元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

労働契約法3条5項は、民法1条3項の権利濫用禁止の書き写し??

2017-07-01 17:46:32 | 社会保険労務士
 使用者の指揮命令を常に妥当かどうか審査する役割として大きな意味!!

 労働契約法第3条5項においては、労働者、使用者双方に労働契約の権利の行使に当たって、この権利濫用を禁ずる旨の規定があります。
 労働契約法3条5項
 労働者及び使用者は、労働契約に基ずく権利の行使に当たっては、それを濫用する事があってはならない。
 
 この条文は、なんのことはない、ただ単に民法の大原則である権利濫用の禁止をそのまま書き写したのかなうと思っていたのですが、労働契約法の解説を見るともっと大きな意義を有する規定であったようです。
 民法1条(基本原則)3項
 権利の濫用は、これを許さない。

 初めから説明しますと、労働契約は「労働者が使用者に使用されて労働」する契約(労契法6条)であり、そこで具体的にどのように労働を提供するかは、使用者の指揮命令に従わざるを得ない。今日の仕事、明日の仕事、・・という将来の仕事や注文先の状況に応じて仕事の内容も変わってくるものだし、労働者の労働義務の具体的な内容をすべて労働契約に規定することは不可能で、その都度の使用者の指揮命令によって仕事の内容を具体化することは必然的なものといえる。すなわち、労働契約を労働者が実行(履行)するためには、使用者の指揮命令は必ず伴うものであるといえる。<これを荒木著労働法では、他人(=使用者)決定性という問題が常に内在するといっている。>

 しかし、だからといって、必ずしも使用者の命令が妥当なものとは限らないのである。例えば同じ鉄道会社の例であるが、駅員に対して火山の降灰除去作業を命じたもの(最高裁では適法)や教育訓練と称して就業規則の書き写しを行わせたもの(懲罰的目的から違法)があり、これらは、使用者の有する「指揮命令権限」の行使の妥当性を常に吟味しなければならないのである。

 そこで労働契約法3条5項の権利濫用の禁止の規定は、労働契約関係には、使用者の一方的な決定による指揮命令を行うということが必然的になされることから、そこでは常に権利濫用の審査が要請されることを確認したものということができる。労働契約に基づく権利行使の権利濫用については、特に使用者において、民法1条3項の権利濫用の書き写しだけではない、このように労働契約特有の大きな意味を持つものである。

 参考 労働法 荒木尚志著 有斐閣
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