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慢性腎炎、(特にIgA腎炎)の漢方治療4

2012-12-21 02:15:00 | Marilyn Monroe マリリン モンロー

清利湿熱、解毒通淋法

さて、CKDに対する「清利湿熱、解毒通淋法」は。下焦湿熱、邪擾腎絡の証に用いるとされます。どのような証かと言えば、●腰酸腰痛(腰がだるく痛む:これは腎虚の証であり、これのみでは下焦湿熱の証にはなりません)以外に、●尿黄短赤(肉眼的に尿の黄色が強くなり、頻尿気味で排尿痛などを伴う)、甚だしい場合には肉眼的血尿があり、頻尿気味で、▲腹が張る感じがあり、食欲不振、大便は軟便気味ですっきりと排便できなく、●舌苔は黄?で、脈は弦細或いは細数(さいさく)(数は「さく」と読み、頻脈傾向を指します)。湿熱が下焦に薀結(うんけつ)(停滞する意味)し、腎陰を消耗させると、陰虚内熱が生じ、それら熱邪が腎絡を傷つけると、尿黄短赤や血尿が生じると説いています。中医学では腰は腎の(外)腑であるとされ、腎虚になると腰酸腰痛が生じ、下焦熱盛になると不快な頻尿が生じ、湿熱が(中焦の)脾胃に薀結すると、脾は健常な運化を失う(脾失健運)ことになり、腹が張る感じ、食欲不振、大便は軟便気味で、すっきりと排便できないなどの消化器症状が出現します。舌や脈象は下焦湿熱の証とされます。

小薊飲子済生方)」を主方とします。済生方の原方の組成は小薊 生地黄 藕節 蒲黄 山梔子 木通 竹葉 滑石 当帰 甘草ですが、近年は木通の腎毒性が明らかになっている為に、通草を用います。竹葉は淡竹葉を用いるのが現代流です。通草と淡竹葉は小便に熱を導き排出する働きがあります。小薊 生地黄 藕節 蒲黄は涼血止血に働き、山梔子は熱邪を三焦から除くと中薬学に記載があります。当帰は一般には養血活血に作用すると記載されていますが、腎炎の場合には「引血帰経」と称し、離経の瘀血を経脈に戻すという意味合いの表現がなされています。湿熱の証が甚だしい場合には、石葦萆薢を加味し、血尿が著しい場合には、白茅根槐花で涼血止血の効を強め、さらに旱蓮草で涼血止血、滋陰益腎の功能を求めます。

血淋(けつりん)

中医内科学では伝統的に「血淋(けつりん)」という範疇があります。「小薊飲子(済生方)」が主方となる分野ですので、紹介します。

(症状)まず、「実証」から述べますが、小便がスムーズに出難く、排尿時に熱感と刺痛がある。 尿色が深紅、或いは血塊が混じり、疼痛満急が酷くなり、或いは心煩を伴い、苔黄、脈は滑数である。次ぎに「虚証」に言及します。

尿色が淡紅、排尿痛や尿の渋滞は著しくなく、腰酸膝軟、精神疲労、無力、舌淡紅、脈細数などが見られる。

症候を中医学的に分析すれば、湿熱が膀胱に下注して熱盛傷絡、迫血妄行すると小便が渋り痛み、血が混じる。血塊が尿路を閉塞するために疼痛満急が更に悪くなる。例えば、心火亢盛であれば、心煩、苔黄、脈数などは実熱の現象である。病が長期にわたり、腎陰不足になり、虚火灼絡で、脈絡が損傷されて、その結果、尿色が淡紅になるも渋痛が著しくなく、腰膝酸軟などが見られる。これは血淋の虚証に属する。以上のような分析になります。

治療原則は、実証に対しては、清熱通淋、涼血止血を、虚証には、滋陰清熱、補虚止血となります。

使用される方薬は、実証には、小薊飲子導赤散を用いる。小薊飲子中の小薊草は、30gまで多めに使い、生地黄は新鮮の物を適宜とする。甘草は生甘草が適宜であり瀉火に作用する。

