後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔577〕絵仏師・明兆の五百羅漢図と巨大仏殿の仏像群が嬉しい、東京国立博物館の東福寺展に行ってきました。

2023年03月31日 | 美術鑑賞
 2023年3月30日(木)、久しぶりの上野詣でした。東京国立博物館の東福寺展に行ってきました。例年ですと、上野の美術館・博物館には年2,3回は足を運びます。しかしコロナ禍で、すっかり足が遠のいてしまっていました。
 まずは上野駅の変貌にびっくりしました。かつてなら駅を出るとすぐに横断歩道を渡って国立西洋美術館に向かうのですが、改札がそもそも位置が変更されて、信号を渡ることがなくなりました。つまり駅前の道路がなくなり、脇に車のロータリーが整備され、とても小綺麗でスマートになりました。
 逆に、国立西洋美術館の庭は設立当初に戻されてすっきりしたのですが、木立が消えてさびしい感じがしました。向かいの文化会館は植物スケッチパネルが多数設置され、歩きやすくなったようです。

 京都の東福寺は2回訪れたことがあります。確か最初は春先、2回目は紅葉の時期でした。
 私は仏像を見るのが好きで、全国約500ヶ寺を巡りましたが、東福寺では仏像を拝観した記憶がありません。今はわかりませんが、仏像を公開していなかったように思います。気になる仏像もそれほどありませんでした。
 しかし、通天橋からの紅葉はとりわけ有名で、シーズンには列を作って入場を待ちました。





 さて、今回の東福寺展、ひょんなことから招待券と割引券を入手しました。ならば行かない手はありません。普段見られない仏像も来ているようでした。
 連れ合いは入場に列を作っているかも知れないといっていましたが、やはりそんなことはなくスムーズに入館できました。ほとんどの人はマスク着用でした。
 まあまあ人も出ていましたが、それはBS日テレの「ぶらぶら美術館・博物館」で東福寺展を放送したからでしょうか。私にとってはこの放送は鑑賞の良い「予習」になりました。山田五郎さんの美術的博識にはいつも驚嘆しています。

 どうやら東福寺展で必見なのは、絵仏師・明兆の五百羅漢図と巨大仏殿の仏像群です。
 部分的に写真撮影が許されていました。通天橋を模した紅葉風景とか仏像の一部です。ヨーロッパの美術館・博物館ではノーフラッシュでの撮影がほぼ可能ですが、ようやく日本でも一部撮影ができるようになってきたのは嬉しいことです。
 では撮影した一部をご覧いただきましょう。










〔576〕企画展「ハンセン病文学の新生面」(国立ハンセン病資料館)、桜と椿が咲き誇っていました。

2023年03月30日 | 図書案内
 昨2023年3月29日(水)、国立ハンセン病資料館の企画展「ハンセン病文学の新生面」に行ってきました。矢部顕さんのメールから知った展示でした。(ブログ〔562〕参照)
 国立ハンセン病資料館は清瀬の仲間と何回か花見などに訪れているのですが、じっくり展示を見て回るのは初めてだったかも知れません。

 常設展示には北條民雄の小さな日記がありました。細かで端正な文字がぎっしり綴られていました。ようやく『いのちの初夜』(北條民雄、角川文庫)と『北條民雄集』(田中裕編、岩波文庫)を読み始めています。『いのちの初夜』には矢部顕さんの友人だった光岡良二の「北條民雄の人と生活」も収められています。



 企画展「ハンセン病文学の新生面」には「『いのちの芽』の詩人たち」という副題がついています。大江満雄編『いのちの芽』(三一書房)は1953年にらい予防法闘争のさなかに刊行されています。全国8つのハンセン病療養所から73人が参加する、初めての合同詩集でした。(パンフより)
 今回は嬉しいことに、来場者に『いのちの芽』の復刻をいただけたのです。



 常設展示は撮影不可ですが、企画展は撮影が許されていました。島比呂志、谺雄二、厚木叡(光岡良二)コーナーにカメラを向けました。









 2階の図書館で、ブログでも紹介した菅龍一さんの『おじいさんの手』なども見つけました。かつて関わっていた清瀬・教育ってなんだろう会が編集した『はじめに差別があった』(国本衛ほか、現代企画室)なども図書コーナーに展示されていました。



