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むずむず脚症候群の漢方治療

2008-07-11 15:29:05 | ブログ

むずむず脚症候群とは?

「夜にふくらはぎがむずむずするので寝付けない」、「たたいたりさすったりすればある程度おさまる」「周期的に脚の筋肉が痙攣する」「ひざから下に、痒みがでたり、痛みなどのおかしな感覚が出る」「脚が不快で、脚を動かさないではいられない」と患者は訴える。このような一連の下肢の症状を「むずむず脚症候群」あるいは「レストレスレッグ症候群」という。

もっぱら西洋医学の医師として働いた経験によれば

私の経験では慢性腎不全で10年以上の長期にわたって透析を受けている患者さんである。主に男性だった。慢性の維持透析の自己管理で最も重要なことは、間(あいだ)1日あるいは間2日の体重増加をどれだけ抑えるかにある。火、木、土の週3回の透析を受けている場合は日、月の2日間で最も体重が増加する。月、水、金と透析を受けている場合は、土、日の2日間である。自己管理が悪いと、時として7kg以上の体重増加(水分増加)がある。したがって、週明けには4~5時間の透析の間に8リットル前後の除水が必要になる。そういう場合に、どんどん除水していくと、「脚が不快で、動かさないではいられない」という下肢の筋肉の異常感覚が出る。最終的には脚が引きつる。「むずむず脚症候群」が世間に認知される30年ほど前から、それに似た症状を経験してきた。漢方医である現在では、すぐに「陰虚生風」「肉?」などを想起する。これについては後述する。「「むずむず脚症候群」は女性に多いという説もあり、貧血症、妊娠、糖尿病、慢性長期療養中の結核、肺炎、肝炎などの感染症にも出現する。

西洋医学の薬剤治療は?

抗てんかん薬であるベンゾジアゼピン系のリボトリール(一般名クロナゼパム)や、パーキンソン病の治療薬でドーパミンの受け皿を刺激するドーパミン受容体刺激薬だ。脳内ドーパミンの効果を上げる作用がある。なぜ効くのか理由は知らないし、明らかにもされていない。こういった薬物は、てんかんやパーキンソン病の治療に使う通常量の数分の一で済み、副作用は少ないとされている。しかし、通常量近くまでの増量が必要な症例もある。

「抗てんかん薬」は、当然、副作用の観点から妊婦には使いにくい。重症筋無力症や急性の緑内障には使用できないのが常識らしい。もともと慢性病をもつ患者さんや高齢者がレストレスレッグ症候群を起こしやすいのにかかわらず、抗てんかん薬は呼吸器疾患、心疾患、肝臓病、腎臓病(慢性腎不全が代表である)の患者、何よりも高齢者には注意して使用しなさいと添え書きがある。従って、私は何を基準に使えばいいのかわからない。また、薬剤の服用期間などの情報は皆無で、わからないことだらけだ。

「抗パーキンソン病薬」: ドーパミン前駆物質のメネシット、ドーパミン受容体刺激薬のペルマックスや、パーロデルなどで、効果を発揮することもあると報告されているが、メネシットに関しては、急に服用を中止すると、急激な体温上昇、筋肉のこわばりなどの悪性症候群が出現するという。危険性がある。加えて、何も好き好んで麦角アルカロイドの一種であるパーロデルやベルマックスを服用するまでもないことに思われる。劇薬だからだ。

そもそも

脳内ドーパミンを増やすとか、ドーパミンの活性を上げるのが何よりも治療につながると基礎の脳生理・生化学者が主張するならば、「好きな酒を飲み」「好きな歌を歌い」「好きな異性と会話を楽しむ」というようなことで十分だと小生は思う。躁病の患者さん脳内ドーパミンの異常活性が疑われている。躁の状態では疲労が蓄積して自己の体力の限界を超過しても、疲労の蓄積を自覚できないと私は肌で感じている。ちょうど覚せい剤中毒のようだ。

従って、西洋医学的に、むずむず脚症候群に対して、まさに人為的に脳内ドーパミンを増加、あるいは活性を増強させる手法は、中止後のリバウンドが危険この上もないと思うのである。

漢方医学と「レストレスレッグ症候群」との接点を探す

抗てんかん薬が有効だとすれば、漢方医学の分野では、肉?(にくじゅん)(ちょうちゅう)が接点を持つ。筋肉のびくつきを漢方では「肉?(にくじゅん)」という。手足や肩の筋肉などが突然に不随意的にやや大きく動くことを、中医学では「抽(ちょうちゅう)」という。脳内ドーパミンを云々する立場からは中医学でいう郁症(うつしょう)も関係する。

