後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔581〕𠮷田隆さんから5月3日の憲法記念日大集会など案内の「イロハネット」365号が届きました。

2023年04月26日 | メール・便り・ミニコミ
■イロハネットNo-365号をお送りいたします。

今号は、5月3日の憲法記念日を迎え、危機に瀕する現況についての愚文と有明防災公園で開催される大集会のご案内チラシを冒頭に掲載します。
次いで、徳勢正昭氏から頂いた引き続きの論考をご紹介しました。(略)

その他、イベント紹介やテント日誌の添付も致します。(略)

ドイツが原発をやめ脱原発に踏み切った中で、日本が原発稼働に固執するのは何故なのか。原子力ムラの利権と核帝国への野望がなせるワザではないか。その渦中に居座る岸田政権。
五月晴れのゴールデンウイークなのに、気が重いのは私ばかりでしょうか。

ご自愛ください。
                              𠮷田 隆





 ◆抵抗は労働者の権利だ
  関西生コン労組への弾圧と大阪高裁の無罪判決
  沈思実行(140)                鎌田 慧

 ストライキ発生件数は、年間30件前後。日本の労働運動の現況である。
 1947年は5000件だった。
 かつて春闘時には街角に赤旗が翻っていた。労働者の権利の主張は、
民主主義の基盤だ。
 労働者と使用者は対等であり「労働者の地位を向上させること」が、
労働組合法の第一条である。
 ところが、労使協調が長く続いて、歌を忘れたカナリア状態の労組幹
部ばかりか、法律に従う警察、検事、判事までもが、労働者の団結権と
争議権について無知の極みだ。

 会社の利益に従うだけの企業別労組を超えた、産業別労組のひとつ、
全日本建設運輸労組関西地区生コン支部(以下、関生労組)への熾烈
な弾圧は、労働者運動衰退の象徴である。

 3月6日、大阪高裁(和田真裁判長)の判決は労働運動の精神を尊重
した画期的な判決だった。傍聴席には拍手が鳴り響いた、という。
 昨年3月、和歌山地裁が言い渡した関生労組組合員3人への威力業務
妨害、強要未遂事件での懲役1年4月、1年、10月(3年の執行猶予)
判決にたいして「原判決破棄、いずれも無罪」とした。

 3人の労組員が、使用者団体幹部のもとを訪れ、使用者側が元暴力団
員を介在させたことを追求したのだが、判決はつぎのように判断した。
 「抗議等に赴くことは、それが暴力の行使を伴うなど不当な行為に及
ぶものでない限り、労働組合が団結権を守ることを目的とした正当な行
為として、労組法1条2項の適用又は類推適用を受けるというべきである」。

 労組員がおなじ会社の社員ではない、との地裁の判断については、「
産業別労働組合である関生支部は、業界企業の経営者・使用者あるいは
その団体と、労働関係上の当事者に当たるというべきだから、憲法28条
の団結権等の保障を受け、これを守るための正当な行為は、違法性が阻
却されると解するべきである」。

 有罪判決のもとになった労組脱退者の証言は「鵜呑みのできないもの
である」と明確に否定した。
 労働争議を「暴力的」として宣伝する検事の主張を裁判官の良識が
認めなかった。(週刊「新社会」2023年3月22日第1300号8面より転載)

■大江さんの伝言=石川夫妻の健在のうちに
  次は狭山事件の再審開始だ−石川一雄さんは無罪だ
   沈思実行(142)
                              鎌田 慧

 裁判官の判決決定の至るプロセスにおいて、検察側から提示された証拠
がもっとも重要な判断の根拠になる。
 しかし、その証拠が捜査官によって隠蔽されたり、偽造されていたとし
たならどうだろうか。重大なルール違反だ。まして、それが死刑判決を
導きだした凶悪犯罪だったとしたならその偽造は殺人罪に相当する。

 袴田事件の再審請求の審理では、静岡地裁、東京高裁ともに「証拠の
捏造」を指摘している。
 検察側はさすがに「特別抗告」を断念したので、再審開始、無罪判決
は決定的になった。それでも、再審開始の法廷で検事は、また「死刑」
を求めるのだろうか。
 いままでの「しきたり」ではそうされてきた。わたしも高松地裁で
「財田川事件」再審法廷の初日を傍聴していて、検事が告げる、空虚な
「死刑」求刑の声を聞いた。
 まもなく再審裁判がはじまり、無罪判決がでるのは時間の問題だ。
袴田さんは87歳、無罪の罪で1966年に逮捕され、47年7カ月拘置され
ていた。
 死刑確定は人間性の否定だった。そして、袴田巌さんの意識は肉体
から乖離するようになった。残酷である。

 次は狭山事件の再審開始だ。その運動にいっそう力を入れる必要がある。
 先日他界した大江健三郎さんは『小説の方法』(岩波現代新書、1978年
刊)で、唯一の証拠というべき「脅迫状」が、「かれ(真犯人)が隠匿し
抹消しようとした彼自身を表現してしまう」との、文体論によって石川
さんの無実を証明している。
 大江さんは国語学者の大野晋さんが、脅迫状の「漢字使用の不自然さ」、
その「作為」が逆に犯人の学力の高さを顕在化させている、との指摘を
支持し、高く評価している。石川さんは、その当時、ひら仮名をようや
く書ける程度の識字力しかなかった。

