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蛋白尿 漢方薬 4 腎気不固 参耆地黄湯の摂精(腎病漢方治療 400報)

2014-06-28 00:15:00 | 漢方市民講座

 

先ず、腎気不固という中医概念は、主として腎陽虚の症候分析に使用される用語です。症候は顔面蒼白、畏寒肢冷、下痢清穀、五更泄瀉、腰背酸痛、遺精、陽萎、多尿或いは尿失禁、舌質が淡胖、歯痕、苔は白、脈は沈遅ですが、それらの「症候分析」の中で、腎陽不足、命門火衰弱、火不生土のため、下痢清穀、五更泄瀉が出現する。腎陽不足、温煦失常のため、畏寒肢冷をみる。腰は腎の府であり、督脈は脊髄を貫いて腎に絡い、腎陽不足のため、腰背酸痛をみる。腎陽衰弱、精関不固のため、遺精、陽萎が出現する。腎気不固のため、多尿或いは尿失禁が生じる。(という具合に)腎陽不足の際の多尿や尿失禁の原因として腎気不固という概念があります。<o:p></o:p>

 

一口に、腎陽虚と言っても大きく分類すれば以下のようになります。<o:p></o:p>

 

(1)腎気不固<o:p></o:p>

 

病機概要:過度の疲労、慢性疾患、腎気虧耗、固摂作用の働きの減退による。<o:p></o:p>

 

主要症状:顔色が白く、腰や背中のだるさ、聴力低下、小便が近く、色が淡い。甚だしければ尿失禁、滑精、早漏、排尿等の余癧、舌質は淡で、舌苔は薄白、脈は細弱である。<o:p></o:p>

 

治療法則:固摂腎気<o:p></o:p>

 

方剤挙例:大補元煎(景岳全書)、秘精丸等<o:p></o:p>

 

大補元煎(景岳全書):人参 炒山薬 熟地黄 杜仲 枸杞子 当帰 山茱萸 炙甘草<o:p></o:p>

 

(2)腎不納気<o:p></o:p>

 

病機概要:疲労による腎気が傷つけられ、或いは慢性病により気虚、気不帰元、腎失摂納が起こる。<o:p></o:p>

 

主要症状:喘息性の呼吸困難で、動けば増悪する。咳にともなう発汗、小便は咳が酷くなるにつれて失禁になり、顔色が白く、舌質は淡、舌苔は薄、脈は虚弱である。<o:p></o:p>

 

治療法則:納気帰腎<o:p></o:p>

 

方剤挙例:人参胡桃湯(済生方)、或いは参蚧散(人参蛤蚧散:衛生宝鑑)等<o:p></o:p>

 

人参胡桃湯(済生方):人参 胡桃肉 生姜と水煎服用<o:p></o:p>

 

主治:肺腎両虚 咳嗽気喘 効能:補肺腎 定喘逆<o:p></o:p>

 

虚喘の軽症で寒証に偏したものに用いる。人参は補肺益気 胡桃肉は潤肺納気に働く。<o:p></o:p>

 

参蚧散(人参蛤蚧散:衛生宝鑑):蛤蚧1対 杏仁150 炙甘草150 人参 茯苓 貝母 桑白皮 知母各60 散剤にして12回6gずつ服用する。<o:p></o:p>

 

主治:肺気虚兼痰熱 効能:益気清肺 止咳定喘 久咳肺虚で熱に偏したものに使用する。<o:p></o:p>

 

(3)腎陽不振<o:p></o:p>

 

病機概要:先天的な虚弱、長期の慢性病、性生活不摂生により腎が傷められ、下元虧損、命門火衰による。<o:p></o:p>

 

主要症状:顔色が白い、足腰がだるい、インポテンツ、頭のふらつき、耳鳴り、頻尿、舌質が淡白、脈が沈弱。<o:p></o:p>

 

治療法則:温補腎陽 <o:p></o:p>

 

方剤挙例:右帰丸(景岳全書)、或いは金匱腎気丸(八味地黄丸)等<o:p></o:p>

 

右帰丸(景岳全書):熟地240山茱萸90山薬120枸杞子 鹿角膠 莵絲子120当帰90肉桂60120杜仲120炮附子60180蜜丸作成 朝晩15gずつ服用<o:p></o:p>

 

(4)腎虚水泛<o:p></o:p>

 

病機概要:先天的な虚弱、慢性病、腎陽の消耗のため、水液を温められないので、水邪が犯濫し上逆する。或いは外の皮膚に溢れだす(浮腫)。<o:p></o:p>

 

主要症状:水腫、全身の浮腫、下半身が特に顕著。押えるとまるで泥の様に凹み、腰腹脹満、尿量減少、咳にともなう痰、サラサラした痰、動けば喘息が出る。舌苔は淡白、脈は沈滑。<o:p></o:p>

 

治療法則:温陽化水<o:p></o:p>

 

方剤挙例:真武湯(傷寒論)、或いは済生腎気丸(済生方)等<o:p></o:p>

 

