらせが起こっているのです。これは看過できないということで、請願で訴えることにしました。
 私の市議会ウオッチングは市民から選出された議員がどのような意思表示をするかということに関心があります。さまざまな議案に対しての賛否表明です。さらに市議の一般質問や参加態度も当然注目しています。
 こうした当然の市民の知る権利を阻害するような事態が発生しました。傍聴席からは市議の言動の様子がよく見えないので立ち上がらざるを得ないのですが、頻繁に立ち上がるなというのです。この間の推移については下掲の請願文を読んでください。

 この請願は12月10日(木)の議会運営委員会で審議されます。14時開会、清瀬市役所の4階です。興味がおありでしたら傍聴にいらしてください。
*以前、12月8日(火)、総務文教委員会とお伝えしましたが間違いでした。お詫びして訂正致します。 

■市議会傍聴者の知る権利保障に関する請願■

                紹介議員 布施由女

〔請願趣旨〕
 現庁舎、新庁舎とわず、傍聴者の議員の活動(「請願・陳情や意見書などの採決の際の議員の賛否」「議場での議員の言動」など)を知る権利を保障していただきたい。
 各種委員会のように傍聴者が座ったままで議員の賛否の挙手や言動が可視化されるように配慮願いたい。一例として、傍聴席前のフェンスを透明化するなどが考えられるが、それが当面無理な場合は必要に応じて立ち上がる行為は保障されてしかるべきである。

〔請願理由〕
 ここ数年、市議会傍聴を継続しているが、今年の3月議会で私の仲間が「傍聴席を立たないように」と注意されたので「座ったままでは議事に対する賛否の挙手が見えない」と言ったが、「最後列に行けば見える」と言われたそうだ。私は最後列に座ってみたが、実際は前列よりももっと見えない。
 そこで6月議会の時に「傍聴席を立たないように」との指示は傍聴者の知る権利侵害ではないかという抗議をした。
 ところが9月議会には「傍聴される皆様へお願い」(清瀬市議会事務局長)が置かれていた。そこには「5.みだりに席を離れたり、傍聴席を歩き回ったり、頻繁に立ち上がる等、不体裁な行為をすること」は禁止とあった。このお願いはなぜか「傍聴規則」にはない「傍聴席を歩き回ったり、頻繁に立ち上がる」が付け加えられている。
  議員の議事に対する賛否の挙手を確認するのは傍聴者の当然の権利であるし、議員の活動を注視するのも議員を選んだ市民の役目ではないだろうか。かつて開会中に選挙はがきを書いていたり、スマホをいじっていたりする議員が存在したことを私たちは知っている。
 テレビ中継などで国会の委員会が映し出されるが、傍聴席から居眠り議員もわかるようである。国会に習えば傍聴者は立ち上がる必要もない。
 私はガラス張りの清瀬市議会であってほしいことを願ってこの請願を出すことにした。

                                  2020年11月22日

清瀬市議会議長
渋谷けいし様
                       清瀬・憲法九条を守る会
                           福田三津夫

〔312〕コロナ禍でも動き出した鎌倉の塚越敏雄さんグループの活動、畏敬の念をもって読ませてもらいました。

2020年11月13日 | メール・便り・ミニコミ
  鎌倉の塚越敏雄さんからメールが届きました。腰越・憲法九条ニュースも合わせてお読みください。

■福田三津夫様
 
 ご無沙汰しております。鎌倉の塚越です。
 遅くなりましたが、腰越・憲法九条ニュースの9・11月号を添付します。
 コロナで休止していた活動は、10月から開始しました。と言っても、駅前で
のスタンディングだけです。
 鎌倉駅前での活動は、月に4・5回続けています。ここでは、リーフレット配
り・署名活動を続けています。
 今年1月から始めた安倍改憲反対署名を提出しましたが、今回は夫婦で508
筆。前回の3000万人署名の半分にも達しませんでした。
 憲法9条リーフレットの改定版を作りましたので、参考までに添付します。
            t417mabui@nifty.com 塚越敏雄