 「さようなら原発」運動のなかで大江さんは『小説の方法』の扉に、
「御夫妻の御健在のうちに再審の光が大きく輝くことをねがっています
 2011年10月2日」と書きつけ、石川一雄さんに渡してくださいと拙宅
に送ってきた。
     (週刊「新社会」2023年4月12日第1302号8面より)

〔580〕ついに、松本輝夫さんの労作『言語学者、鈴木孝夫が我らに遺せしこと』が発刊されました。

2023年04月26日 | 図書案内
 お馴染みの矢部顕さんから朗報が届きました。かねてから鋭意制作中だった松本輝夫さんの鈴木孝夫論が完成しました。さっそく書店に注文したいと思います。



■出版案内
松本輝夫著の鈴木孝夫論が発刊されます!
『言語学者、鈴木孝夫が我らに遺せしこと』(松本輝夫著)

発行:冨山房インターナショナル
出版:2023年4月5日
定価:2200円+税
A5判、並製、300頁
・書名案としてあった「鈴木孝夫 ――稀代の言語学者にして
『地救(球)原理』の先覚者」は、本トビラに掲出。
・表紙オビのキャッチフレーズ「地球を愛し、人類の叡智に望を
託した言語学者の大志と哲学、その軌跡を次世代へつなぐ一書!」

鈴木孝夫先生は、かつてラボ言語教育総合研究所の代表を務めていただいて
おり、そのとき私は研究所の事務局長でしたので、身近に接しさせていただき、
学識からの貴重なお話を聴くことや、お人柄から楽しい時間をもつことができました。
著者の松本輝夫さんは、ラボでの上司でありましたが、その頃も以降も、年上の
盟友としてのお付き合いをさせていただいています。
谷川雁研究会、鈴木孝夫研究会の主宰者として活躍されています。
                            矢部 顕

◆「沈黙は野蛮だ」
  「たかが電気のためになんで命を危険に晒さなければ
  ならないのか」…坂本龍一

鎌田 慧(ルポライター)

 大江健三郎さん。そして坂本龍一さん。おふたり続けての計報は、打
撃が大きい。
 坂本さんは福島原発事故の前の年、千駄ケ谷の区民会館でひらかれた
六ケ所村(青森県)の核燃料再処理工場への反対集会に参加された。
だから、原発反対でも「筋金入り」だった。
 わたしの友人の高橋悠治氏(作曲家、ピアニスト)が、若いときから
の坂本さんと懇意だったこともあって「さようなら原発」運動の呼びか
け人をお願いして、2011年7月、代々木公園での「さようなら原発」17
万集会で発言して頂いた。大江さんや瀬戸内寂聴さん、沢地久枝さんも
同時に登壇した集会である。

 「NO NUKES」のTシャツを着た坂本さんは、この公園は42年
前、18歳の時、日米安保改定反対の集会以来と言って「たかが電気のた
めになんで命を危険に晒さなければならないのか」。「福島の後に沈黙
しているのは野蛮だ」と続けた。被曝労働者や子どもたちの健康と命に
想いを馳せた発言だった。
 坂本さんは発言するだけではなく、若い音楽家たちに呼びかけ、豊洲
PITでの「NO NUKES」コンサートを主催されていた。
 まだ71歳。この早すぎる他界は認めたくない。ニューヨークとはメー
ルで交信していたが、こちらの老齢をいたわる優しいメールだった。
 まだまだ活躍してほしかった。
 (4月4日「東京新聞」朝刊19面「本音のコラム」より)

 ◆沈思実行(135)
  米軍戦争の犠牲区域・沖縄
  沖縄の石垣島、宮古島、奄美大島、与那国島がミサイル基地に−
  本土の平和運動が問われている
                     鎌田 慧

 沖縄・南西諸国のひとつ、宮古島。そこから長い橋を渡って伊良部島。
 そして、小さな小さな下地島がある。
 この島の真ん中を3000メートルの大滑走路が走っている。といって
も、ターミナルや売店があるわけではない。
 日本航空や全日空のパイロット養成用に使われてきた。その訓練は最
近では米国でやっているようだ。だから、長大な滑走路が島の真ん中に
あるだけ、とみえる風景はやや異様だった。軍事利用されるのではない
か、と見学にいって不安だった。

 と、この空港を米海兵隊が訓練に使いたい、と米軍が沖縄県に要請し
た、という。いよいよきたのか、との恐怖をあたえられた。
 しかし、この空港は軍事目的には使用しない、との覚え書き、1971
年、琉球政府と日本政府との確認書「屋良覚書」がある。
 79年にも沖縄県と政府間で「緊急時を除いて民間機が使用」との文書
もある。それに依拠して玉城デニー知事は「その方針、方向を堅持していく」と
強調している。

