私的美遊空間

美しく愛しいものたちへのつぶやき

志光る 木村茶道美術館

2014年11月27日 | 茶の湯便り

木村茶道美術館への入口
満天星つつじの垣根の紅葉が見事です

こちらは新潟県柏崎市にある国内でも珍しい茶道専門の美術館です。
大正15年に造られた池泉回遊式の日本庭園「松雲山荘」の中に建てられています。

この美術館の素晴らしさは美しい立地にあるだけでなく、逸品揃いの所蔵品とその
所蔵品を使用してのお茶一服にあります。
今日はその一服を楽しみにやって来ました。




この松雲山荘は、昭和46年に所有者より柏崎市に移譲され今日では市民に開放されています。
適度なアップダウンがあり、紅葉を眺めながらの散策はとてもいい気分です。



松葉と落ちたばかりの紅葉の葉が美しく散らばっていました。
人間の演出ではこんな風にはならないでしょうね。
葉の表と裏の割合、葉の寄り具合など、本当に絶妙です。



美術館前の景色です。
赤一色でなく、緑の中に赤と黄色が混在しているところがきれいです。
紅葉の頃にはライトアップされて、また違った風情が楽しめるとのことです。



木村茶道美術館の年間のご案内です。
雪国ですから、12月から3月末まで休館です。

4月から11月までは季節に合わせたお茶席が設けられます。
このお茶席では、国宝級のお茶碗を実際に手に取ってお茶を頂くことが出来ます。
今年は開館30周年として、10月には特別に楽家初代から三代のお茶碗が使われました。
こんなことは、全国唯一この美術館だけです。

また、二期に分けて所蔵品の展示があります。
今秋の茶碗展は圧巻です。
楽家初代長次郎から十五代当代までの作品が全部揃っています。
これも国内で唯一この美術館だけのことだそうです。





本日使用されたお道具です。
正客は、八代得入の黒楽茶碗
次客は、無地刷毛目塩笥(はけめしおげ)李朝初中期
三客は、人間国宝、加藤卓男作の志野茶碗

※塩笥は塩壺として使われていたもの。



待合の床
澤庵和尚のご詠歌で小堀遠州の孫、小堀宗中の書です。



本席の床
宗旦宛で大徳寺世譜185世玉舟の書です。
茶事に招かれたお礼の書状とのご説明を頂きました。
ほとんどの人は古文書は読めませんので、このような説明は有り難いですね。

席中では席主と気軽に会話をすることが出来ます。
分からないことをお尋ねしても大丈夫です。
立派なお茶碗でお茶を頂けるだけでなく、勉強にもなってとても得した気分です。



茶花は、鎌柄(かまつか)と椿(初嵐)
花入れは、竹一重切



お点前は江戸千家の皆さんのご奉仕です。
着物姿でのお点前は優雅で素敵ですね。



私は三客でしたので、人間国宝、加藤卓男作の志野茶碗で頂きました。
惜しげもなく出されるお茶碗の数々、お道具の数々、これこそが木村茶道美術館の真骨頂!
いよっ、太っ腹!
いよっ、大統領!と叫びたくなる気分です。



使われたお道具のご説明を頂きました。
向こうから順番に、(小山健藏作、黒中棗)(茶杓、即中斎)(得入作、黒楽茶碗)
(李朝、無地刷毛目塩笥茶碗)(菓子器、呉須赤絵魁鉢、17世紀)(菓子器、呉須赤絵印判手皿)

本来ならば、ガラス越しにしか見られない国宝級のお茶碗やお道具を、こんなに近くで見ることが出来て
しかも、手に取ってお茶を頂くことが出来るのは、日本中でこの木村茶道美術館しかないとのことでした。

それが出来るのは、設立者である故木村重義翁(寒香庵)の「私のコレクションを皆様にお使い頂き、
美の世界を楽しんで頂きたい」との思いを設立当初から実践しているためである、とパンフレットにありました。
そして、「使ってこそ道具であり、使わなければ道具が死んでしまう」とも。