 入館・観覧は無料です。またじっくり拝観したいものだと思いました。
 外に出ると今まさに桜と椿が満開でした。菜の花も綺麗でした。
















   ハンセン病と炭坑(上) 沈思実行(136)
   ハンセン病趙さん―舌読は人間の意欲と希望と未来を表す
                 鎌田 慧
                        
 両手に抱えた大型の本を、顔に密着させるように近づけ、舌で舐めて
いる。点字本を舌先で読み取っている男性を、すぐ横から写したクロー
ズアップ。このハンセン病者の写真はどこかでみた。
 原爆の図丸木美術館から送られた「地底の闇、地上の光―炭鉱、朝鮮人、
ハンセン病―趙根在(チョウ・グンジェ)写真展」のチラシを眺め想いを
めぐらした。
 ハンセン病によって視力を失い、点字を追う指先の知覚も奪われた。
それでも読書の渇望もだしがたく、点字のかすかな凹凸を柔らかな舌で
まさぐる。障子を通して流れてくる光が、舌のシルエットをあざやかに
映しだしている。
 舌は言葉をあらわす。饒舌、冗舌、毒舌、舌足らず、舌先三寸、舌の
根も乾かないうちに。舌鼓などは味覚の表現。しかし、舌読は人間の意欲
と希望と未来を表している。
 「点訳のわが朝鮮の民族史今日も舌先のほてるまで読む」「ライ知らぬ
後の世の人は舌読のわが写真見ていかに思わん」
 写真の主人公、金夏日(キム・ハイル)さんの短歌である。撮影したの
は在日朝鮮人カメラマン・趙根在さん。「舌読」の写真は、金さんが生活
していた群馬県草津町の国立療養所「栗生楽泉園」での、「ハンセン病市
民学会」集会のときに目にしたのだろうか。
 このとき、反抗的な患者を収容した「重監房」も見学したのだが、たま
たま、金さんと文学仲間の詩人、ハンセン病市民学会の谺雄二さん
が逝去され、遺骸の前でご焼香した記憶がある。あるいは、東松山市の
国立ハンセン病資料館でみたのかもしれない。
 趙根在さんは記録作家・上野英信さんと『写真万葉集筑豊』(全10巻)
の共同監修者である。在日少年は家貧しく中学校中退、炭坑で働きはじ
めた。死と隣合せの過酷な零細炭坑の坑内労働とのちのハンセン病撮影
とを結ぶ線にこの執念のカメラマンがいる。
 わたしは上野さんと趙さんが、精魂こめて集録した写真集を書庫から
取りだし、上野さんに案内された、自宅の炭坑長屋の裏手にある、朽ち
果てた炭坑の暗い穴を思い出した。
               (「週刊新社会」2023年2月22日)

*国立ハンセン病資料館は東村山市の誤植と思われる。

〔575〕半田たつ子さんの近著や投稿にしっかり向き合いたいと思います。

2023年03月28日 | 図書案内
 半田たつ子さんにいただいた著書『過ぎし日々に向き合う』(朝日新聞社編集協力、2017年)についてはブログ〔153〕で紹介しましたのでそちらでご覧ください。

 半田さんが1982年に雑誌『新しい家庭科-We』を創刊された2年目に、私は小学校家庭科の実践を連載させていただきました。福田緑との共著『男の家庭科先生』(冬樹社、1989年)には半田さんに推薦のことばを書いてもらいました。お世話になるばかりでしたが、夫婦の共同誌「啓」だけは欠かさず送っていました。



 半田さんは優に10冊を超える著書をお持ちです。おそらく私はそのすべてを所有していると思います。
 最近いただいた本だけでも紹介しましょう。

・『失い、そして得たもの-響き合って、二十年』教育史料出版社 2014年


・『過ぎし日々に向き合う』朝日新聞社編集協力、2017年


・『歌集 あさひゆめみし ゑひもせす』NHK学園、2020年


・『響き合って生きる』文芸社、2022年


 90歳を超えてますます内容豊かなで素敵な本を出版されることも見習いたいのですが、新聞への投稿などで「情況への発言」も欠かさないことにも襟を正されます。朝日新聞の「声」欄と「多事奏論」に手紙が紹介されています。




