「まあ なんて美しいのかしら!
ビロードのような黒の地だけでも美しいのに、見て!このオレンジ色の眼紋!
素敵だわ!とってもお洒落でしょ、100年後のデザイナーもビックリするわ
それと、この尾角の可愛いこと、この上なくてよ
根元がオレンジ色で先端が白いでしょ
本当に気が利いているわ!
歩く時にはね、この尾角を前後に振るのよ
いち、に、いち、に、って、まるでおもちゃの行進みたいにね
この姿を見たら誰でもこの幼虫の「とりこ」になると思うの
だけど残念ね、あまりに食欲があり過ぎて
畑の作物をむしゃむしゃ食べてしまうのよ
だから邪魔者扱いされてしまうのよね、、、
でも成虫になると役に立つのよ
蝶のように花の蜜を吸うから、受粉のお手伝いができるの
それに遠くまで飛べるわ
それだけ多くの花を訪れることが出来るってことよ、、、」
まだまだ続く姫の虫物語、、侍女たちはもう何も言う気を失い、自らの虫臭い
生活を呪い「もう、どうでもいいや」と思うのであった。