 鹿児島県種子島そばの馬毛島は、日本政府が買収した途端に、自衛
隊基地にされる、と発表された。さらに露骨なのは与那国島だ。
 台湾が望まれる、与那国島は「どなん」(渡難)の島と呼ばれてい
る。75年の海洋博の頃、石垣島まで行ったが、チケットを取れなかった。
 そのあとも、上空まで飛行してなお雲厚く引き返した。19人乗りのカ
ナダ製小型機だった。銘酒「どなん」の社長は、石油基地建設に反対だった。
 その島に自衛隊が駐留する話が降ってきた。過疎化対策が賛成派の主
張だった。2016年、沿岸監視隊が駐留した。
 その後、ミサイル部隊がけろりとして配備された。いったん基地にな
れば、なにをしても自由。だまし討ちなのだ。

 台湾から110キロ。戦前、戦後とも台湾との交流が盛んな平和な島だ。
 しかし、米国の「台湾有事」の宣伝とともに、石垣島、宮古島、奄美
大島とともにミサイル基地にされ、最前線になった。
 戦争になったら逃げ場がない。
 また沖縄を犠牲地にするのか。
 本土の平和運動が問われている。
      (週刊「新社会」2023年2月15日第1295号8面より)

〔579〕「日本を戦争する国にしていいのですか?」塚越敏雄さんのメッセージです。

2023年04月26日 | メール・便り・ミニコミ
  鎌倉の地で反戦反核運動を日々繰り広げている塚越敏雄さんのメッセージが届きました。彼の想いが凝縮されたパンフレットになっています。しっかり共有させていただきます。
 清瀬市議選で無所属市民派・布施由女さんが3選されました。いずれ詳しく報告します。ご支援ありがとうございました。





◆映画「妖怪の孫」
  安倍政治はそのまま岸田政権に引き継がれ、
  戦争する国へと一直線に向かっている

          前川喜平(現代教育行政研究会代表)

 17日から公開中の映画「妖怪の孫」。安倍晋三とはいかなる人間だっ
たのか。祖父岸信介と父安倍晋太郎から何を受け継ぎ、何を受け継がな
かったのか。安倍政治とは何だったのか。なぜ長期政権が可能になった
のか。そうした疑間を解き明かそうとする労作だ。

 選挙に勝利するためのメディア戦略。森友事件、 加計問題、桜を見る
会での数々の虚偽答弁。北朝鮮の脅威を煽った「国難突破解散」。「
やってる感」 だけのアベノミクス。
 その結果は日本の先進国からの脱落だ。内閣法制局長官の首をす
 替えて強行した集団的自衛権行使に関する憲法解釈の変更。匿名官
僚は「総理によるテロだ」と語る。

 合間のアニメに現れる妖怪は、心がなく、お尻の穴が小さい「ふかん
よう」、慈悲の気持ちがなく、能力主義から傲慢さが増幅される「慈虚(
じこ)責任」、恐怖から争いを引き寄せる力がある「セメ・テクール」。
 これらの妖怪が国民に取りついて安倍政治を可能にしたのだ。

 映画は「統一教会間悪」にも突っ込んでいるが、他のメディアが触れ
ようとしない下関の安倍邸への火炎瓶投げ込み事件の背景事情にも迫る。
 安倍政治は決して過去のものではない。それはそのまま岸田政権に引
き継がれ、戦争する国へと一直線に向かっている。映画の最後、自身の
娘の未来を憂える内山雄人監督の声が切実だ。
  (3月19日「東京新聞」朝刊「本音のコラム」)

◆アンガージュマン(社会参加)
鎌田 慧(ルポライター)

 大江健三郎さんが亡くなった、との電話があった。厳密に言うと「
亡くなっていた」のだが、その日の「本音のコラム」は、袴田事件再審
開始について書くつもりでいたので、いくつかのコメントだけにしていた。
 一カ月近くたって、大江さんから頂いたファクスや手紙を読み返して
みた。もう10年以上前からの手紙は、驚くほどこまやかな心遣いにあふ
れ、改めて目をみはった。筆まめ、凡帳面な人だった.

 福島原発事故のあと「さようなら原発」運動の呼びかけ人になってい
ただいたのだが、記者会見や集会には必ず参加した。デモも最後までつ
き合った。「お互いに後期高齢者」といいながらジーンズの上着、
キャップの扮装(いでたち)の日もあった。

 2012年7月の代々木公園での17万人大集会のあと、送られてきたファ
クスには「明日から私はまた小説に戻りますが、あなたの運動の上で必
要なら声をかけて下さい」と書かれてあった。現実の大衆運動に参加し
ている喜びが感じられる。ある著書の扉の献辞に「けっして遅くなかっ
た同時代者の出会いに感謝して」とあった。

 最後の小説が、「晩年様式集(イン・レイト・スタイル)」。
 原発事故の経過とともに、反対集会や記者会見の様子が書き込まれて
いる。
 戦後文学の社会参加(アンガージュマン)と私小説、異化効果とカーニ
バルなど、大江文学らしい世界が広がっている。
(3月28日「東京新聞」朝刊25面「本音のコラム」より)