妊娠は病的な状態ではないが、妊娠を中医学的に分析する必要がある。

睡眠薬が「むずむず脚症候群」の就寝中の症状緩和に役に立つという報告があるので、中医学的な不眠=不寝も接点のひとつだ。しかし、西洋の睡眠薬は当然のことながら、昼間のむずむず脚には役に立たないし、一日中寝させているわけにもいかない。

漢方薬の安全性

漢方薬にはモノアミン酸化酵素阻害薬である塩酸セレギリン(エフビー錠)のような覚せい剤の原料となるものはない。従って、処方時には患者に対し「この薬は覚せい剤に指定されているから第三者へ譲渡しないこと」等についての十分な説明も不要だ。これはありがたい。塩酸セレギリンは三環系抗うつ剤との併用が禁止されている。一日極量が10mgである。まさに劇薬中の劇薬だ。

パーロデルが有効とすれば、高プロラクチン血症の漢方的なアプローチも接点のひとつだ。パーロデルにありがちな吐き気や嘔吐、頭痛などの副作用が漢方薬にはほとんどないために、「飲み続ければ副作用に慣れます」と苦し紛れの説得は必要がない。これも、ありがたいことである。高プロラクチン血症と漢方については以前のブログ

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20080425

を参考にしていただきたい。

「風(ふう)」

手足のふるえや、かゆみ、むずむず感は漢方の世界では「風(ふう)」の概念に入る。「」を抑える漢方的な手法を「風(きょふう)」あるいは「熄風(そくふう)」と言う。

中国医学には「諸風掉眩皆属干肝」という言葉がある。肝に注目すべきだ。

「風」の特徴は「善行数変」と移動性、非固定性である。また、「動風(どうふう)」という概念がある。ふるえること、あらに意識的に止められないふるえを顫動(せんどう)といい動風にはいる。この原因として虚損(気血両虚、陰虚)、血熱などを考える。「むずむず脚症候群」を起こす症例は極端な熱病とは無関係のようであるから、血熱は無視してもいいだろう。虚損を根底に考える。円形脱毛症は突然の部分的脱毛だが、漢方の世界では、血虚が原因の「風」によるとされ、「血虚受風」なる考えがある。老人性の皮膚掻痒症については以前のブログhttp://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20080512

で述べたが、血虚、陰虚による「生風」が原因とされる。血虚生風、陰虚生風の概念はむずむず脚症候群の治療に欠かせないものだ。

不眠症(不寝)からのアプローチ

肝火 痰熱 陰虚火旺 心脾両虚などに大別して考える。問診、脈診、舌診、視診により経験豊富な漢方医であれば直感でタイプが判断できる。このうち「むずむず脚症候群」と関係していると思われるタイプは、印象の強い順に陰虚火旺 心脾両虚である。聞きなれない漢方用語で恐縮だが、次のような特徴がある。

陰虚火旺 

紅舌少苔脈細数 イライラ 早朝覚醒 腰酸膝軟 無力感 紅舌少苔脈細数

(盗汗 五心煩熱 驚きやすい 咽干口燥 眩暈 耳鳴 健忘 遺精)

黄連阿膠湯 六味地黄丸 酸棗仁湯 天王補心丹などで治療する。

後述の心腎不交は腎陰虚が原因である。後述の肝腎陰虚の根本も腎陰虚である。

心脾両虚 

舌質淡 薄白苔 脈細弱 寝つきが悪い 多夢 覚醒しやすい 動悸 健忘 食欲不振 顔色が悪い(自汗 精神疲労 食欲不振 胃部の痞え 大便希薄)

 基本的に帰脾湯にて治療する。

心脾両虚とパニック症候群の関係は以下のブログで述べたので参考にしていただきたい。http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20080318

抗てんかん薬の一部がむずむず脚症候群やパニック症候群に効果があるといわれている。副作用を恐れる必要のない意味で漢方を試してみるのは良い選択だ。

心腎不交からのアプローチ

不眠症は、神明を主宰する心の火が独り上亢じて下に降りて来ない頭の覚醒している状態だ。夜になれば心火と下にあった腎水は相交わり、交流すべきものなのであるが、「心腎不交」が原因で不眠症(漢方用語では不寝)になる。腎水の不足、即ち「肝腎陰虚」が存在すると不寝になりやすいわけである。

中国伝統医学の五行相生の伝達方式は2つある。つまり、母病及子 子病及母である。

五行相生からの治療原則も2つある。 実即其子、虚即補其母である。


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