■塚越敏雄様
 メールありがとうございました。
 私たちの清瀬・憲法九条を守る会、清瀬・くらしと平和の会の例会はそれぞれ月1回です。例会時に月1回清瀬駅頭でスタンディング行動をしています。マイクを握って、議会便りの通信やチラシ配布と、原発再稼働反対・改憲反対などの署名活動です。
 議会報告は議会ごとに年4号(A4,4頁)発行を続けています。地域や駅頭で配布しています。コロナ禍の下でもようやく日常が戻りつつあります。以前のように国会などへの抗議行動は簡単ではありませんが。
 腰越の活動に敬意を表します。いつものように、ブログでメール文と添付ニュースなどをそのまま紹介させてください。鮮明な画像には相変わらず自信がありませんが。よろしくお願いします。福田三津夫

〔311〕ラボ教育の神髄を示す2冊、門脇厚司『社会力育ての現場を訪ねて-ラボ教育メソッドの魅力と価値』、仁衡琢磨『ことばがこどもの未来をつくる―谷川雁の教育活動から萌え出でしもの』出ました!

2020年11月12日 | 図書案内
 私は2006年からラボ教育センターの言語教育総合研究所の活動に参加していますが、ラボ教育センターとはどのような組織で、どのような活動をし、その基本的考え方は何なのかということを明らかにしてくれる本が相次いで2冊出版されました。
 まずは言語教育総合研究所の代表を継続して勤められている門脇厚司さんの本を紹介します。
 まさにラボ教育入門といった、とても読みやすい本になっています。ラボの発足から独自の教育法の内容、ラボ教育で育った彼らの現在、ラボは何を育てているのかということがわかりやすく書かれています。
 私が最も注目しているのは、物語を丸ごと身体表現する「テーマ活動」という取り組みです。
 本の概要を出版社のHPから引用してみましょう。

■『社会力育ての現場を訪ねてーラボ教育メソッドの魅力と価値』門脇厚司、冨山房インターナショナル、1,760円

 ラボ教育センターが行っている教育の魅力と成果を多くの人たち、とりわけ子育てに悩み、あれこれ思案している母親や父親たちに知ってもらいたくなり、諸々の体験活動に参加し、人間として成長し大人になり、各界で活躍しているラボっ子ОB・ОGたちのその後と現在を紹介し、「このようなことを体験したら、このような人間になる」という実例をまとめたのがこの本です。ラボっ子ОB・ОGたちの人となりをじっくり見届けていただければ幸いです。(「まえがき」から)

目次

第一章 ラボ教育センターの歩みとこれまでの実績
第二章 ラボ教育メソッドというユニークな教育方法
第三章 ラボ教育体験で育った人たちの今
第四章 ラボっ子OB・OGたちの特性
第五章 社会力が人類社会を救う

 もう1冊は、このブログで皆さんお馴染みの矢部顕さんに教えてもらいました。メールを紹介します。

■福田三津夫さま

『ことばがこどもの未来をつくる―谷川雁の教育活動から萌え出でしもの』
(仁衡琢磨著、アーツアンドクラフツ社刊、)
という本が出版されたのはご存知でしょうか?

全362頁という大著を上梓したのは、仁衡琢磨くんというわたくしの若い
友人です。元ラボっ子で谷川雁研究会の仲間です。

先日、出版記念会があり、わたくしも参加しました。参加といっても、
いまはやりのオンライン(Zoom)での参加です。

とても素晴らしい本ですので、テューターのなかでも話題になっているかも
しれませんが、ぜひご購読をお薦めします。

一般の本屋でも購入できますが、下記のWebサイトをご覧ください。
内容の紹介もありますし、購入もここから申し込めます。ここでは特別頒価
となっていますので、書店で買うより安いですし、ご希望があれば著者サイン
もしていただけるようです。

内容ご紹介・特別頒価購入サイト(正誤表も公開中)
https://nihira.sakura.ne.jp/

『感動の体系をめぐって―谷川雁 ラボ草創期の言霊』(松本輝夫編、
アーツアンドクラフツ社刊、2018年1月)
はラボを始めた谷川雁の志、夢、教育理念がとてもよく理解することが
出来る本です。

