まず、「陰水」からお話ししますと、脾腎陽虚で水湿の温運無力となり水腫を形成したものを「陰水」というのです。陰陽論から、当然の如く、(井上)陽水の「陽水」があります。(中医の定義づけは)風邪外侵、飲食不節度を成因とするのが陽水、労倦内傷、生育不節を成因とするのが陰水となります。病理論では、表証、実証、熱証が陽水、裏証、虚証、寒証が陰水、発病と病呈の特徴は、急短が陽水、慢長が陰水、主な症状として陽水は頭部顔面から発症し、皮膚は弾力があり光沢、指で押すと陥没の回復が早く、陰水は下肢から始まり、皮膚は弛緩し無光沢、指で押すと陥没の回復が緩慢です。観察と診察、問診からの情報であり、習慣化してしまえば、陰水、陽水の区別は半ば自動的に出来るものですが、(腎臓内科専門医でも)そもそも観察、診察しなければ無縁のことになります。<o:p></o:p>
全身浮腫、腰以下に浮腫が著しく、指で押すと陥没は容易に回復せず、水腫の反復発作があり、小便の量が少なく、便は溏で不爽、脘腹張満、腰痛、畏寒肢冷、精神萎糜、面色は暗あるいは皓白、舌体胖で水っぽく、舌質淡、瘀斑あり、脈沈細遅或いは沈渋の症候(情報)が脾腎陽虚の陰水の弁証根拠となります。<o:p></o:p>
治療は温腎健脾利水活血の剤が宜しいのです。<o:p></o:p>
方用:加味真武湯:附子(先煎)25~30g 茯苓30g 白朮25g 白芍25g 生干人参15g 麦門冬15g 五味子15g 益母草30g 紅花15g 桃仁15g 生姜15g 甘草15g<o:p></o:p>
本方は温腎健脾利水活血の剤で、慢性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群のうち腎陽虚の水腫を主治とします。方剤中の附子は温助腎陽の品;人参 白朮 茯苓 甘草は益気健脾(四君子湯);白芍 五味子 麦門冬は斂陰滋陰の品;人参 附子 白朮は温熱燥の薬、故に斂陰滋陰の剤を配伍し、陰液を守り、熱燥耗陰を防止します。<o:p></o:p>
高度の水腫状態では、血液の凝固能が亢進します、故に益母草 桃仁 紅花の活血利水にて血凝を改善し、水腫がのぞかれ、気血が通暢となれば、全身の機能が回復するのです。<o:p></o:p>
益母草(活血利水消腫)は副作用が無く、使用上便利かつ有効な生薬です。<o:p></o:p>
附子に関しては多く説明してきましたので詳細は省きます。<o:p></o:p>
本稿の方剤は見ようによっては真武湯合参麦飲になります。過去の記事をご参照ください。<o:p></o:p>
ネフローゼ症候群:http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20140125<o:p></o:p>
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2014年7月7日(月)<o:p></o:p>
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