〔574〕3月21日は「佐藤公子パーティ 55周年記念発表会」(ラボ教育センター)に馳せ参じました。

2023年03月25日 | ラボ教育センターなど
 3月21日(火、春分の日)は「さようなら原発 全国集会」(代々木公園)の日でした。岸田内閣による許しがたい原発再稼働・原発新設方針のことを考えると、本来なら駆けつけなければならないのですが、先約がありそれは叶いませんでした。

 昨年のいつ頃だったでしょうか、「佐藤公子パーティ 55周年記念発表会」(ラボ教育センター)の参加申し込みメールが係の学生から届きました。以前の50周年記念発表会に伺えなかったことがあって、今回はどうしても参観したいと思ったのです。
 私はラボ教育センターの言語教育総合研究所に所属していて、2006年から研究活動を継続しています。研究テーマはラボ教育センターのテーマ活動の方法論の探求です。その研究手段として、テューターへのインタビューを通してその方法を探り出そうというものでした。
 今まで4人のインタビューを終えていますが、文章化しているのは3人です。近々4人目のインタビューのまとめが完成の予定です。
 さて、そのインタビューの1回目に登場いただいたのが佐藤公子さんでした。5年ほど前のことでした。優れた実践家として名前が全国に響き渡っている方です。私が注目したのは彼女が東京外語大の学生の時に、あの伝説の劇団ぶどう座から劇団雲に所属して、俳優をめざしていたことです。リアルタイムで木下順二、山本安英、竹内敏晴などといったそうそうたる伝説的メンバーと交流があったということです。ひょっとして茨木のり子さんとの出会いもあったのではないでしょうか。

 佐藤パーティには驚かされることばかりですが、そのひとつは、このパーティがなんと55年も続いていることです。しかも子どもたちが1歳から大学生まで約60人が在籍しているというのです。約20歳の年の差のある異年齢集団の共同体というのが凄いですね。私は小学校教師と大学講師で約50年になりますが、それよりも5年も多く、脱帽です。



 さて、会場は座・高円寺(中央線高円寺駅徒歩数分)でした。研究活動で一番お世話になっている事務局の吉岡美詠子さんも同席されました。
 当日のプログラムを紹介しましょう。第1部から第3部まで実に盛りだくさんの出し物です。第2部までしか参加できませんでしたが、その内容にまずもって圧倒されました。




*100頁を越す充実した記念誌


 現在在籍している子どもたちだけでも幼児・小学生、全員、シニアクラス、高大生有志の発表と多彩です。それだけではなく、なんと保護者、OBOG、さらに他のパーティ、ラボテューターのパフォーマンスまで目白押しです。昼過ぎに始まって終了は何時だったのでしょうか。
 招待席の中央で弾ける躍動を拝見しながら、小学校教師時代の学級学習発表会を思い出していました。3学期のある日、教室に保護者の方を迎え、楽器演奏、合唱、縄跳び、そして詩の朗読と群読、朗読劇、劇などを展開したのでした。さらに、お母さん方が用意してくれた飲み物やお菓子を前にして、私から子どもたち一人ひとりの活躍について紹介し、最後はお母さん手製の私への感謝状授与で幕が閉じられるのでした。




*佐藤公子さん登場!


  この半日、豊穣な劇的表現空間に身を浸し、全身が覚醒するのを実感したのでした。








〔573〕「Weフォーラム2023オンライン:第1回〈シリーズ・戦争を語る 1〉「二度と人を「靖国の神」にしてはならない」(古川佳子さん)に参加しました。

2023年03月14日 | 図書案内
 連れ合いの福田緑が写真集『祈りの彫刻』シリーズ(全5冊、丸善プラネット株式会社)を出版したり、それを元にした写真展を開催したりすることで、多くの人と知り合うことができました。そのお一人に関西在住の中村英之さんがいらっしゃいます。東京での写真展にもわざわざおいでいただき、我が家にもみえたこともあります。
 その中村さんからご自身が企画・撮影・インタビューなどをお一人でこなした「Weフォーラム2023オンライン:第1回〈シリーズ・戦争を語る 1〉「二度と人を「靖国の神」にしてはならない」(古川佳子さん)の案内をいただき、参加することにしました。
 2,3日して感想を会の事務局に送りました。

