漢文が全くの表意文字であるので、私の講座は殆どの読者には「想像力の世界」になります。でも、ご心配なさらずに。極々一部の漢族の更に一部の人々しか漢文は理解できず、殆どの現代中華人民共和国の人は全く理解できないのですから。「想像力」とて、読者が劣っているとは私には思えません。<o:p></o:p>
本稿に入ります。<o:p></o:p>
急性、慢性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群の患者群で、腹水が著しく、腹部が膨満し、小便不利、大便秘結、五心煩熱、悪心嘔吐、口干食納減少、舌質紅苔白厚膩、舌体胖大、脈弦滑或いは弦数;大量の蛋白尿、低アルブミン血症、高脂血症、時にCreやBUNの上昇を示す群があります。<o:p></o:p>
(これらの症候を中医は)病情の気機(メカニズム)は脾気虚で脾の本来の昇清機能が失われ、湿濁が中阻(中焦に阻滞)し、胃の気滞が降濁を失い熱と瘀を帯びた、即ち虚中挟瘀、湿熱中阻の証と弁証します。(何処にも腎が出てきませんね。これも中医弁証の特徴です。)<o:p></o:p>
方用:中満分消飲加減:黄芩10~15g 川黄連10g 草果仁15g 檳榔(行気利水消積殺虫)20g 半夏15g 乾姜10g 陳皮15g 姜黄(破血行気 通経止痛) 澤瀉25g 猪苓20g 茯苓15~20g 白朮10~20g 干晒人参10~15g (砂仁15gの配伍も可) 川厚朴20g (枳実15gの配伍も可) 知母15g 甘草10g<o:p></o:p>
敷衍(ふえん)という漢字をご存知であれば、本方は李東垣の中満分消丸から衍化されたもので、張琪氏の自創方(に近い)です。<o:p></o:p>
配伍生薬を中医学的に説明すれば、苦寒の黄連 黄芩は清熱除痞に、乾姜 砂仁は脾胃を温め運化除湿を助け、白朮 人参 甘草 茯苓(四君子湯)は益気健脾に作用し、厚朴 枳実 姜黄は開鬱理気散満に働き、半夏 陳皮(橘皮)は和胃降逆に、猪苓 澤瀉 茯苓は利水に、知母は水の上源である肺を清する組成になっています。<o:p></o:p>
本方は「内経」の記載によるものです。「素問 陰陽応象大論」の「中満者、内に之を瀉す」に根拠とする分消法であり、「辛熱を以って散じ、苦を以って瀉し、淡滲をもって利し、上下分消(湿熱)となる。」という記載から後世の医家、例を挙げれば李東垣は(蘭宝秘蔵)で中満分消飲を創方しています。清昇濁降となれば張満は自ずと除かれます。この上下分消法は慢性腎炎の水腫張満、口干苦、悪心、小便不利、高窒素血症(腎不全)などに有効な法であるとされます。<o:p></o:p>
中満分消飲の臨床応用の実例は過去の記事を再度ご参照ください。論より治療効果ですから。症例から何かを感知すれば宜しいのです。<o:p></o:p>
ネフローゼ症候群:<o:p></o:p>
http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20130601<o:p></o:p>
http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20140117<o:p></o:p>
腎不全:http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20140416<o:p></o:p>
肝硬変の腹水軽減にも有効であるとする報告もあります。腹水が顕著な場合に、二丑(牽牛子:黒白丑共に逐水瀉下 袪積殺虫に働く、峻下利水薬)にて逐水するという加味も可能です。但し有毒ですので、量は一日量30gが限度です。<o:p></o:p>
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2014年7月10日(木)<o:p></o:p>
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