全国各地から、テューター仲間で読書会をやっているという便りがとどいて
います。
わたくしの知っている方で、「テューターを辞めようと思っていたが、この本
を読んで辞めるのを止めた」というテューターがいました。

そのラボ教育の「ことば、物語、表現」を核にすえた独創的な教育手法
を受けて育ってきた著者が、その教育手法は50年以上の時を経ても
決して古びることは無い、逆に、あまりに先駆的すぎたかに見える手法
は世界・社会の諸問題が浮き彫りになってきた現代でこそ活きる、と
熱く記しています。

                     矢部 顕

〔310〕続・矢部顕さんのお便り「小学校の脱穀作業」と『稲と日本人』(甲斐信枝著、福音館書店)の書評です。

2020年11月11日 | 図書案内
 引き続き矢部さんのお便りです。読みでがあります。

■福田三津夫様

先日、小学校の学習田で5年生の子どもたちが稲刈りをし竿掛けをして現在乾燥中の稲を、いよいよ明後日に「脱穀」作業して最終的お米になるまでを体験させます。

脱穀は、人力足踏み脱穀機を子どもたちが操作して行います。この足踏み脱穀機は戦前まで使われていたものを私が修理して使えるようにしました。
「選別」は、籾と藁くずとを選別するのですが、手回しの羽根の風力で選別する唐箕(とうみ)という古い道具です。
田舎の大人もほとんど知らない道具ですので、福田さんは見たこともないと思います。

最後に「籾摺り」という工程をへて、いよいよ玄米の出来上がりです。これは近所の農家の現代の機械をお借りして行います。

これらの道具の準備を明日やる予定なのですが、偶然なのですが今日の新聞に絵本作家の甲斐信枝さんのことが書かれた記事が掲載されました。その記事を添付します。

お米にかんする学びは、稲作り体験を通しての学習と本からの研究学習がありますが、後者のためにわたくしが選んだ絵本があります。『稲と日本人』(甲斐信枝著、福音館書店)です。

4年ほど前にこの絵本のことを知ってびっくりし感銘をうけたので、ぜひとも子どもたちに読ませたいと思い、5年生の学級文庫に複数冊を寄贈しました。そのころ書いた文章は下記のようなものでした。


                     『稲と日本人』
    
                                                   矢部 顕

 先日、甲斐信枝さんという絵本作家の方の講演会に行ってきました。昨年出版された『稲と日本人』(福音館書店・2015年)という絵本に接する機会があり、その絵本の質の高さと内容に圧倒されたのですが、著者の講演があると知って聴きに行ったのです。
 もともと、物語絵本には仕事柄ずいぶん長いあいだ親しんできたのですが、科学絵本というのか観察絵本というのでしょうか、ほとんど興味をむけたことはありませんでした。ですから、甲斐信枝さんという絵本作家も知りませんでした。
 『稲と日本人』というテーマはたいへんに大きなテーマですが、そのテーマにふさわしく非常に力のこもった絵と文章に驚きましたが、15年の歳月をかけて研究し制作し完成したとのことを聞いてさらに衝撃を受けました。いまどき拙速的な書籍があまりにも多い出版界で、熟成にかけた時間の長さにため息がでます。
 甲斐信枝さんは、1970年以降30冊以上の絵本を発刊(その多くは福音館書店発行)されていますが、そのほとんどは雑草か小さな昆虫の絵本です。名もない草や小さな動物も人間と同じ生き物なのだ、という視点での哲学をゆるぎないものとして持っていらっしゃることに感銘を受けます。
稲を見て、「まぁ、覇気のない生き物だこと。人間がかかわらないと生きてゆけない」と感じたとおっしゃったのですが、力強く生きている雑草などの自然界を見つめてきた眼力はすごいものがあります。「1億年以上前には雑草として生きていた稲が、人間が常食にしようとしてから飼いならされるようになった。1万年前には、飼いならされることに抵抗しなくなった」と。この直観力には信じがたいものがあります。
 あとで知ったのですが、『雑草のくらし―あき地の五年間―』(福音館書店・1985年)を出版するにあたっては、空き地の雑草を5年間にわたってつぶさに観察し見守ってから制作刊行したとのことでした。タイトルの『雑草のくらし』の「くらし」という言い方に、甲斐さんの生き物に対する愛情が表れている気がします。
 「なぜ、このような絵本の作家になったのですか?」という聴衆の質問に答えて、「かんたんです。小さいころから雑草が友だちだったから。雑草からたくさんのことを教えてもらったから」。
 講演から<稲作の歴史もまた人間の壮大な物語である>ことをあらためて認識させられました。野生種、渡来、飢饉、品種改良、多様性、このようなことを柱にして制作されたとのことですが、日本人が稲とどのように共生し長い歴史を歩んできたかがわかる日本人の精神史でもあります。
1930年生まれの、まぁ相当なお年寄りのおばあちゃんである甲斐信枝さんが、15年の歳月をかけて制作した情熱に圧倒されました。
 『稲と日本人』は、日本のすべての学校の図書室におくべき、あるいは副読本にでもすべき、絵本というか研究書といってもよい本だと思います。(2016.3.21)