はて、何を以って腎気不固とするのかは難しいところです。よく、「近頃は小便をするとよく泡が立つようになった」と訴える患者さんがいます。腎気不固の証の一つです。「腎気不固」という概念は、気の固摂作用の腎での低下失調を意味します。1、血液を固摂する2、尿液を固摂する3、精液を固摂する4、帯下を固摂するの、おおよそ4つですが、蛋白尿も糖尿も腎気の固摂作用の低下(腎気不固)の拡大として考えます。泡が立つのは、生体に本来必要な精微物質が尿に洩れて出てくるためと考えます。<o:p></o:p>

 

解ったような、解らないようなですね。それでは、もう少し腎について考えましょうか?<o:p></o:p>

 

腎は左右に各一つずつあり、ここに命門をつけたす。元陰と元陽を内蔵し、その経脈は膀胱に絡し、膀胱と互いに表裏の関係をなす。腎は主に精を蔵し、人間の成長と発育、生殖の源となっている。生命活動の根源であり、故に先天の本と称される。腎は五液(汗、涕、涙、涎、唾液)を主り、体内での水分の平衡を維持している。腎は骨を主り、髄を生ずることにより、骨や歯を堅固にし、脳の発達を促し、精力を充実させる。腎とその他の臓腑との関係は深く、腎は納気を主り、故に肺の吸気と粛降の働きを助けている。腎水は上の心を助け、心火は下の腎と交わる。水火既済であれば、陰陽平衡になる。腎は先天の本で、脾は後天の本である。脾の健運は、腎陽の温煦作用に頼り、精気の充足は、逆に脾胃の補養を受けている。肝と腎はともに下焦にあたり、肝木は腎水の濡養に頼り、腎精充足であれば、肝も滋養されている。膀胱は主に津液を貯め、気化すれば水は流れる。しかし膀胱の気化には腎気の蒸騰(気化)が必要である。例えば、先天性の虚弱、過度の疲労、性生活の不摂生、過剰の生育、長期の慢性病により、“五臓が傷つけられ、尽きれば腎に影響が及ぶ”とあり、精気が損傷され、そして多くの病気が生じる。もし腎陽虚衰、大小便不利、気化せず水が流れない水湿内聚、或いは皮膚にうるおいがないので、飲と腫になり、下元虧損、命門火衰であれば、陽萎(インポテンツ)、五更泄瀉になる。腎気が消耗し、蔵が封じられなくなり、固摂作用が働かないと滑精、早漏、小便の失禁が起こる。気不帰元、腎不納気であれば、喘息上逆、呼吸促拍が見られ、長期の疲労、真陰虧虚、水不涵木、肝腎不足のため、めまい、耳鳴り及び下消等の症状が現れる。腎陰耗傷、陰不済陽、心火上越、心腎不交であれば、イライラしたり、不眠、心悸、健忘、潮熱、盗汗、甚だしければ歯が抜けたり、夢精したりする。臨床上では、腎の病証である消渇(下消)、浮腫、癃(尿閉)、遺精、インポテンツ、腰痛、耳鳴り、難聴、めまい、下痢(腎泄)等がよく見られる。<o:p></o:p>

 

読者に飽きられるとこまりますからこの辺で「序章」を終わりにして本稿へ進みます。<o:p></o:p>

 

上下つき合わせて読み返してください。糸球体腎炎の蛋白尿、血尿が慢性化して消失せず、患者が次のような症候、即ち、腰痛腰酸、倦怠乏力、眩暈耳鳴、夜尿頻多、尿清長、遺精或いは滑精、舌質淡紅、舌体胖、脈沈或いは無力等を呈する時に、腎気不足、固摂失司、精微外泄と弁証するのです。<o:p></o:p>

 

方用:参耆地黄湯加味熟地黄20g 山茱萸15g 山薬20g 茯苓20g 澤瀉15 牡丹皮15g 肉桂7g 附子7g 黄耆30g 党参20g 菟絲子20g 金桜子20<o:p></o:p>

 

方中の熟地黄 山茱萸は補益腎陰 摂精気に、黄耆 党参は補気健脾に、澤瀉は健脾滲湿に、牡丹皮は清虚熱に、肉桂 附子は命門真火を補し、引火帰源に働き、金桜子は固摂精気、莵絲子は補腎填精に作用します。<o:p></o:p>

 

何のことやらさっぱりと嘆息する読者も多いかと思います。やはり、実例をご参照いただくのがいいでしょう。沢山の医案をご紹介しましたが、本稿での参耆地黄湯加味と同じ加味方を用いた例が宜しいかと思いますので一例のみにします。ご参照ください。<o:p></o:p>

 

慢性腎炎(腎機能低下例):<o:p></o:p>

 

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20140305<o:p></o:p>

 

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次回は蛋白尿 漢方薬 5 「湿毒内蘊には利湿解毒を先に行う」をお話しします。<o:p></o:p>

 

2014628日(土)<o:p></o:p>

 


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