gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

「馬」のつく漢方薬

2013-08-28 00:15:00 | ブログ

小生の夏ばてはカリカリと歯ごたえのある高田梅と滋養豊富な馬刺しで乗り切りました。

同郷の旧友のNagamine和栄氏が弟さんに「すっぱく塩辛い高田のカリカリ梅と会津名産の馬刺しを康仁に送ってやってくれ」と親切にも連絡してくれたおかげで、カリカリ梅で食欲は回復し、馬刺しで消耗感も消失したようです。あらためてご兄弟に感謝する次第です。

会津の馬刺しはルイベ状ではなく、加えて、脂肪のサシが入っておらず、綺麗な赤身で、大変美味しいものです。くせがなく、生姜醤油も会うし、ニンニク辛し味噌もまた相性がよろしいのです。

ところで、

「日本人は馬を生で食べるのか」と行きつけの料理屋で、福建省からの中国人に驚かれたのですが、「鯨も生で食べるんだよ」と言うと絶句していました。

以前、中国からの教授連に神戸牛で接待したことがありますが、どなたも、神戸牛刺しには怪訝そうな顔つきで手を出しませんでした。生肉は食べない習慣なのでしょうね。あるいは、店の裏庭で殺して解体してきたばかりと誤解されたかもしれません。

さて本日の「漢方市民講座」は「馬」がつく漢方薬です。さらりとお話します。

馬勃(ばぼつ マーボ)

/平 帰経肺 効能:清肺利咽 涼血収斂止血

ホコリタケ科Lycoperdaceaeのキノコです。キノコの本体を指で押すと上部の穴からホコリが吹きでます。胞子がホコリのように見えるのです。湯をかけて溶かして飲みます、一回量は5個程度。野菜として食用としても(昔は)安全でした。咽にいいのです。本品は清肺熱、利咽喉の作用があります。咽頭痛や咳嗽発熱などに使用しますが、近年では西洋薬が発達しているのでわざわざ馬勃を使用することは無いようです。

馬歯莧(ばしけん マーチシァン)

/寒 帰経 心大腸 効能:清熱解毒 涼血止血

スベリヒユ科Portulacaceaeのスベリヒユの全草

湿熱性の下痢に有効であるとされていますが、抗生物質が有る以上、わざわざ馬歯莧をすりつぶしてどろどろの液体を患者に飲ませた経験はありません。加えて黄連丸単独でも十分に効果があるからです。さてねばねばした液体をアトピー病変に塗ると痒みや赤みが消えて効果が良いと「ステロイドを目の敵」にしている日本の漢方医(薬剤師)もいますが、私自身は、使ってみて、うまくいきませんでした。ステロイドの使い方と濃度変化、痒み止め、保湿剤との配合比率を研究したほうが、馬歯莧に頼るよりも「まし」なようです。

馬銭子(ばせんし マーチェンズ)

/寒 大毒 過量に服用すると振顫、痙攣、意識障害など中毒症状を引き起こします。妊婦には禁忌です。手を出さないほうがいい漢方薬です。

フジウツギ科 LoganiaceaeのホミカStrychnos nux-vomica Lの成熟種子を生薬としますが、砂と一緒に炒めるか油で揚げる炮制が必要です。風寒湿の痺症(関節痛)に他薬と一緒に用います。外用の方が危険性という意味で低いのです。

馬鞭草(ばべんそう マービンツァオ)

/微寒 帰経 肝脾 効能:活血通経、利水消腫、截瘧(さいぎゃく)、清熱解毒
活血化瘀薬に分類されます。

クマツヅラ科のクマツヅラ Verbena officinalis L.の全草を生薬とします。

活血通経とは瘀血を除き生理痛や無月経などを改善することを指します。外傷性の打撲血腫などにも使用されます。活血利水消腫作用は腎炎によく使用されます。
以前には瘧疾(マラリアなど)に、単味の煎剤を用いました。日本では流通がありません。

馬兜鈴(ばとうれい マートゥリン)

