コタツ評論

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スタンドアップ

2006-06-07 13:14:58 | レンタルDVD映画
『スタンドアップ』(原題は「North Country」)。いま最高のシャーリーズ・セロンが、集団セクハラを告発するシングルマザーの鉱山労働者ジョージー・エイムズを好演した話題作。実話に基づくそうで、舞台は1975年のミネソタの鉱山会社。猛威をふるったセクハラ規定に不満顔な日本男性も、こんな最低最悪のセクハラが対象だったのならしかたがなかったと納得するだろう。職場はもちろん地域社会からも、「アバズレ女」といわれて孤立するジョージーを暖かく見守る組合代表グローリーに、『ファーゴ』で臨月の警察官を好演したフランシス・マクドーマンド、ジョージーの母親役にシシー・スペイセク(最初のうちは誰かわからないくらい地味)、ジョージーの訴訟をともに闘う弁護士がウディ・ハレルソン、グローリーをいたわる夫にショーン・ビーン(心に葛藤を抱える繊細な悪役を演ることが多い)、無理解ながらジョージーを愛する父にリチャード・ジェンキンズ(アメリカ映画を見慣れた人なら、顔を見れば思い出す名脇役!)など、「プロ中のプロ」の俳優陣がすばらしい。夫なしで働く子持ち女に、男たちがどのような予断と偏見を持つか、世間がそうした「俗情との結託」を容易に事実や真実として受容するかは、ミネソタとはいわず、いま秋田県能代町で起きている「報道」に接してもよくわかる。酷いセクハラの背景には、鉱山という男の職場に「侵略」してきた「ニューカマー」である女への反感があるが、本質的な問題の根はやはり女性差別と描かれている。ジョージーはいう。「私たちもみなと同じように働いて、子どもを養い、土曜日にはバーで一杯やりたい」。男たち(女たちもだが)はいう。「身持ちの悪い嘘つき女の戯言」。

追記
「プロ中のプロ」とは、村上選手の逮捕直前の記者会見の弁から。プロが抽んでた別のプロを指し示す言葉だから、自分でいう常識のなさを皮肉ったわけだが、演技のアマである私がここで使うのもおかしい。村上選手は「日本株式会社」において、民間企業トップより上級幹部とされる官僚だったから、「プロ中のプロ」を階層的な評価と誤解していたのかもしれない。あるいは単純に、近年俺ほど儲けたやつがいるか?という自慢かもしれないが、いずれにしろ、間違った用いかたであることに変わりはない。
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