◆半田たつ子さん編集の「We」の初期に小学校の家庭科実践を連載させていただいた者です。今回のフォーラムへは映像作成者でインタビューアーの中村英之さんからのお誘いで参加させていただきました。
 「箕面忠魂碑違憲訴訟」については基礎知識も乏しかったのですが、重要な役割を担った方々の人となりが垣間見られて良かったです。古川佳子さんは様々な社会運動に対して悲壮感はみじんも感じられず楽しんでおられるようでした。運動を長く持続される秘訣のようなものを学んだ気がします。とりわけ印象深かったのは大杉栄と伊藤野枝の四女、伊藤ルイさんのことです。我が家(東京都清瀬市)の近所に住まれるルポライターの鎌田慧さんからもご自宅に宿泊されたことなどを伺っていました。
 いま古川さんの『母の憶い、大待宵草』(中村さんからいただいたものでした)を再読しています。インタビューでの語り口とは若干ニュアンスが異なる文学性を漂わせる「よき人々との出会い」でした。 


 感想メールにもある『母の憶い、大待宵草』を興味深く再読しています。内容を紹介します。



■『母の憶い、大待宵草』(白澤社HPより) 
著者 古川佳子[著]/田中伸尚[跋]
2,860円(本体2,600円) 四六判並製、256頁 2018年3月
●内容紹介
著者は、箕面の忠魂碑移設に公費を支出するのは違憲だとして起こした住民訴訟の原告兼事務局の一人。そこには、戦争末期に相次いで戦死した二人の息子を〈是れに増す悲しき事の何かあらん亡き児二人を返せ此の手に〉と生涯忘れることがなかった母の憶いがあった。地裁で画期的勝訴となったのち、「普通の主婦」だった著者は怒濤の日々を送ることになるが、そのなかで出会った、いまは亡きよき人々との交流を描いた感動のエッセイ。ドキュメンタリー作家・田中伸尚さんが跋文を寄稿。
●著者略歴
古川佳子(ふるかわ よしこ)
 1927年大阪生まれ、二男三女の次女。兄二人は戦争末期に相次いで戦死。46年古川二郎と結婚し、二男一女を育てる。箕面の自宅近くの忠魂碑移設について、神坂夫妻の呼びかけで夫とともに違憲訴訟の原告の一人となる。82年の地裁判決での画期的勝訴ののち、怒濤の日々を過ごす。出会ったよき人々との交流を『反天皇制市民1700』に15回連載し、本書となる。
●目次
第一章 父、小谷謙蔵のこと
第二章 母、小谷和子のこと
第三章 母、和子の戦後
第四章 夫、古川二郎のこと
第五章 ランソのヘイ、松下竜一さんのこと
第六章 箕面忠魂碑違憲訴訟、神坂哲・玲子夫妻のこと
第七章 「紡ぎ人」伊藤ルイさんのこと
第八章 啖呵きる短歌を詠う三木原ちかさんのこと
第九章 「戦死ヤアハレ」、竹内浩三さんのこと
第十章 忠恕のひと、井上とし枝さんのこと
跋 過去が朝 くる前に(田中伸尚)


 さて、このフォーラムは現在6回まで予定されています。

・第2回 4月13日(木)20時~「ジェンダー視点で見直す『バックラッシュ』と政治」竹信三恵子さん(ジャーナリスト)
・第3回 5月13日(土)14時~〈戦争を語る 2〉「記憶の中の戦後史」向井承子さん(フリーランスライター)
・第4回 6月9日(金)20時〜「クルド女性と日本社会をつなぐ~ことば・食・友だち」磯部加代子さん(ジェミニ代表/トルコ語通訳)
・第5回 7月8日(土)14時~〈戦争を語る 3〉「私の戦争体験とその後」入江一惠さん(NPOひまわり会創始者/Weの会・関西)
・第6回 9月8日(金)20時〜「ジェンダー×植民地主義 交差点としてのヒロシマを語る」高雄きくえさん(ひろしま女性学研究所主宰)

