コタツ評論

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批判はさておき

2019-05-10 00:08:00 | 政治
先の地方選で「躍進」した「NHKから国民を守る党」の内紛から、驚愕の事実が出てきました。

佐々木千夏・杉並区議が「日本平和神軍」って本当? 電話で直接尋ねたら……
https://hbol.jp/191726

いわゆるネトウヨとはネット内の一部に生息する「情報弱者」の一類型と思われがちです。

が、先の香山リカ攻撃の「ネトウヨ」が世田谷年金事務所の所長だったり、実社会に深く広く根を張った、日本の「オルタナ・ライト」が背景にあることを知らしめる記事です。

マスコミ記者が政権への忖度記事を垂れ流している一方、こういう独自取材をものしている若手のフリー記者がいます。当事者に電話取材してみたら、「黒幕」まで出てきてあっさり答えてくれたわけです。

官邸と大手メディア記者たちとの質疑応答の暗黒面に比べ、なんという率直な対応でしょう。佐々木区議や中杉氏に少し好感すら抱いたほどです。

研究や啓蒙などを含めた広義の「表現活動」については、いわゆるリベラルはネトウヨなど反動勢力を圧倒しているように見えます。

ただし、大坂W選を勝利した大阪維新の会や多くの新宗教組織を足腰とする日本会議、この日本平和神軍まで、日々の実践活動や地道な組織づくりでは、少なからず凌駕されているように思えます。

2016年に解散した「SEALDs」(シールズ)を振り返れば、国会前デモを主導したり実践活動や組織づくりに目立てば、自称リベラルや中間派の親切ごかしの妨害や未熟と冷笑するなど、SNSを通じてさまざまな「表現活動」に晒されたのは記憶に新しいところです。

立ち上がろうとする若者の裾を引っ張ったり、肩を押さえつけようとする年長者ばかりでした。その程度のことで、挫けたり止めるくらいなら、それは「本物」ではなかったからに過ぎないという「冷徹な批評」も嬉し気にトッピングされたものです。

もちろん、「SEALDs」(シールズ)は敗北して消えたわけではなく、いわばセール期間を過ぎたので解散したのでしょうが、「素朴な好奇心」から、解散の「ほんとうの事情」を穿とうとしたり、彼らのネトウヨ顔負けの執拗な「表現活動」は続きました。

「冷徹な批評」や「素朴な好奇心」などが、ただの妬心や劣等感の裏返しの承認欲求であることは容易に推測できるのですが、あきらかにマスコミの報道姿勢に倣った「表現」であることにも気づかされます。

つまり、ネトウヨ・自称リベラルのいずれもが、「マスコミの子どもたち」であるわけです。ひきかえ、ネットメディアの一介のフリーライターが、「ダメ元」で電話取材をかけ、それに率直に答えた姿勢はどうでしょう。

佐々木千夏区議が中杉氏に電話を渡すとき、「ジャーナリストが」と伝えたことには興味深いものがあります。ジャーナリストは中杉氏の話を「わからない」と云い、そのまま書きました。

それでも電話の向こうとこちら、考えに大きな隔たりはあっても、人は人と交わろうとする。そんな世間の回路が、まだ脈々と息づいていることがうかがえる好記事でした。

(止め)