主治の意味は、この6稿では主な治則(治療の仕方)と言う意味です。腎炎血尿と漢方薬 4 「陰虚内熱 知柏地黄加味を主治とする」(腎病漢方治療405報)の主治は主な治療方剤の意味ですでから本稿の主治とは意味合いが異なります。前案の腎炎血尿と漢方薬 5 「陰欠火動迫血妄行 滋陰涼血収斂を主治とする」(腎病漢方治療406報)の主治は主な治則という意味ですので本稿と意味合いは同じです。主治則、主治療方剤とは長たらしくタイトルに向かないので短縮して主治としてあります。<o:p></o:p>
慢性糸球体腎炎、IgA腎炎で血尿を主な症候として、病呈が長く、血尿が頑固で遷延する症例は良く経験することです。また原因不明の頑固な顕微鏡学的血尿の症例もよく経験するものです。かかる症例が診察時に次のような症候、即ち、腰酸腿軟、全身乏力、体倦神疲気弱、舌淡潤、脈象沈弱或いは沈細無力等の症候(情報)がある場合に、(中医は)腎陰虚、気虚血不統摂と診断(弁証)するのです。<o:p></o:p>
方用 益気補腎固摂合剤:黄耆30g 党参(或いは太子参)20g 石蓮子(益腎固渋 収斂止血)15g 烏梅炭(生津 渋腸 収斂止血) 金桜子(酸渋/平 固精、縮尿、渋陽止瀉)15g 熟地黄25g 五倍子(斂肺降火、固精縮尿、斂汗生津、固渋収斂止血)亀板(滋陰潜陽、益腎健骨、養血補心)20g 孩儿茶(清熱 生津 収斂止血) 龍骨(収斂固渋止血)20g 牡蠣(収斂固渋止血)20g 山茱萸(益腎補陰収渋)20g 茜草(涼血化瘀止血)20g 地骨皮(退虚熱)15g 赤石脂(渋腸止瀉、収斂止血)15g 甘草15g 水煎服用<o:p></o:p>
方中の黄耆 太子参は益気を主な作用とし、血尿が遷延し腎陰を消耗させる(と中医は考えますので)、故に熟地黄 山茱萸 亀板の滋補腎陰の品;地骨皮 石蓮子の滋陰清熱の品;竜骨 牡蠣の収斂止血の品を加味します。五倍子 金桜子 烏梅炭 孩儿茶 赤石脂は皆、収斂固渋止血の効能を持ちます。<o:p></o:p>
五倍子は消化管出血に多用され良効ですが、腎炎の血尿、蛋白尿にも一定の効果があります;孩儿茶は日本での流通はありません。その清熱固渋止血の作用は、(中国では)外用されることも多く、内服されることも多いのです。<o:p></o:p>
赤石脂は別名 紅土、石脂、性味は甘渋/温で効能は?腸(=渋腸)止瀉 止血 斂瘡 生肌解毒等収斂と止血の作用があります。虚寒性の慢性の下痢、脱肛、便血、崩漏、帯下を治します。古くは「傷寒論」中の桃花湯、赤石脂禹余粮湯に配伍されていますが、尿血にも効果があるようですね。桃花湯方証を付記して本稿を終わります。 腹痛、下痢不止、膿血便、{陽虚滑脱}小便不利:生薬配伍:赤石脂、干姜、粳米<o:p></o:p>
本稿をもちまして(一時的に)「腎炎血尿と漢方薬」の最終稿とします。赤石脂は酸化第二鉄、酸化アルミニウム、シリカなどを含む粘土塊ですが、中国の土壌汚染が深刻ですので、輸入してまで使用する気にはなれません。益気補腎固摂合剤中に赤石脂が配伍されての臨床例は以下の医案が参考になると思いますのでご参照ください。<o:p></o:p>
IgA腎炎:http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20140112<o:p></o:p>
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2014年7月5日(土)<o:p></o:p>