〔572〕3.11「福島第一原発事故は終わっていない」「東海第二原発動かすな」2つの集会が貫徹されました。

2023年03月13日 | 市民運動
「3月11日(土)はフクシマから12年、コロナもあるけどどうしても2つの集会(東京電力と日本原電)に駆けつけなければね。」と連れ合いと話し合いました。幸いお天気は上々、絶好の集会日和です。



 まずは東京電力前(新橋駅から徒歩五分)に丁度1時半に到着しました。東電前の道路を挟んですでに多くの人が参集していました。道路が直角に交差したところに太鼓や楽器やマイクをまとめた舞台が据えられていました。なんとか2人とも人垣に潜り込んで参加することができました。
 有り難いことに、その時の様子をたんぽぽ舎のメルマガ(4717号)が次のように伝えています。私が撮影した写真のあとに転載させてもらいます。その後には鎌田慧さんのコラムもどうぞ!





*落合恵子さん登場




*東電への申し入れ行動


■1.福島第一原発事故は終わっていない、
 | 放射能汚染水を海に捨てるな!
 | 東海第二原発動かすな−3月11日(土)2つの本店行動の概略
 └──── 柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)

参加者:東電→355名、原電→165名 計520名
     (昨年:東電→305名 原電→135名 計440名)

カンパ:東電→8万円、原電→4万2386円 合計12万2386円
     (昨年:東電→7万円 原電→3万円)

報道:NHK、
   中国系4社(人民日報社・鳳凰衛視東京支局・新華社通信・
         中国中央広播電視総台)、
   独立系3団体

スピーチ者 東電11名、原電8名

申し入れ:東電:2団体(「反原発自治体議員・市民連盟」、
            「山谷労働者福祉会館」)
     原電:2団体(「とめよう!東海第二原発首都圏連絡会」、
            「反原発自治体議員・市民連盟」)

音楽:東電前:大太鼓、日音協、日本原電6人衆
   原電前:日本原電6人衆

☆東電本店合同抗議行動の動画は、【動画アップの紹介】を参照。

■2.日本政府は恥ずかしげもなく原発推進の道を選んだ
 | 原発は平和に敵対するもの(鎌田慧さんのスピーチ)
 | 3.11追悼と東電本店合同抗議行動に参加  (上)
 └──── 佐内 朱(たんぽぽ舎)

◎ 3.11(土)、第114回東電本店合同抗議行動と追悼が行われた。
 私事で恐縮だが、私の仕事先の相手である89歳の女性が、先日、「福
島第一原発事故で発生した汚染土は、官邸に持って行くか国会議事堂に
持って行けば良いのよ、身を切る政治とはそういうものよ」と仰り、普
段控えめな彼女がそこまで仰ることに少し驚くと共に、彼女の思いも心
に留めて今回の抗議行動に参加しなければ、と思った。

◎ 晴天に恵まれた。続々と参加者が集まってくる。様々なのぼり旗、
横断幕が用意されている。中でも目を引いたのが、横断幕を外に向けて
フェンスに貼り付け、山手線の乗客からも見えるようにしていること
だった。
 柳田さんが色々なメディアからコメントを求められている姿も見られ
た。NHK、新華社通信、鳳凰衛視東京支局、なにぬねノンチャンネル
ニュース…私達の思いが、メディアを通して少しでも人々に届けられる
ことを願うばかりだった。

◎ 開会宣言が行われ、多摩川太鼓の演奏が始まる。今日は2人での演
奏、いつにも増して力強さが伝わってくる。
 その後、地震と津波、原発事故、関連死で亡くなった方々への黙祷が
行われた。黙祷を始めると、胸の中に熱いものが込み上げてきて、亡く
なった方々の強い思いが押し寄せてくるような感覚を覚えたのは、私だ
けではないはずだ。

◎ 三上治(「経産省前テントひろば」)さんの主催者あいさつが行われ
る。
 誰もが当たり前に思っている、「もう原発はいらない」という国民の
意思を政府は無視している。政府が目論んでいる原発の再稼働を私達の
12年に及ぶ闘いがそう簡単には実現させていない事実、そして私達は自
分達の運動に自信を持って、これからも闘い続けようというお話だった。