止咳平喘薬に分類されますが、毒性報告が相次ぎ、現在では使用しません。毒性成分はアリストロキア酸馬兜鈴酸)で、馬兜鈴に限らず以下のような報告があります。

日本では、1996年から97年に関西で関木通(カンモクツウ)とよばれる中国製生薬を配合した健康食品を摂取した人に腎炎の発生が報告され、該当の健康食品からアリストロキア酸が検出されました。その他にも以下のような報告があります。

報告:19歳女性、約20種の自然薬草よりなる「中国製漢方薬」を個人輸入、約3年間アトピー性皮膚炎に使用、アリストロキア腎症を起こした。商品には関木通が添加されており、アリストロキア酸が検出された。

報告:58歳女性、クレスト症候群(皮膚硬化症の一種)と診断され、40歳時よりレイノー現象が出現、43歳より57歳まで中国ハーブを飲用。ハーブを分析したところアリストロキア酸が検出された。

報告:48歳男性、尿酸値を下げる目的で。薬局で「生薬製剤」を購入、内服開始6ヵ月後より多飲多尿、全身の脱力感が出現、9ヵ月後に筋痙攣が出現。尿蛋白、尿糖、著明な貧血、高度の腎機能障害、高カリウム血症、代謝性アシドーシスがみられ、腎不全による尿毒症症状により血液透析に導入され、慢性間質性腎炎と診断された。服用薬にアリストロキア酸が高濃度に含有されており、アリストロキア酸腎症と診断された。


報告:33歳女性、5ヵ月前から不妊症、近医の指示で中国ハーブから抽出したアリストロキア酸を含む「漢方薬」を服用、1ヵ月前から食欲不振、微熱、頭重が起り、著しい貧血、代謝性アシドーシス、低リン血症、アミノ酸尿、糖尿があり、入院した。腎不全が進行し、18ヵ月後血液透析に導入された。

日本の薬局方で認められている生薬にはアリストロキア酸は含まれていませんので安心してください。ただし、生薬の場合、名称が似たようなものが多く、使用部位や植物が国の各地によって異なることがありますので、海外から「健康食品」や「漢方薬」を個人輸入する場合は注意してください。

購買者の健康に配慮するより銭儲けに走るのが販売者の常です。日本人の常識、性善説は通用しません。動物の甲状腺末を混入させて痩せ薬と称した中国漢方薬が死者まで出す騒ぎになったことは直近(約1012年前)の関西の事件でした。

海馬(かいば ハイマー)

タツノオトシゴDreid hippocampus coronatus(sea horse)(after removal of visceral organs)、性味 咸甘温 帰経 腎肝 功能:補腎壮陽、活血散結消腫止痛

現在では絶滅危惧種で取り扱いが禁止されています。勿論以前は高価でしたが、時々使用しました。腎陽虚(インポテンツ)、不孕(不妊症)に効きます。補腎陽の強壮薬(補肝腎 補精血)として有名です。日本人の冷え性とストレスや過労での不眠にも海馬が有効の報告があります。腎虚更年期障害には補腎の海馬、鹿茸が有効であると中医は言います。

老化にともなう視力障害には、沙苑子、海馬(タツノオトシゴ)、鹿茸、冬虫夏草、黒蟻、黄精が効果的とも言われています。

桑螵蛸 鹿茸 海馬の組み合わせが、腎精不足タイプの不妊症に有効であるとの報告もあります。

そのうち養殖された海馬が出回るかも知れませんが、功能は天然ものと比較して落ちることは確かでしょうね。

結語

現在でもよく使用されているのが馬鞭草(ばべんそう)の活血利水消腫剤ですが、日本では流通が無いのが難点です。馬がついた生薬で温薬は海馬だけです。これとて現在は取引禁止ですし、馬兜鈴に到っては毒物ですし、馬銭子(ばせんし)も大毒ですから、手の出せる薬剤は少ないですね。馬歯莧ぐらいですか。でもいくらでも西洋薬で代役が可能ですので、利用価値は少ないですね。

2013828日(水) 記


最新の画像もっと見る

コメントを投稿