コタツ評論

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魔女の1ダース

2008-12-12 00:12:07 | ブックオフ本
亀山郁夫と佐藤優が米原万里の『オリガ・モリソヴナの反語法』を絶賛しているので、ヤの棚を探してみたら、『魔女の1ダース-正義と常識に冷や水を浴びせる13章』(新潮文庫)が見つかった。

日本共産党幹部を父に持ち、プラハに学び、ロシア語通訳として活躍した後、「エッセイスト」となりTVのニュースショーのコメンテーターをつとめ、最近亡くなったというのは知っていたが、この人の文章を読んだことはなかった。

華やかな笑顔の人だったが、コメンテーターとしては、佐藤優も指摘していたが「代々木的」なコメントが多く、いわゆる「女性エッセイスト」なんだろうと思っていたからだ。この本も通訳として豊富な海外経験を活かした軽い見聞記であり、とりたてて瞠目するような内容ではない。

と思ったのは早計で、あちらこちらに話が飛ぶが、脱線ではなく構築のためなので散漫にはならず、ぐいぐい読ませる。体力のある文章だなと感心した。息抜きをしてみせるが、息継ぎはしていない。思考の持続力が太く途切れないからだ。<第一章 文化の差異は価値を生む>の「バルナのイラン人」には大笑い。

文章で笑わせるには緻密な計算が要る。論理は計算に基づく。計算できる言葉を選び分ける論理が内になければならない。丸谷才一は『文章読本』で、外国語を真剣に学ばなければ、論理的な日本語を書くことはできない、といっているが、なるほどこういうことかと思った。

まだ、読みはじめたばかりなので、先が楽しみだ。やはりソ連の話が多いので、武田百合子の『犬が見たロシア』と読み比べてみようと、書棚を探している。やはり、『オリガ・モリソヴナの反語法』が読みたくなった。

本日(12月18日)読了。才能教養豊か。若くして亡くなったのは本当に惜しい知性。

(敬称略)




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