さて、昨日は都内某所で藤井道人監督、横浜流星主演『ヴィレッジ』(23)を試写で観て来ました。
美しく幻想的な山間にある霞門村。伝統芸能である能が息衝くこの村を見下ろす山上には美しい自然を引き裂くように巨大なゴミ処理工場が聳える。霞村で生まれ育った青年片山優(横浜流星)は、そのゴミ処理工場で働きながら、母の借金返済に追われ、死んだ父が起こした不祥事で村の人間から冷たい視線を浴びながら何の希望もない暗い毎日を生きていた。
そんな絶望的な日々を送る優の前に幼馴染みの女性美咲(黒木華)が東京から帰って来る。優のゴミ処理工場に広報として入社した美咲は一度は好きな能を捨てた優を優しく励まし、2人の能の師で今は村を出て警察に勤務する光吉(中村獅童)と再会する。美咲の優しさと励ましで優は少しずつ自信と笑顔を取り戻していく。しかしそんな優と美咲に村長修作(古田新太)の粗暴な息子透(一ノ瀬ワタル)は憎悪と嫉妬の眼差しを注ぐのだった。
そして優は美咲の推薦でゴミ処理施設のツアーガイドを任される。戸惑いながらもツアーガイドをこなす優は今まで絶望の中でしか生きれなかった自分がやっと希望を掴める!と信じかけたその時、優と美咲の2人に余りにも悲しく、壮絶な負の連鎖が襲いかかるのだった・・!
映画の前半の横浜流星扮する優は自分を取り巻く環境に対する怒りと悲しみと絶望を全身で表しながら生きている。その優が美咲の深い優しさに触れた時、その溜まりに溜まった悲しみを美咲の胸に飛び込み絶叫するかのように号泣し爆発させる場面。僕はこのシーンを観た時「嗚呼、この横浜流星という俳優は自分の役柄にここまで打ち込み、のめり込んでいるのか!」と感嘆。またそこから美咲の励ましでツアーガイドとして充実の日々を生きる歓びを感じながら笑顔を取り戻していく優、その以前とは別人のように爽やかな優を演じる横浜流星の卓越した表現力にも唸らされました。
もしかしたらこの『ヴィレッジ』で片山優が直面するその圧倒的なまでに重く悲しい宿命は、これから劇場でその流星くんを観るファンには耐えられないかも知れない。それでもこの自分の父親の遺した宿命に真正面から向き合う事で全ての決着をつけようと懸命に生きた優の姿は、僕にはピュアで脆くて、それでいて力強く逞しい、まるで若い頃の松田優作の雄姿を思い起こさせたのもまた事実でした。
この『ヴィレッジ』、細かく丁寧に練り上げられた脚本は素晴らしく、2時間の上映時間で1度もダレる事がなく、最後まで一気に見せます。横浜流星くんのファンの方も、またこれから流星くんを知る方も是非お薦めしたい1本です。この『ヴィレッジ』は4月21日からロードショー公開との事ですので是非!