元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

管理監督者に深夜業の割増賃金を支払わなければならない=平成21最高裁・ことぶき事件

2021-03-21 13:16:37 | 社会保険労務士
 最高裁判例は最近//従来の通達どおり//分かり安く労働基準法の周知をお願い

 労働基準法の「管理監督者」は具体的にどの範囲の者がなるのかは、ファーストフード店の店長などの裁判があって、大きな問題となりました。これが管理監督者であると認定された場合に、割増賃金は発生しないと言われていますが、この割増賃金には、「一般の」労働時間(+0.25)、休日に対する割増賃金(+0.35)であって、深夜業に対する割増賃金(+0.25)は対象になっていないのです。すなわち深夜業の割増は発生するのです。

 ここは、労働基準法を国の労働基準監督関係の通達等に基づく「教科書」によって勉強したものにとっては、当然のこととして受け取られていました。管理監督者の「割増賃金」*の適用について、これを除外する規定である「労働基準法41条」では、確かに「労働時間・休憩・休日」に関すると規定され、深夜業については書いてないことから、よく読めば、管理監督者の深夜業についての2割5分増しの割増賃金は、この除外適用の対象にはなっていないのです。以上、はじめから整理して説明すると、労働基準法上、一般の労働時間に関する規定と深夜業の規定(37条4項)は、区別して規定されております。その上で、労働基準法41条によって適用を除外される管理監督者は、一般的な労働時間と休憩・休日に限られることが明示されており、当該管理監督者には、深夜業の規定は適用され、結果、深夜に対する割増賃金は支払いの対象となるとされていたのです。(昭63.3.14基発150号)
 *労基法41条は管理監督者等の労働時間・休憩・休日の適用を一般的に除外するということであって、除外の対象は割増賃金のことだけではないが、ここでは、割増賃金に限って議論の対象とした。

 しかし、使用者の中には、「労働時間」の中に深夜業(の時間)も含まれ、割増賃金を支給しないでいいのではないかと考える人もいることも、もっともです。これが最高裁で争われ、最終的に、結論がでたのが、平成21年(最裁平成21.12.18、ことぶき事件)という最近のことです。この中で、深夜業と(一般の)労働時間の規定は、その趣旨・目的の違いがあると指摘。また、管理監督者と同じく労働基準法41条で除外された「農業従事者」の中の「年少者」の例を挙げて、改めて、同61条で農業等の年少者に深夜労働が禁止されないことから見ると、労基法41条の規定では「深夜業」に対する割増賃金の適用は除外されていない(=したがって割増は支払わなければならない)としました。

 この平成21年の最高裁によって、はじめて、今までもやもやしていたのが、結論が出たといっても言い過ぎではないと思います。この事件は、従業員が退職するときに、顧客カードを無断で持ち出したため、その美理容会社は不正行為として損害賠償を請求。これに対して、元従業員が深夜勤務手当を含む超過勤務に関する手当の支払いを求めて、反訴請求をした事件ですが、顧客カード持ち出しの問題がなければ争われなかったかもしれません。当事者にとっては、大変なことだったと思われますが、最高裁まで争われ、我々法律を解釈する者にとっては、はっきりした結論が出てよかったといえるものです。

 労働基準法はもともと昭和22年から連綿と続く法律です。昔からの条文がそのまま載っているのもあるようです。また、法律自体にはなく、時代に合ったものとするために、省令等で具体的に規制する部分もあります。この点で特に難解なのは労働基準法40条(労働時間及び休憩の特例)です。今まで労働時間・休憩について、るる原則論を述べて、特別なものについては、そうでないとしてひっくり返す規定です、省令で事細かに規定されていますので、そこを読まなければ何かはわかりません。ここで問題となった労基法41条の管理監督者についても、法令の中では定義はありませんので、疑義・問題が生じます。ここでは、管理監督者とされた場合に、深夜業の割増賃金がどうなるのかということを議論しましたが、もっとわかりやすく労働基準法全体の周知を図る必要があると言えます。
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