導赤散」(小児薬用直決)も主方の一つです。組成は、生地黄 木通(通草、灯心草で代用) 生甘草梢9 淡竹葉6であり、清心瀉火 利水通淋に作用します。使用される証は「心経熱盛証」(プラス尿血)であり、具体的には、心胸煩熱、口渇面赤、渇欲冷水、口舌生+尿混濁、排尿痛であり、熱移小腸が病機であると説いています。心の臓腑関係は、心と小腸になりますが、熱移小腸は、西洋医学者にとっては、非常に「感覚的に乖離した概念」です。中医学説があらかじめ出来上がっているものですから、後世の中医学者も先人に敬意を表して用語漢字で表現しているのも、一部には現実であろうと私は思います。サイエンスは権力や権威とは無縁であるべきですが。小腸実熱について付記すれば、病機概要:多くは心火が小腸に移ったものである。

主要症状:思い悩む、不眠、口内炎ができる。小便が濃く、排尿もよく痛みを生じる。或いは血尿が見られる。舌苔は黄色で、舌質は紅い。脈は滑数であり。治療法則は清心火、導熱下行であり。方剤挙例すれば:導赤散(小児薬用直決)、凉膈散(和剤局方)等になります。導赤散(小児薬用直決):生地 木通(灯心草で代用) 生甘草梢9 淡竹叶6

効能 清心瀉火 利水通淋

心経熱盛証(心胸煩熱、口渇面赤、渇欲冷水、口舌生?)+(尿混濁、排尿痛)熱移小腸

もし血尿が著しく、痛みが甚だしい者には、人参三七琥珀粉を飲ませて、化瘀通淋止血をする。虚証には「知柏地黄丸」(医宗金鑑)にて滋陰清熱をし、旱蓮草阿膠小薊草などを加え補虚止血をはかると記載があります。補足すれば阿膠は中薬学では補血薬に分類されていますが同時に止血薬でもあり、滋陰潤肺作用もあり、婦人科では止血方で用いられています。琥珀は安神、活血散瘀、利尿通淋に作用します。重鎮安神薬で平性は琥珀のみです。凉膈散の膈は縦膈、横隔の意味であり、上焦中焦の熱を清熱+利尿泄熱+通便(以瀉代清)の組み合わせで解熱させるものです。組成は山梔子10連翹40薄荷10(後下)黄芩10竹叶30大黄 芒硝 甘草20であり、調胃承気湯が配伍されています。

 こうして、清利湿熱、解毒通淋法を見てみますと、慢性腎炎、慢性腎盂炎、尿路感染症、出血性膀胱炎、限局的な尿道炎など、現代医学で厳然と区別されている疾患を中医学で鑑別診断を行おうとしても、ほぼ不可能であるということです。しかし、治療効果という観点からすれば、一定の効果がある以上、無視できないものが中医学には存在します。私が、初めて中医学の腎病に接したときの印象は、問診と診察を怠らないようにしなければならないという臨床医の姿でした。パソコンの画面のみ注視し、診察は一切行わない腎病の臨床家が、日本の現実に存在します。胃腸症状は専門外、腰痛は勿論の専門外、脈も診なければ舌も診ないとする態度も、医療訴訟が増加しつつある昨今の医療現場では「許容されうる態度」でしょうか。問診と診察が直接に治療(投薬)に反映されない医学体系の中で育って来た医師にとって、情報源は画像と血液検査、尿検査の結果だけという偏った診療が「一般化」しているのは残念なことではあります。

自然界に存在する薬物を組み合わせ、用法するのが中国伝統医学です。温故知新を、更に進展させるのが明治維新後の日本の姿勢ですから、徹底的に基礎医学を深めなくてはなりません。後塵に甘んじたくなければ、研究を進めるしかありません。基礎研究には、お金もかかりますが、「仕分け」をプロパガンダ(宣伝)にしていた売国的民主党は葬られました。新生「自公(維、み)」に期待しましょう。 しかして?

ドクター康仁 記

細切れの時間を使ってモンローの版画を楽しんでいます。日本の女優では浅岡ルリコ(私はリリーって呼んでいます)がいいですね。イタリアの女優ではソフィアローレン。どんなに美形でも、線に「老い」は出てきますね。本日のマリリンには、隠せない老いが出ています。

Mm 

Marilyn Monroe in a black sweater. Original woodcut by Dr. Kojin