◎ 先ずは、山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)さんのスピーチ。
 この12年間、私達は原発は縮小していく、無くなっているものと期待
していた。しかし岸田内閣の大転換政策で、原発の再稼働、更には新規
増設にまで及んでいる。昨年7月、東京地方裁判所が、東電の取締役に
対する賠償責任を命じた判決では、裁判長が「もう一度このような事故
が起きれば、この国が滅びる」とまで言及したことに触れる。
 そして書き換えが目指されている原子力基本法では、原子力は国が責
任を持って推進する、とまで書かれている、この国を原子力と共に滅亡
させる法律に書き換わろうとされている、というお話しをした。
 そして「小型モジュール原発」の開発によって、日本を原子力空母や
原子力潜水艦を保有できる国に変えようとしていることを、断固、阻止
しなければならない、と訴えた。

◎ 次は、「脱ヒバク実現ネット」の岡田俊子さんのスピーチに。
 いわき市の綺麗な海、ふるさとを返して、と訴え、汚染水に含まれる
トリチウムの恐ろしさを書いた、渡辺さんという方の本を紹介してくれ
る。
 福島県下で増え続けている小児甲状腺がんの実態、そして7人の若者
が勇気を持って裁判を起こし、東電の謝罪と補償を求めていることもお
話ししてくれた。

◎ 続いて鎌田慧(ルポライター)さんのスピーチに移る。
 日本は世界で3番目の軍事費(10兆円)を投じ、平和への道から逆転
して戦争への道を歩み始めている。そして政府は恥ずかしげもなく原発
推進の道を選んだ。原発は平和に敵対するものである。
 そして、原発事故で出た汚染土を全国に撒き散らそうとしている、こ
れは人間を大事にする政治とは言えない。3.11は福島の人々の絶望と
希望を私達が噛み締めて生活していく日、一人ずつ決意を新たにして、
諦めず進んでいこうと訴えた。
 コールに続き、カンパのお願いを佐々木敏彦(東電本店合同抗議実行
委)さんがする。
 今後1年間、絶対原発を無くすという誓いを込めて、その為の資金援
助をお願いしたい、と話した。
 東電への申し入れを、「反原発自治体議員・市民連盟」と、「山谷労
働者福祉会館」の人が行った。 (下)に続く


◆民主主義からの遁走

              鎌田 慧(ルポライター)

 菅義偉前首相が就任するやいなや、まっ先に断行した日本学術会議会員
候補の任命拒否。学問の自由に対する露骨な弾圧事件だが、2年半たって
もいまだ解決されていない。
 それどころか、この野蛮をカムフラージュするために産業界などを含め、
会員選考の「第三者委員会」を設置する法改悪を図っている。
 任命されなかったのは政治学者、憲法学者、歴史学者の6人。それぞれ
安保法制、特定秘密保護法など安倍晋三首相当時の反民主化政策を批判し
た人たちだった。

 菅首相が就任直後に見せつけた強権の行使は、あたかも首相任命への
儀礼のようだった。学術会議の梶田隆章会長は、速やかな任命と任命拒否
の理由を求めたが無視、さらに選考基準を変えようとしている。
 学問の世界に政治力で踏み込み、批判者をパージするばかりか組織の
自律性を破壊するのは、憲法二三条、学問の自由の侵害である。

 学術会議の歴代会長の5人は連名で「アカデミーでの自律的な会員選考
こそが、普遍的で国際的に相互信頼の基礎になっている」との声明を発表
した。
 2月下旬、日本人ノーベル賞受賞者と数学のノーベル賞と呼ばれるフィ
ールズ賞受賞者の計8人が「成熟した先進国の政府は、ナショナルアカデ
ミーの活動の自律を尊重し、介入しないことを不文律にしてきた」と指摘
した。
    (2月28日「東京新聞」朝刊「本音のコラム」)

〔571〕春一番!「裏山の亀山城跡でプレーパークをやりました。」(矢部顕さんのお便り)