■矢部顕様
メールありがとうございました。
今回のメールも、興味深い「情報」がてんこ盛りですね。またブログにいただきます。よろしくお願いします。
私のおじいさんの家は練馬の農家だったので足踏み脱穀機も唐箕もよく知っています。さすがに足踏み脱穀機は動かしたことはなかったのですが、唐箕は現役で動いていました。懐かしいですね。
東久留米市で教師をしていた頃、3,4年生の社会科見学で毎年のように東久留米の一番古い地域の柳窪地区の村野さん宅を訪ねました。村野家は昔からの豪農家で足踏み脱穀機や唐箕を納屋から出して子どもたちに話をしてくれたものです。
それにしてもさすがに矢部さん、足踏み脱穀機を再生させるとはびっくりです。
『稲と日本人』(甲斐信枝著、福音館書店)のご紹介と「書評」ありがとうございました。読みでがありました。新聞記事がクリアに出れば言うことがないのですが。福田三津夫

〔309〕矢部顕さんのお便りと新聞記事「取り込まれるアーミッシュ」。今は昔なのでしょうか。

2020年11月07日 | テレビ・ラジオ・新聞
 矢部顕さんはラボ教育センターのの中核として長らく仕事をされてきました。ラボ国際交流として度々外国を訪れたようです。アメリカではペンシルベニアに何回か子どもたちを連れて行ったということでした。近隣にはアーミッシュの居住地があったようで、昔ながらの暮らしを守る彼らのことをコーヒーを飲みながら話してくれました。
 今はアメリカ大統領選挙まっただ中ですが、「取り込まれるアーミッシュ」という新聞記事を送ってくれました。
 確かアーミッシュはドイツからの移民で、名前からするとトランプ大統領の祖先もドイツの人だったのではないでしょうか。うろ覚えですが、ドイツにルーツをもっていると聞いたことがあります。

 矢部顕さんのメールと新聞記事です。

■第1信

毎日新聞11月2日の記事を添付します。
A4に縮小していますので読みにくいと思いますので、
拡大して読んでください。

この記事にびっくりしました。
2006,2007,2008の頃に見たアーミッシュの村からは
想像できないくらいの急激な変化が起こっている
のでしょうか。

コミュニティによって違いはあるとは思いますが、
この記者が16年前に見た風景と同じように私も
見ましたが、それがすっかり変わってしまったとか。

共和党によって利用されているようになっているとは。

■第2信

この記事がアーミッシュ一般的なのかどうかは不明です。
一部だろうとは思うのですが。
それに写真に写っている人物は、アーミッシュの服装では
ありません。が、そういう人もいるのかも知れません。

