コタツ評論

あなたが観ない映画 あなたが読まない本 あなたが聴かない音楽 あなたの知らないダイアローグ

上々じゃないか

2006-06-18 00:20:41 | ノンジャンル
クロアチア戦。よくやったよ。相変わらず、誰か入れてくれないかとペナルティエリアやゴール前でおたついていたように見えたが。サッカーではないが、実は俺もそんな前衛だった。身につまされる。ペナルティキックにつながるファールを与えた宮本。顔で得してきたが、もういいかげんに代えてほしいな。面倒見のよい「先輩」に遠慮している空気が伝わってくる。世界クラスでないのは誰の目にも明らかだから、実力主義でいってほしい。決定力のないFWがいつも問題にされてきたが、実は世界クラスと闘うにはDFの弱体の方が問題かもしれない。それと率先して声を上げ、元気よく走り回るムードメーカーがいない。「気持ちを入れる」というのも具体的な裏づけが必要なんだ。ブラジル戦はもう論評外だから、にわか評論家もこれで用済みだな。
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ナイロビの蜂 続き

2006-06-17 12:21:30 | ブックオフ本
『ナイロビの蜂』(原題 「CONSTANT GARDENER」-律儀な園芸家)はお得である。人物の造型や配置、その情動、そしてストーリーの構造がきわめて重層的だから、読後に思いつくことや考え直すことが次々に出てくる。1冊で3冊分くらいの読後感がある。この部分はケチつけられるなと心中にメモして置いたところが読み終わればどうでもよくなる。しばらくして考えてみるとあれはちゃんとバランスが取れているなと舌を巻く。もっと時間が経ってみるといやル・カレはきちんと自分の考えが読者に伝わるように、あえてそこは書かないようにしたとも思える。いや、ここで自分の考えなど代弁させてはいない、何かをシンボライズしているのではないか、といった風に。浅薄に思える筆致の中にこそ、自らと読者への浅薄ではない批評性と含意が含まれている。たとえば、NGOやそれを担う人たち、そのネットワークが次々と紹介された後のロービアーという奇怪な人物の登場は圧巻だった。読んだ人たちと、「あれはさ、どういうことなの?」「えっ、そういうことなの?」「違うよ、それはね」「そうじゃないって、あれはさ」と話したくなる小説だ。謀略と恋愛をどちらかをツマにせず両立させる強腕をそれと意識させないのは、たぶんテッサが幻影であり、終始人々の投影をまとっているからだろう。にもかかわらず、力強く手を引くようにテッサは、「律儀な園芸家」ジャスティンを危地に導いていく。人々の憧憬を集めるアイドル(偶像)であり、スキャンダルとゴシップに彩られながら、けっして人形ではなく作業服も着た、一人の女性を私たちは知っている。ダイアナ妃だ。ジム・トンプソンの最大級の賛辞を少しアレンジしてル・カレに贈ろう。「この9年間、筆者は怠け者ではなかった」。
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ブログ開設

2006-06-17 12:09:45 | ノンジャンル
よそ様の掲示板に書いてきたのをよそ様がまとめてブログにしてくれた。掲示板の流れに反応して書いてきた派生物件なので、これだけ取り出すと変なところ多数である。あんまりかなという箇所は少しずつ書き直していかなくては。




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ナイロビの蜂(集英社文庫)

2006-06-16 20:56:13 | ブックオフ本

ル・カレの最新作『律儀な園芸家(原題)』読了。リーダビリティと翻訳者が解説で書いているとおり、晦渋に慣れていたル・カレファンとしては、とまどうほど読みやすい。ほんと、途中で心配になった。こんなにテンポよく「旅」が進み、命を賭した「友情」や「化物」じみた悪役が登場するのでは、三文謀略小説と変わりないじゃないか、それにNGOの資料でも借りてきたのか、大丈夫か彼と。J・エルロイみたいに新聞記事や調査報告書をそのまま貼り付ける手法もお手軽に感じた。しかし、下巻において、すべて杞憂であったと知る。読む前と後では、アフリカを見る眼が確実に変わる。少しだけあらすじに触れるのをご容赦願いたい。


嫌だ、迷惑だという人は下を読まないでね。


いい気なもんだぜ、という結末は迎えない。ただし、救いはある。しかし、癒しはない。彼のように70歳を越えないと男女の愛は描けないのかもしれない。俺はまだまだ現役の哀れなウッドロウであるな。


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ポップ1280(ジム・トンプスン 扶桑社ミステリー文庫)

2006-06-11 00:04:04 | ブックオフ本
以前に紹介した『俺の中の殺し屋』と同工異曲。だが、これも傑作。ぼんくらに見えて実は切れ者。弱っちそうでいざとなればタフ。気弱そうでほんとは冷酷。犯罪常習者でありながら、同時にモラリスト。職業保安官にしてその正体は救世主! 救世主ニック・コーリーは無実のサムに問う、「はっきり言えよ。言われていることが事実でないなら、どうして事実だという話が広まっているんだ?」。シェークスピアばりの凄い詭弁術。もしかしたら、シェークスピアに下敷きがあるのか? ジム・トンプスンには、長生きして、繰り返しこの同じ物語を書いてほしかった。病みつきになる。ポップとは音楽や風俗に何の関係もない。ポピュラー=人口のことだ。
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