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真武湯 冷えの漢方治療 

2006-12-28 09:44:51 | うんちく・小ネタ

真武湯(しんぶとう)の位置づけ、附子湯との比較

真武湯(しんぶとう) 漢代「傷寒論」

組成は茯苓 白朮 附子 生姜 白芍の5生薬である。通陽利水剤の五苓散の組成が、茯苓 猪苓 澤瀉(利水滲湿)白朮(健脾燥湿桂枝(通陽)の同じく5生薬であり、五苓散の利水効果を通陽利水というのに対して真武湯は附子の温陽効果を強調して温陽利水という。赤は温薬、ブルーは涼寒薬、グリーンは平薬である。より体を温める効果はもちろん真武湯である。五苓散は全体として平の感じがする。五苓散の通陽利水は、陽気をめぐらして利水効果を高めるという意味で体を温めるという意味ではない。真武湯証は小便不利、手足重痛(重とは浮腫を指す)四肢冷痛 下痢、腹痛、めまいがして倒れる、心悸、舌質淡胖大、舌苔白?とあり、 

脾腎陽虚水湿泛濫が主治である。つまり、陽気不足と下痢、浮腫、腹痛に効果がある。平易に言えば、冷え症に下痢 眩暈 などの脾腎両虚証が加わった場合に効果があり、その眩暈の特徴は経験から、歩いている時に足元が頼りなくフワフワして雲の上を歩いているような感じがする。立っていてもクラッとして物につかまりたくなる人に適しているような眩暈である。

真武湯に似ている方剤に苓桂朮甘湯がある。

苓桂甘湯(りょうけいじゅっかんとう)漢代「金匱要略」

組成は茯苓 桂枝 ? 炙甘草の4生薬であり、五苓散から澤瀉 猪苓の利水剤2生薬を除き、炙甘草を加えたものである。通陽利水効果は五苓散より軽いと言える。炙甘草で益気脾胃効果を増している。

苓桂朮甘湯証は、体の上部の症候から、起即頭眩(起きるとフラフラする)、口渇なし、喘満、気短(理中丸証より重症)、動悸、胸脇支満(胸脇部まで結鞭がひろがる)心下逆満、清水嘔吐(水気上衝胸)胃部振水音、腹壁軟、小便不利(理中丸証では小便自利)、大便軟、身は揺揺として揺れるなどであり、真武湯証に近い状態といえる。各生薬の効能は、茯苓(滲湿利水)桂枝(通陽化気)?(健脾燥湿)炙甘草(補益中焦、調和)であり、全体として健脾利湿、温陽利水に働く。五苓散より利水効果が薄いが、冷えには効果がある。冷えに対する効果は真武湯より劣る。

苓桂朮甘湯は経験的に、学童期の起立性調節障害や乗り物酔いにも効果がある。

前稿で述べたが、桂枝を干姜に変えた苓姜朮甘湯もある。

苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅっかんとう) 漢代「金匱要略」

「金匱要略」の「腎着病(じんちゃくびょう)」に記載されている方剤である。

腰から下が水風呂に入っているように冷え、小便が近く、腰痛がある場合に使用された。組成は 茯苓 干姜  白朮 甘草 である。

茯苓の利水滲湿作用、白?の健脾燥湿作用、甘草の益気健脾作用を総合すれば、中国医学でいう脾虚湿盛の浮腫みのある状態である。干姜の温里散寒作用をあわせれば、浮腫みがあって冷えがある場合に使用されると推測される。補陽薬、補腎薬の配合は無い。最も基本的な方剤である。利水効果は苓桂朮甘湯より弱く、温里効果はやや強いといえるだろう。方意は散寒除湿であり、利水という効能は薄い。

 腎着病の概念は、原文を(  )内に添付すると、寒邪、湿邪の陰邪が腎の外腑の腰部に侵入するために①冷寒の感じ(腰中冷)②腰痛(腰以下冷痛) ③重い感じ(身体重)などの陽気が阻まれる為の証候と、④浮腫の脾虚の証候が出現する病の概念である。病は下焦(かしょう)に属するが腎の真臓ではなく外腑の腰部であるとする点が特徴で、結果⑤小便自利であるとする。

真武湯の温陽効果を増強させたものに附子湯がある。

附子湯(ぶしとう) 漢代「傷寒論」

組成は真武湯の附子、白?を倍量にして、生姜人参に変えたもので、茯苓 白朮 附子 人参 白芍である。「温陽益気」「除寒湿止痛」が効能であり、附子の温経散寒止痛作用、白?の健脾利水作用を強化し、人参を加えることにより補益の作用を加えたものであると理解できる。傷寒論原文には、附子湯証として、口中和(少陽病でも陽明病でもないことを意味する)、手足冷、身痛、骨節痛、背悪寒、脈沈細、舌苔白滑とあり、少陰身痛証の骨節の痛みに附子湯を使用すべきとある。嘔吐、下痢などの消化管の症状の指示は無く、四肢、骨節(関節)の水滞と冷えと疼痛に用いるように指示されている。つまり、陽気不足、浮腫、関節痛を伴う冷えに効果がある。

以上を総合すれば、陽気不足の冷えに対する効果は、強い順に附子湯、真武湯、苓姜朮甘湯、苓桂朮甘湯である。附子湯は特に関節や体の冷痛に効果があり、真武湯は冷え症に下痢 眩暈 浮腫などの脾腎両虚証が加わった場合に効果があり、苓姜朮甘湯は腰から下が水風呂に入っているように冷え、小便が近く、腰痛がある場合に効果があり、苓桂朮甘湯は下痢 眩暈 浮腫などがあるものの真武湯証より軽症なものに使用すると言えるだろう。

 人体の病状には必ず移行型が存在し、典型例というのはむしろ少ない。漢方でいう加減の必要性の所以である。心悸(しんき)の弁証のうち「水飲凌心」を例にとれば、方薬は苓桂朮甘湯を基本とするが、

嘔吐があれば半夏 生姜 陳皮を加味し、尿量が少なく浮腫がある場合には澤瀉 猪苓 車前子を加味し、浮腫が重く、心悸や呼吸困難などがある場合には真武湯に五苓散や車前子(しゃぜんし)? 子(ていれきし)などを加減することなどである。

    続く、、