「我々は大統領に従って生きているのではない。
神に従って生きている。だから大統領選挙には行かない」
という言い方をしている人が多いと思います。

宗派的な信念や文化や生活スタイルを守り続けるのは
厳しく困難なことだろうと、現地で思いましたが、
その困難を越えて300年間連綿と貫いてきたことは
事実ですし、感動したものです。



 ◆ 原発依存内閣 「原発ゼロ」を現代で決済しよう
                 鎌田 慧(ルポライター)

 福島第一原発事故の避難者の生活を見聞きするだけでも、この人たちの
生活の困難さばかりか、喪失感の大きさを考えさせられる。
 いきなり避難を命じられ、ごく普通の日常がまったく暗転、それからも
う10年近くも故郷を追われ、家族はバラバラ。
 自分の生活に置き換えてみれば、その苦境をすこし理解できる。
 それでも、官義偉首相は再稼働を強行しようとしているのだが、その理
由が30年後の2050年、温室効果ガスの排出を「実質ゼロ」にするためという。

 環境問題に全く無関心だった安倍政権に代わって、遅ればせながら、二
酸化炭素削減方針を打ち出した。が、その手段が完全に行き詰まった原発
の再稼働。毒をもって毒を制するアクロバット。
 「安全最優先で原子力政策を進める」と菅氏。世耕弘成・自民党参院幹
事長は「新技術を取り入れた原発の新設も検討することが重要だ」。梶山
弘志経産省は「今後10年間は再稼働に全精力を注ぐ」。

 事故の悲惨と被災者への想いは全くない。
 繁栄の頭上に髪の毛一本でぶら下がっている「ダモクレスの剣」。ある
いは回転式拳銃に込められた実弾一発に賭ける、ロシアン・ルーレット。
 原発の安全性もまた運任せ。避難訓練付き装置など果たして人間のため
なのか。
 核廃棄物処理は数万年後に続く負債。
 「原発ゼロ」を現代で決済しよう。
       (11月3日東京新聞朝刊25面「本音のコラム」より)

〔308〕新刊、福田緑写真集『完・祈りの彫刻 リーメンシュナイダーと同時代の作家たち』完成です!

2020年11月03日 | 図書案内
 連れ合いの新刊『完・祈りの彫刻 リーメンシュナイダーと同時代の作家たち』が11月半ばに出版されます。すでに彼女の元には出版社の丸善プラネットからこの本が3冊届けられました。
 出版を計画してから1年以上になります。昨年の夏のドイツ旅行中に私が出版を説得したのです。本格的な編集活動に入ったのは今年になってからでしょうか。写真集が4冊目になると、編集スタッフも継続され、1冊ごとに丁寧にぬかりなく出版作業が進められました。
 全4冊のラインナップです。

■福田緑写真集(全四巻)
①『祈りの彫刻 リーメンシュナイダーを歩く』2008年12月、216頁 
②『続・祈りの彫刻 リーメンシュナイダーを歩く』2013年1月、230頁
③『新・祈りの彫刻 リーメンシュナイダーと同時代の作家たち』2018年8月、244頁
④『完・祈りの彫刻 リーメンシュナイダーと同時代の作家たち』2020年11月、270頁

 ①はヨハネス・ペッチュのカラー写真と娘・福田奈々子の白黒写真に緑が解説を加えました。リーメンシュナイダーの代表作が収められています。日本初めてのリーメンシュナイダーの写真集ということで、ありがたいことにほぼ完売です。
 ②以降はほぼ緑が撮りおろした写真集です。
 ②は「リーメンシュナイダーを歩く」ということで、ドイツを始めとするヨーロッパ各国、アメリカ・カナダに作品を訪ね歩きました。ドイツの美術館や博物館でもリーメンシュナイダーの図録は出ていますが、掲載作品の所蔵場所が限られています。そうした意味でもこの②はとてもマニアックな本ということができそうです。
 ③は今までに掲載されなかったリーメンシュナイダーと同時代の作家の彫刻が掲載されています。比重はむしろ後者にあります。同時代の作家の彫刻の写真について、日本では『世界美術大全集14 北方ルネサンス』(小学館)を知るだけです。

