コタツ評論

あなたが観ない映画 あなたが読まない本 あなたが聴かない音楽 あなたの知らないダイアローグ

おととい来やがれ

2017-06-07 22:19:00 | ノンジャンル
今日、日暮里から小岩へ行くために京成線に乗ると、ほどなく車内放送がはじまった。

「今月は痴漢撲滅月間です。ご協力をお願い致します。」
「痴漢は犯罪です。車内で異変を感じたら、声を上げてください」
「線路内への立ち入りは絶対やめてください。大変、危険であるだけでなく、ほかのお客様へのご迷惑となります」

鉄道各社が痴漢撲滅を呼びかけ えん罪防ぐ保険も
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170605/k10011007061000.html

京成線だけでなく、JR・私鉄各線が一斉に、痴漢撲滅放送を呼びかけているのでしょう。最近は、痴漢の疑いをかけられた人が線路に降りて逃げる途中で電車にはねられて死ぬという痛ましい事件も起きています。

「電車痴漢に注意」とイギリス外務省からも旅行者に警告がだされていますから、ほとんど国辱ものです。

英外務省の日本旅行案内
safety and security
https://www.gov.uk/foreign-travel-advice/japan/safety-and-security

Personal attacks, including sexual assault and rape, are rare, but do happen. Japanese law places a high burden of proof on the victim to demonstrate that the sexual relations were not consensual and committed through assault, intimidation or force. Reports of inappropriate touching or ‘chikan’ of female passengers on commuter trains are fairly common. The police advise that you shout at the perpetrator to attract attention and ask a fellow passenger to call the train staff.

性的暴力やレイプを含む人身傷害はまれですが、起こります。日本の法律は、性的関係が暴行、脅迫、または強制によって合意していないことを実証するために被害者に大きな負担をかけます。通勤列車の女性乗客の不適切な接触または「ちかん」の報告はかなり一般的です。警察は、注意を喚起し、ほかの乗客に電車の職員を呼ぶよう頼むために、加害者に対して叫ぶように勧めています。(Google翻訳)

しかし、「痴漢撲滅月間」の車内放送の被害者を励ますような明るく元気な声を聴きながら、(ふざけるな。お前らから説教がましく呼びかけられるのは筋違いだろう)とひとりごち、憮然としました。

痴漢被害を激減させ、痴漢冤罪などほとんどなくす方策があるはずです。満員電車をなくせばいい、それだけのことです。一人置きに立つ、半歩ほどのスペースが乗客にあれば、痴漢行為はほとんど不可能になります。

ラッシュアワーを放置しておいて、つまり痴漢犯罪に温床を提供しておいて、あるいは保険が売り出されるほど、冤罪の危険性(リスク)を増大させながら、乗客に注意や告発を呼びかけるという自己責任を求めているのです。

「山手線などは3分間隔で運行されているのに、これ以上の増発は不可能だろう」とどうして鉄道会社の立場に立って、そんな「忖度」をするのでしょう。乗客に安全と快適を保証するのは彼らの責務なのです。

安全とは事故の予防などのことだけではなく、たとえば痴漢に遭ったり痴漢と間違われる心配などなく、電車に乗り降りできることです。

運行本数や車両を増やす、乗車制限をするなど、ラッシュアワーを短縮化する方策はいくらもあるはずなのに、彼らの利益のために、乗客の安全と快適が犠牲にされているといえます。

1964年の東京オリンピックの頃から満員電車が常態化されていますから、かれこれ60年近くラッシュアワーは改善されていないことになります。

痴漢撲滅月間などを大々的に広報宣伝する前に、「満員電車の解消を」、そういう声を聞かないのは不思議です。