元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

テレワークのみなし労働時間は「みなす」であり反証があってもこの限りは覆せない

2021-03-28 13:54:22 | 社会保険労務士
 みなし労働時間制は使用者には労働時間の把握は免除され⇒一定労働時間のみなし

 テレワークにおいて、事業外労働みなし時間制の適用にあたっては、平成20年の通達改正(*1)が発出されてから、より認められやすくなったところです。このみなし時間の制度は、読んで字のごとく、事業外で労働をする場合に、労働時間の把握が困難な場合に、一定時間労働したものとみなす制度です。テレワークにおいては、自宅の勤務が主ですので、「事業外」の勤務であって、通達どおりの条件を満たせば、みなし労働時間の適用がみとめられるということです。使用者は、直接書いてはありませんが、当然のごとく、労働者の労働時間を把握した上で、労働基準法に基づき、賃金や割増の賃金を支払わなければならず、この労働時間の把握は使用者の義務となっています。これが労働時間を把握しがたいことになれば、使用者は、この労働時間の把握義務が免除となるわけです。
*1 情報通信機器を活用した在宅勤務に関する労基法38条の2に適用 H20.7.28基発0728002

 労働基準法第38条の2
  労働者が労働時間制の全部または一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定しがたいときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし・・・

 労働時間の把握が困難となった結果として、使用者には、労働時間の把握義務がなくなり、このことにより、はじめて、労基法38条の2の「本文」では、一定の労働時間の「所定労働時間」働いたものと「みなす」わけです。本文では、所定労働時間働いたものとみなすことから、本文を読む限りは、例えば、就業規則に労働時間の記述があり、そこに、例えば始業9時 終業18時 昼休み1時間の記載があるならば、8時間((18時ー9時)ー1時間=8時間)を労働したものとみなすことになるわけです。

 ところで、労働基準法38条の2は、「みなす」とされています。これは法律用語で、対語は「推定する」です。推定するというのは、反対の証明を突きつければ、その事実は覆されますが、この「みなす」にあっては、法律上確定的にそのようなものとして法的に扱うということであって、反対の証明を突きつけたからといっても、その事実はそういうこととして取り扱うということなのです。前述の就業規則では、8時間労働としてみなすならば、8時間労働として取り扱うということです。

 したがって、それぞれの労働日において、8時間労働より、多く働いたからといって、使用者はみなした労働時間(=8時間)以上に賃金を支払う必要はなく、逆に、これより短い時間しか働かなかったことが分かっても、使用者は賃金の控除はできないということなのです。

 しつこいかもしれませんが、前述の就業規則どおり、所定労働時間が8時間の労働者については、この『所定労働時間みなし』の適用が有効であるときは、それぞれの労働日に、12時間働いたことを証明したとしても、残りの4時間については、労働者は賃金を請求できません。一方、実際には5時間しか働かないことが分かったとしても、使用者は逆に3時間分を控除はできないということです。

 このみなし労働時間の規定は、使用者側が時間外賃金の抑制策として、よく利用するということを聞きます。これが行われた場合に、日常的に時間外を行っていた場合に、労働者は時間外賃金の請求は、全くできないのでしょうか。労働者が常に8時間以上働いていた場合に、労働者の泣き寝入りになるのでしょうか。前段1段目では、”『所定労働時間みなし』の適用が有効であるときは” と書きましたが、これは、所定労働時間みなしが有効な場合にあって、この前提があって、はじめて「みなし」が言えることなのです。これについては、別講で説明します。(別講に続く)⇒<⇒⇒⇒テレワーク制直後に残業代なくなる!!>

 
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする