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アトピー性皮膚炎 漢方治療14報

2014-07-29 00:15:00 | アトピー性皮膚炎

 

本日は某漢方医で、附子理中丸→桂枝加竜骨牡蛎湯→補中益気湯(黄耆 人参 甘草 柴胡 升麻 当帰 陳皮)→参茯白朮散の治療と、皮膚科での大量のステロイド軟膏の外用療法を経て、病情は悪化の一方をたどるだけで、(患者の話では)外用ステロイドのみで「満月様顔貌」と咽干(干とは潤でなく乾燥の意味)が酷くなり、一時期は声も出にくくなったとのこと、仕事も不可能になり、(せっかくの)公務員職も辞職して、困り果てていたところ、ネットで当院を探し当て、「駄目もと」の気持ちで、電車で2時間かかる他県から、漢方治療を求めて来院した症例をご紹介します。

 

( )内に随時、私のコメントを入れます。

 

服用方剤の問題点附子理中丸附子(辛 補火助陽 散寒止痛 回陽救逆)と補気薬の温薬である人参はアトピーを悪化させる。配伍されている温裏薬の乾姜も同様」→桂枝加竜骨牡蛎湯桂枝(発汗解表、温通通陽、袪風寒湿邪、温経通絡)はアトピーを悪化させる」→補中益気湯(黄耆 人参 甘草 柴胡 升麻 当帰 陳皮)「人参や黄耆(補気昇陽、固表止汗、托毒排膿生肌、利水退腫)は補気薬の代表であり補気が過ぎれば熱を生じさせる」→参茯白朮散「同じく人参をだらだら使用してはいけない。白朮(補気健脾、燥湿利水、止汗安胎)は温薬で性質が燥であるのでアトピー性皮膚炎に長期連用すると悪化する原因となる」

 

外用ステロイド:(仮に患者の話が本当だとしても、)外用ステロイドで満月様顔貌まで生じるとは経験上考えにくく、何らかのステロイド内服の処方を受けていた可能性が有ります。

 

患者T.Y 31歳 公務員退職 初診年月日2014214日 病歴5年前からアトピー性皮膚炎出現、上記治療を受けるが、病情は穏定せず、満月様顔貌、声が出にくい、咽干が悪化したので、自主的にステロイド軟膏を減量し、漢方治療も併用したが、皮膚病変は悪化した。

 

初診時所見:舌象、脈象は省きます。皮膚科の患者さんの皮膚病変はすべて写真に撮ってあります。(写真下)

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上半身の皮膚のツッパリ感を伴う発赤疹、皮膚は乾燥し、表面は粗造で、皮膚は固く、いわゆる苔癬化が著しい。

前腕部屈側と手甲手指部の苔癬化を伴うアトピー性変化(写真下)

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下肢の膝裏から下腿後面にかけての、苔癬化を伴う痒疹が著しい。(写真上)

 

当院の治療方針:滋陰(血)清熱涼血活血潤膚祛風止痒、服用薬はすべて中止させ、外用ステロイド剤は反跳(リバウンド)を恐れたが、1/9まで薄め、禁食とすべき食事療法や入浴の湯の温度等について指導。

 

201437日(四診時所見 写真下)

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初診時と同アングルで撮影:皮膚のツッパリ感が消失、発赤疹も苔癬化局面も改善している。いわゆる皮膚の潤いが生じてきた。

 

前腕部、手甲手指、膝裏下腿の改善が著しい。(写真下)

 

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2014611日 九診時の背部所見。経過は順調であり、背部の発赤疹は消失し、色素沈着を残すのみとなった。皮膚掻痒は全消に近くなった。臨床的にはほぼ穏解に近い。(写真下)

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2014715日時点で、外用ステロイドは、さらに減量に成功し、全身1日量0.285g(ベタメサゾン換算3.42mg)の極少量となった。

 

くどいようで恐縮ですが、アトピー性皮膚炎の漢方治療では使用すべきでない薬剤目的別に使用すべき薬剤があります。

 

以前の2012710日の記事を再度ご参照ください。

 

アトピー性皮膚炎:中国での生薬の使用状況

 

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20120710

 

使用すべきでない薬剤が再度ご理解いただけると思います。青年は本来血気盛んなのです。補気薬を重ねて服用させれば、気の余りは熱に変化するのです。温裏大熱の附子(辛 補火助陽 散寒止痛 回陽救逆)や乾姜などは論外となります。

 

 

 

ドクター康仁

 

2014729日(火)