元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

労働者の一方的な労働契約の解約<=辞職>は民法の規定がそのまま適用<辞職について簡潔に整理しました>

2017-05-20 12:30:53 | 社会保険労務士
 ただし労働契約期間1年超経過から原則的には自由に辞職可能
 
 解雇とは、使用者からの一方的な労働契約の解約であり、それは労働者の生活の権利を脅かすものとなるので、①業務災害・産前産後の場合の休業期間及びその後30日間の解雇禁止(労基法19条1項) ②解雇予告期間30日(またはそれ相応の賃金の支払い)が必要(労基法20条1項)③合理的な理由を要する解雇権濫用法理(労働契約法16条)等によって、解雇の制限を加えられている。
 これに対して、真逆の概念である、労働者からの労働契約の一方的な解約である「辞職」は労基法・労働契約法等の修正がほとんど加えてはなく、一般法である民法が基本的にはそのまま適用になる。
 以下、両角他労働法に簡潔に整理されているので、これに沿って、説明したい。この説明で大前提となる重要なポイントは、民法そのものの中で分けられているように、有期労働契約(期間の定めのある労働契約)と無期労働契約(期間の定めのない労働契約の場合)に明確に区分して考えることである。

 (1)期間の定めのある労働契約の場合
 労働者も原則としては期間の定めに拘束されるので、契約期間中の辞職の場合は「やむを得ない事由」が必要である。(民法628条)
 なお、1年を超える定めがある労働契約・・(略)・・・ を締結した労働者は、民法628条の規定にかかわらず
(すなわち「やむ得ない事由」は必要なく)、その労働契約の期間の初日から1年を経過した日以後においては、自由に辞職することができる。<*注>(労規附則137条)<両角他著労働法第3版P219>
 ここで、労働契約期間については、労働契約は原則3年までとされている(労基法14条1項本文)ので、通常は上記の「1年を超える定めがある契約を締結した労働者」というのは、1年を超え3年までの契約をした労働者ということになる。その場合の契約期間が1年を超えた時点から、期間の定めのあるにもかかわらずに、自由に労働契約を解約できるということである。なお、労働契約原則3年の例外であるところの①例えば工場の建設に4年かかるような「一定の事業の完了に必要な期間」(必要な期間であり何年という制限はない)や②「高度の専門的知識等を必要とする業務に従事する労働者の労働契約期間」および③「満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約期間」の場合は5年まで(②・③の場合)の契約期間の締結が可能であるが、これらの契約期間(①②③)においては、労基附則137条は適用にならないので、契約期間が1年を経過しても、自由には解約はできない。

 (2)期間の定めのない労働契約の場合
 労働者は、2週間前に予告すれば「いつでも」自由に辞職できる(民法627条1項)。この規定は強行規定であるというのが学説上は通説である。(ただし反対説もある)。つまり、例えば就業規則で労働者の辞職の場合に30日前の予告を義務づけていたとしても、その規定に拘束力はない。また合意解約の申込みの場合とは異なり、辞職の意思表示は使用者への到達後は撤回できないと解されている。
<両角他著労働法第3版P220>

 <*注>この部分のみが、労働基準法による民法の修正部分ということになる。
 <参考・引用> 両角道代・森戸英幸・梶川敦子・水町勇一郎著 労働法 有斐閣 (引用は斜線部分)  



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