2023年03月12日 | メール・便り・ミニコミ
●福田三津夫様
先日の土曜日、裏山の亀山城跡でプレーパークをやりました。
毎年、年一回はやっているのですが、以前にお知らせしたかも
しれません。
天候に恵まれ、約100人くらいの親子の参加がありました。



プレーパークの考え方は、デンマークからの輸入されたとのことで、
日本での活動の普及には門脇厚司先生もかかわっていただいたことを
後で知りました。
プレーリーダーは、研修会で門脇先生の講演をお聴きしたことがある
と言っていました。
プレーパークなんていうハイカラな名前なのですが、「冒険遊び場」と言った方
が我々の世代にはピンときます。要するに、中身は我々の世代にとっては、
まさしく日常的な子どものころの遊びです。

                            矢部 顕

〔570〕矢部顕さんのお便り「ウクライナのお嫁さん」と『ひとが生まれる』(鶴見俊輔)のあれこれ。

2023年03月03日 | メール・便り・ミニコミ
 このブログでお馴染みの矢部顕さんから「ウクライナのお嫁さん」というエッセイが届きました。以前にブログに掲載させていただいた続編になっています。
 さらに、今回は『ひとが生まれる』(鶴見俊輔)にも言及されています。鶴見俊輔は日本の知性とも言われる人で、同志社大学での矢部さんの恩師と聞いています。実は私の手元にある『ひとが生まれる』は矢部さんからいただいたものでした。



◆ウクライナのお嫁さん

 私の友人(年齢は一回り以上の年下)で、チェルノブイリ原発救援活動でウクライナに派遣されていた人がいました。片道切符で行ったのですが、18年間ウクライナで暮らして、数年前に故郷の岡山に帰ってきたときには、うつくしいウクライナのお嫁さんと一緒に帰ってきました。
岡山の何か所かで彼を講師に反原発の講演会をしました。もっとあちこちで反原発の講演会をやりたいと考えていた私。
 お嫁さんは、遠い国の岡山で寂しいだろうと思いラボに誘いました。子どもたちの演じる「てぶくろ(ウクライナ民話)」などを見せてあげたり、ラボの若いお母さんと友達になれればいいかなと考えたところ、そうこうしているうちに妊娠して、お身体の調子がすぐれず、実現しませんでした。
 最近の年賀状に写真には、二人のかわいいお嬢さんが写っていました。二人の子どものお母さんになっています。
 帰省して、彼はしばらくは翻訳などの仕事をやっていたのですが、栃木県の大学からの誘いがあって、転居してしまいました。

 ラボでは国際交流参加者の課題図書として、『ひとが生まれる』(鶴見俊輔著)の中の「中浜万次郎」を子どもたちは読んでいます。1980年からですから40年以上です。なんと、彼・竹内高明くんは、大学の社会思想史の教材として『ひとが生まれる』を使っているとのことでした。 昔からの愛読書だったそうです。
 第一章は「中浜万次郎」ですが、第二章「田中正造」、第三章「金子ふみ子」の2人とも栃木県に関係するからとのこと。彼の勤務する大学は栃木県にあって、田中正造が戦った足尾銅山も近いし、金子ふみ子は最後に栃木刑務所で自殺したのでした。
 鶴見さんのこの本は、やさしいことばで人間の深い精神性やあるべき社会を中学生に語りかけていますが、大学生の授業で利用していることに竹内くんのセンスを嬉しく思いました。

 お嫁さんのお母さんはウクライナで無事のようでしたが、夫婦でのウクライナ支援活動に取り組んでいて忙しそうでした。以下は最近の彼からのメールです。
 「ロシアのウクライナ全面侵攻が始まり、連れ合いの家族はとりあえず無事なものの、諸団体のウクライナ支援の手伝いや、連れ合いが友人たちと始めたささやかな支援活動の手伝いで忙しい日々が始まりました。連れ合いは昨年7月、支援物資を持って単身キーウに行ってきました。その際の印象を「チェルノブイリ救援・中部」の機関紙に書いたものがありますので、興味がおありでしたらご覧下さい。以下のURLで、2~3ページ目です。」(2023.3.2.)

         http://www.chernobyl-chubu-jp.org/poreshe192_20221215.pdf

                                                      矢部 顕