元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

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テレワークの「ちょこっと残業」はグレーの労働時間<事前許可制・その運用を適切にすべし>

2021-10-10 09:01:53 | 社会保険労務士
 黙示残業命令ゆえに「ちょこっと残業」は労働時間と捉えられる場合もあること

 企業のテレワークが増える中で、「ちょこっと残業」というのが聞かれるようになった。「ちょこっと残業」(※注※)と言うのは、自宅での仕事のため、いつでも仕事が始められるので、いったん本来の仕事を終了したのち、ちょっとの間、仕事をすることをいうようである。確かに、あそこに仕残したとかあるときに、風呂に入る前にとか、夕食前にとか、ちょっとパソコンを立ち上げ仕事をすることがある場合もあろう。

 この場合、労働者本人は、労働時間の申請をしない者もいるだろうし、かっきり労働時間の申請を行おうと考えている者もいるかもしれない。労働時間は、使用者の支配下にあり命令されて行うものとされているので、この「ちょこっと残業」は、本来、労働時間とはとらえられないものであろう。しかし、上司からの「黙示の命令」として捉えられることもあるので、全く労働時間として考えられないかというとそうでもない。極端な例であるが、労働者本人が本人本位に残業を行って、それを後から会社側が認めるという形になっているならば、黙示の命令による残業時間であろう。したがって、この「ちょこっと残業」については、残業代請求の火種を秘めている大きな問題である。

 では、この「ちょこっと残業」をちゃんと労働時間として、あるいは逆に労働時間ではないとして捉えるにはどうしたらいいのか。事前許可残業申請制度とその運用の適正化をすればよいと考えられるところである。就業規則に残業する場合は事前に許可を受けなければならないことを規定すること これを規定しただけではだめで、従業員がこの規定どおり許可申請を行った上で残業をしているかのチェックをしなければならないのである。人によっては残業許可申請をせずに残業するものもいるので、そういう方が見受けられるようになると、会社が残業を「黙認」しているとして「黙示の残業命令」が考えられるようになり、後から残業請求されることになりかねないのである。会社に来ているうちは、残業しているかのチェックできるが、テレワークになるとこのチェックは難しくなる。そのため、「ちょこっと残業」の問題が出てくるのである。

 事前許可制である限り、本当に必要でない「ちょこっと残業」については禁止していることになる。このことをテレワークを始める際に、従業員に伝える。また、テレワーク途中においても、メールで、テレワーク会議においても、折に触れ伝えることを忘れてはならない。また、「ちょこっと残業」を行っているようなことを見つけた場合は、すぐさま中止させて、さらに全体の従業員に再度伝えることが必要であろう。事前許可制度を採用していても、テレワークにおいては、さらなるチェックが必要となるのである。

 ただ、事前許可制度においては、全部残業を禁止しているのではなく、本当に必要な残業においては、許可を受けて残業を行うことになっているのは周知のとおりである。例えば、取引先や顧客対応のため、残業が必要になってくるだろう。そのときは、本当に緊急性の高い案件については、事前に上司の(場合により相談の上)の判断で、会社は許可を与えていくことになる。事案によっては、時間がなく事後の許可もやむをえないこともあろう。

 (※注※) この「ちょこっと」とは、意味は「少し」ということで「ちょっと」と同じであるが、違いを言えば「さらに少し」という意味であろう。

 参考 ビジネスガイド10月号・テレワークにおいて発生しがちな問題と具体的解決策(特定社会保険労務士 榊裕葵著)
    →この中で「ちょこっと労働」として使われている。
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