収蔵品の大半は木村翁が一生をかけて収集したもので、他にも先祖伝来の山林、家屋敷と一億円相当の株券を
含め一切を柏崎市に対して寄付し、それらを元にこの美術館が生まれたとのことでした。
昭和59年11月3日にオープン。木村翁88歳の米寿のお祝いの開館だったそうです。(木村茶道美術館ホームページ参考)

木村翁の志は、美術館の志としてずっと光り輝いていくことでしょう。
今でも、その志に賛同した方々からの寄贈が絶えず成長し続けているとのことです。
天晴れ!木村茶道美術館
頑張れ!木村茶道美術館
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錦秋京都のお茶三昧

2014年11月21日 | 茶の湯便り

桐蔭席
11月20日(木)今日は紅葉の美しい京都でお茶三昧の一日を過ごします。
昨年の学校茶道の研修会で出会った仲間5人、久し振りの再会です。
本日のメインは、こちらの桐蔭席のお茶席に伺うことです。
お招き頂いた5人揃ってのこの日を、首を長くして待っていました。

桐蔭席は裏千家お家元のお茶室で、清水寺近くの東山に位置しています。
静かな佇まいに紅葉が美しく映えていました。
どんなお席でしょうか、、襟を正して入らせて頂きます。





門をくぐり玄関、受付、待合へと進みます。



ご案内があると露地(茶室の庭)を進んで茶室に向かいます。



桐蔭席

四畳半の小さなお茶室です。
躙り口(にじりぐち)という小さな入口から、身をかがめて入ります。
昔、武士たちはここで刀を取り丸腰で入りました。

ほのかな明かりの小さな空間で「壺中日月長し」の心境を楽しみながら薄茶を一服頂きました。
この雰囲気、例えてみるならば、「大人の秘密基地」って感じでしょうか、、

そして別室で点心(茶の湯での簡素な昼食)を頂きます。
お料理は、明治35年創業の老舗「辻留」です。
どのお料理も美味しく頂きましたが、特に身に染みて美味しかったのは「熱々の椀物」と「烝したてのおこわ」でした。
寒い時期に「熱いものは熱く」「温かいものは温かく」というのが一番のご馳走です。
言ってしまえば簡単なことですが、お客様それぞれのペースに合わせてお出しするのは、中々大変なことですからね。
お陰様で身も心も充分温まりました。



楽美術館

秋特別展として「楽家五代宗入と尾形乾山」を開催中の楽美術館へ移動。
宗入生誕350年の記念の展示会です。
宗入と乾山は従兄弟の関係ですが、作風は対照的で「華麗な乾山」に対して宗入は「侘びた風情」です。
そんな二人の作品が集められて展示されています。
写真では分からない迫力や美しさを堪能しました。



楽美術館外観



楽美術館のしつらい
見事な竹の花入れ



茶道資料館

開館35周年記念秋季特別展 「茶の湯の名碗」開催中の茶道資料館へ移動。
長次郎作の「赤楽」銘「太郎坊」、織部黒の銘「悪太郎」、「仁清色絵鱗波文茶碗」、志野の銘「広沢」等々
「名碗」と銘打つだけあって、重要文化財のお茶碗が並んでいて見応えがありました。



着物パスポート

さすが古都京都、着物を着ているだけで色々な特典があります。
和装小物のお店は5%~10%の割引、美術館は入場料割引、お食事処では5%~10%の割引やウエルカムドリンク(ワインやビールなど)、
寺院、神社も拝観料割引やオリジナルグッズの進呈など、嬉しいことが一杯です。

さらに、ホテルでも二名以上でランチかディナーを予約すると、その中の一人でも着物を着ていると一人分が無料になるサービスも
あります。私たち5名で行くとすれば、4人分の料金で済むわけです。これは使わないと損ですね。

この着物パスポートは、インターネットで調べて頂くと、入手先等がわかります。
タクシーも割引がありとても便利ですので使ってみて下さいね。

錦秋の京都、お茶三昧の一日、良い思い出ができました。
京都駅で解散 「また逢う日までお元気で!」

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高校茶道部の文化祭

2014年11月15日 | 茶の湯便り

今日の茶花
野菊と実葛(さねかずら)
花入れは竹一重切

※実葛は別名(美男葛)




