元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

労働者退職の申し入れは2週間経過により解約となるがその2か月前に申し入れさせたい??

2016-10-01 17:52:38 | 社会保険労務士
 2週間経過解約は強行規定ですので、就業規則に努力義務としての定めを!!

 使用者が行う「解雇」については、労働基準法上、30日前の解雇予告が義務付けられています。一方、労働者の退職については、労働基準法では何も規定されていませんので、民法の一般原則にかえって見ると、期間の定めのない契約については、いつでも解約の申しれが可能で、解約の効果は申し入れ後2週間経過することによって生じるとされています。(民法627条1項) 
 
(ただし、欠勤によって給料が差し引かれない完全月給の場合は、給与の計算期間の前半において、次の期以後に解約することについて、当該解約の申し入れができるとなっていますので、さらにちょっと長めの期間の余裕をもって申し出ることが必要です。以下の設定においては、申し入れは、使用者の就業規則をどうするかということですので、短めの期間2週間が経過すれば、月給者の場合も労働契約は終了するということで、労働者に有利な契約で一応設定します。)

 そこで、一般的な就業規則においては、次のように、2週間の申し入れ期間を置くのが一般的です。
 ◎ 従業員が次の何れかに該当するときは、退職とする。
 (1) 本人の都合により退職を願い出て会社の承認のあったとき、または、退職願の提出後14日を経過したとき
 (2)・・・・・・
   前段は、合意解約の規定、 後段が2週間の申し入れ期間をおいた規定です。

 しかし、これでは、ほとんどの会社においては、後任者の補充も間に合わず、また、事務の引継ぎ等では何もする余裕がないというのが実情でしょう。少なくても1か月、会社によっては2か月の期間が必要というところもあるでしょう。特に何かトラブル等があって退職するのであれば、労働者にとって事務の引継ぎなんてなんのそのでしょう。

 そこで、従業員が退職するときに「少なくとも30日前に届け出」を必要とするとした場合はどうでしょう。民法627条1項の規定する「労働者の解約権」は、長期の契約の拘束を排除して、退職の自由を確保する強行規定であると考えられていますので(平和運送事件、大阪地判昭58.11.22)、30日前の届け出の就業規則の規定は無効となり、届け出2週間の経過により退職は認められてしまいます。それでも、従業員に余裕をもって届け出をするように、あえてこの規定を就業規則に載せておくという会社もあるかもしれません。あえて、その方法を取るのでしたら、何もいいませんが、少なくとも今はインターネットを見れば、「2週間経過すれば退職は可能」というような記事がみられますので、従業員からそれを言われたら、会社側としては反論はできないところです。

 そこで、義務としての定めではなく、努力義務として定めるのです。
 例1
  ◎原則として2か月前までに申し出るようにしなければならない。ただし、やむを得ない事情がある場合は2週間前までに申し出ることができる。(労働基準法の実務相談、社労士連合会)
 例2
  ◎従業員が自己の都合により退職しようとするときは、原則として1か月前、少なくとも2週間前までに所属長に退職願を提出しなければならない。
   (就業規則モデル条文 中山慈夫著)
 例3
  ◎北村庄吾・桑原和弘共著の「就業規則」においては、長文になるので直接の引用はしないが、強制であることをうまく避けた規定になっている。
   ● 退職希望日の2か月前までに退職の予告、30日前までに退職届け出の提出を行えば会社の承諾により合意解約、30日後であっても事情により同合意解約の措置(労働者からのの一方的な解約ではなく合意解約の形になっている点に注意)、退職の日までは業務上の会社からの指示に従い引継ぎ等での退職日前2週間は現実に就労を義務づけ、これに違反した場合は退職金の減額があることをうたっている。(詳しくは、「御社の「就業規則」ここが問題です!北村庄吾・桑原和弘共著、実務教育出版)

 いずれにしても、ここでは強制的に書くのではなくて、1・2か月前はあくまでもお願いなのです。使用者としては、業務に支障を生じないように早めの申し入れを行うよう「勧奨」しましょう。しかし、労働者にとっても、事務の引継ぎ等退職に伴い「日常業務以外に行うべき業務」についても、労働契約がまだ活きている限り、会社の指示に従って行うべき信義則上の義務があることを忘れてはなりません。お互いの協力を得て円滑に最後の業務を終了するのが原則です。

 参考・一部引用 労働基準法の実務相談、社労士連合会
         就業規則モデル条文(第2版) 中山慈夫著 日本経団連出版
         労働法実務講義(第3版)   大内伸哉著 日本法令  P526
         「御社の「就業規則」ここが問題です! 北村庄吾・桑原和弘共著、実務教育出版 p55

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