  ④は3部構成です。
第1部 リーメンシュナイダーを歩く 祈りの彫刻19点
第2部 中世ドイツの彫刻を歩く 祈りの彫刻24点
第3部 資料編

 第1部は、聖母の手、息づく手、祈り、眠り、磔刑、哀しみという視点でリーメンシュナイダー作品をもちろん緑が撮り下ろしています。①と重なる作品もありますが、ヨハネスや奈々子の写真と見比べてみるのも楽しいです。
 第2部は、中世ドイツの個性的な作家による彫刻の写真集です。実はドイツ中の美術館や博物館を探し回ってもこうした写真集は皆無でした。ところがベルリンのボーデ博物館の書籍部で奇跡的に発見したのがマイケル・バクサンドールの本でした。以後、この本が中世ドイツの彫刻に関する我々のバイブルになったのです。実は④の「刊行に寄せて」でバイエルン国立博物館のマティアス・ベニガーさんがバクサンドールについて触れているのです。バクサンドールはイギリスの人で、中世彫刻に対してとても斬新な視点をもたらしたとベニガーさんは評価しています。合わせて、日本から来た福田緑が新しい切り口で写真集をものにしたと書いているのです。
 第3部の資料編が、実はかなり価値の高いものだと思っているのです。60頁になる「中世ドイツの作家たち 作品一覧」「主な参考文献」などの資料編は、書籍、美術館や博物館のカタログ、教会などのパンフレット、ネット情報などを調べ尽くして作り上げたものです。こうした資料はドイツにも今のところ発見できません。研究の基礎資料にでも活用してくれたらと願うばかりです。

 装釘はもちろん、写真の色校正、一字一句の校正に到るまで実に神経を集中して作り上げた丸善プラネットスタッフと緑との合作であることを、身近にいた人間として感じるのです。
 皆様本当にお疲れ様でした。そして、ありがとうございました。

*表紙の写真はニコラウス・ゲルハールト・フォン・ライデンの自刻像ですが、私の顔に似ているというのですが…。
*新刊本に関する緑のブログです。

https://blog.goo.ne.jp/riemenschneider_nachfolgerin/e/0a36aed27c81ceb3420f446cc64885d7


 ◆核兵器禁止条約来年1月発効 核は人類を滅ぼす
  原発も、安全、安価、安定という虚言は破綻した

               鎌田 慧(ルポライター)

 来年1月から、核兵器は国際的に違法となる。
 「生きていてよかった、と大きな喜びを分かち合う日を迎えた」。
 この原爆被爆者の声は、世界史に残るであろう。

 戦争それ自体が残虐な行為であり、日本が仕掛けた戦争だったにして
も、嬰児(えいじ)から寝たきり老人まで数十万の人びとが一瞬にして
殺戮された、地獄的な世界を体験した唯一の国だからこそ、日本政府は
核廃絶にむかう義務があるはずだ。
 にもかかわらず、政府は被爆者の願いばかりか、世界の人びとの
熱意による、核禁止条約締結の運動に目をそむけてきた。
 米国の「核の傘」の下に身を置き「核は戦争の抑止力」の妄言を
支持してきたのだ。

 日米安保条約に支配されているとはいえ、そこには核戦争をするとは
書かれていない。この曖昧な態度が、国際的な孤立を深めないか心配だ。
 菅内閣は「仮想敵」の核基地をミサイルで攻撃する「敵基地攻撃
能力の保持」が背景にある、「積極的平和主義」を国連のビデオ
メッセージで主張している。
 核兵器禁止が広がる、世界の平和運動から取り残されそうだ。
 せめて、これから始まる条約批准国による会議に、オブザーバーで
参加してでも、国際世論を感じ取ってほしい。
 核の「商業利用」という原発も、安全、安価、安定という虚言は
破綻した。
 核は人類を滅ぼす。
(10月27日東京新聞朝刊27面「本音のコラム」より)