11月14日(金)は茶道部最大のイベント、文化祭でのお茶会の日です。
時間が十分に取れない中で一生懸命にお稽古を重ねて来ました。
この日を「今か、今か!」と待ち望んだ者、「来てしまった!」と
気後れする者、それぞれの胸に去来するものは違っても、とにかく
今日一日一丸となって頑張るしかありません。

床にかかった「直心是道場」の教えを胸に納めて「さあ!始めるよ!」
「はいっ!」一席目のお客様をお迎えする直前の緊張の一瞬です。
ここまで来れば、お点前やご挨拶に自信がなくても、もうやるしかありません。
「先生っ!あーどうしよう、、」
「はいっ!行ってらっしゃい!」

教室での姿しか知らない先生方は、おしとやかに変貌した教え子達の姿を見て
感心して下さったようです。
そうです!やれば出来るんです!
ここがお茶を教えていて楽しいところです。

お点前やご挨拶のない、お運びだけの下級生達が「緊張するぅ!」と言うのを
聞いて、あんなにのんびり屋さんでも緊張するのかと意外な側面に触れるのも
こんな時ならではです。
「人間は緊張感を持たないと成長出来ないんよ。いつでもダラダラしてたらアカンのよ!」
などと自分にも言い聞かせながら激励。

大勢のお客様の対応で「忙しいわぁ!」と言いながらもよく頑張りました。
無事にやり遂げた皆の表情は晴々としていました。
「ご苦労様でした。無事に終わって良かったね」
記念写真を撮って終了しました。

お茶室の入り口に掲げるのは「風葉霜を経て紅なり」の短冊。
「先生、これってなんて書いてあるんですか?」
「楓の葉っぱはね、秋が深まって霜が降りるくらい寒くならないと赤くならないんよ、
だから、私たちもね、いろいろ苦労してそれに耐えることで磨きがかかっていくってことだよ」
「へえーそうなんですか、、、」
「だから頑張って生きて行ってね!」
「はいっ!」

文化祭のお茶席を経験して、いろいろと感じることも多かったことでしょう。
お稽古を続けたこと、大勢のお客様のおもてなしをしたこと、これらの経験が彼女達の
良い思い出となり、これからの人生で役立つよう願ってやみません。
そして、師弟共々良い文化祭の一日を過ごせたことに感謝!感謝!です。
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雨の日も気分上々♪

2014年11月11日 | 思うこと

いやあー気分爽快である!
雨の日にはこのCDを聞くに限る。
2012年度のウインフィルのニューイヤーコンサートのCDだ。
ただウインフィルというだけでなく「マリス・ヤンソンス指揮」
というのが大事なのである。




9日の日曜日は雨だった。
普通ならお気に入りのカンツォーネを聞きながらの運転だが、
この日は派手にヤンソンスのニューイヤーコンサートで指揮
したポルカ「雷鳴と電光」をガンガンかけて行こうと思った。

雨降りなら、どんなにボリュームを上げても大丈夫!
ドドン、ドドンドーン、ドドドドーン、ジャーン!
それはそれは賑やかに、思いっきり響かせて走った。
案の定、血液が全身をサーっと巡り、古くなった細胞が
真っ新になるような爽快感だ。

「雷鳴と電光」に限らず、ヤンソンスのポルカは元気がいい。
打楽器を気前よく打ち鳴らし、トランペットは高らかに
吹き鳴らしてくれるのである。たいていの場合小さくチンチン
と聞こえるトライアングルさえも「ここにいますよ!」とばかり
嬉しそうにチンチン言わせているのである。
シンバルだってジャーンと負けていない。

ヤンソンスの指揮は楽しそうだ。
本当に音を楽しんでいる様子が伝わってくる。
だから聞いていて文句なしに楽しいのである。
雨降りもなんのその、気分上々である♪

写真はソニーのCDジャケットより
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トウモロコシの皮の修道女さま

2014年11月09日 | 美術工芸

この修道女の人形はトウモロコシの皮で作られている。
長崎の大浦天主堂近くのお店で出会った。
小首をかしげて花束を持った姿がとても素敵だった。

当時は、持っていたドライフラワーにピンクやオレンジ
などの可愛い彩色が施されていたが、今はその色が
あせて無くなってしまった。37年の時を過ごしたからね。


お花を替えてあげようと思ったけれど、前からの花束が
しっかりと腕の中にボンドで付けられていて、取ることが
できない。無理やりはがすと腕のトウモロコシの皮が切れて
しまいそうだし、仕方なくその上から持たせることにした。

小さなドライフラワーが作れないので、庭にある「千日小坊」
を持たせてみた。黒っぽい赤が、古くなったトウモロコシの
皮の色にしっくりと馴染んで、これはこれで素敵になったかな、、

優しく愛らしい修道女さま
これからもずっと一緒にいて下さいね。

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ミニミニギャラリー*リスとドングリ*

2014年11月06日 | 「いと をかし」なものたち

古い絵だけれど、急に見たくなって出してみた。
リスが小さな手でドングリを抱えている絵である。
冬支度をしているのだろう、一生懸命な姿が可愛い。

外国人画家が描いた水彩画の絵をプリントした
もので、サインが右下にあるが私には読めない。
画面で読める人がいたら、教えて頂きたいと思う。

長年洗面所の壁にかけていたので、その湿気でシミ
が出てしまった。こういう紙なのかと思って見れば
そう見えなくもないし、元々ベージュの紙がさらに
薄茶色に染まってかえっていい味わいになっている。
長い時間を共に過ごし、今では手に入れた当時の
自分にも出会える貴重なものとなっている。


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帯揚げで雰囲気を変える

2014年11月05日 | 着物の楽しみ
同じ着物、帯、帯締めに帯揚げだけを変えて、違う用途に着こなします。

着物は金糸縫い取りの小紋ですが、地紋が牡丹唐草と格があるので一つ紋
の色無地程度まで、帯や小物の取り合わせで格を上げることができます。
帯は袋帯で、亀甲文に花文が織り込まれています。伝統的な文様を現代風に
アレンジしたもので、取り合わせによって純和風にも現代風にも使えます。


こちらは、帯揚げの色を白に近いベージュにして、帯の地色に合わせました。
帯揚げを白に近い色にすることによって、着物を改まった雰囲気に変えます。
この組み合わせで、たいていの茶事、茶会、お祝いの席にも出席しています。



こちらは、帯揚げの色を花の色に合わせて、はっきりとした印象に変えてみました。
帯揚げに色が付くと、くだけた雰囲気に変わります。濃い色になればさらにカジュアル
な感じになります。この組み合わせは軽いお茶席やパーティーなどで着用しています。
今頃は特に、こっくりとした深みのある色が紅葉の頃の景色と気分に添っていますね。

先日のNHKの番組で染色家の志村ふくみさんが言っておられましたが「着物は自分の
心象風景」と、、、本当にそう感じます。着こなしもその時の自分の気分を表していて、
見ている人にもそれが伝わるものだと思います。そう思うと、帯締め一本、帯揚げ一枚
おろそかに出来ませんね。そこが難しいところですが、面白いところでもありますね。

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ひとえを菊の帯で

2014年11月01日 | 着物の楽しみ

もう11月ですね。
朝晩は冷えますがまだまだ日中は暑い時が多いです。
低体温で、しかも外界の気温に自分の体温が左右される変温動物のような私は、
少し暑いだけでも、その暑さが人よりもこたえてしまいます。
そんな訳でこの10月は、とうとう単衣(ひとえ)で過ごしてしまいました。
と言っても、26日のお茶会には頑張って袷(あわせ)に袋帯で行きましたので、ご安心を。
正式な場ではドレスコードはきちんと守ります。

※袷(あわせ)は裏地のついた着物のことです。

ー手挽き玉繭紬に軽い名古屋帯ー

お茶の稽古の時の一揃えです。
着物は、玉繭から手挽きされた単衣の紬です。
鱗と市松模様の織りが施され、その上に緑の濃淡で引き染めをしています。
所々に独特の節があるのが特徴です。

※玉繭(二匹の蚕が一つの繭をつくること)
手挽き(手で繭から糸を引き出すこと)
※帯揚げはろうけつ染めです。

着物は単衣ですが、帯は菊の模様で秋の深まりを表しました。
和装は季節感が大事ですからね。

さあ、私も明日のお稽古からは袷にしましょうか、、
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