明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



小津安二郎の服装に一日迷う。1白いシャツを腕まくり。白いお馴染み汗取り帽。2シャツにチョッキ、ベレー帽かソフト。3グレーのカーディガンにマフラー。4三つ揃いにソフト帽。この4パターンに迷う。それぞれ小津の代表的な演出時の服装である。色はグレーのバリエーションであれば間違いない、とアダージョの表紙制作中に関係者に確認済である。カラー写真を眼にすることが少ないし、こだわりの人だから、と念のために当時の松竹のプロデューサーで現鎌倉文学館館長の山内静夫さんと、弟の信三氏夫人の小津ハマさんに伺った。知らなければ茶色あたりを使ったに違いなく、あぶなく痛恨の1カットになるところであった。しかしあの時、小津にヤカンを持たせるなど誰も思いつくまい、と一言もいってないのに山内さんが「ヤカンは絶対赤」といったのが不思議である。さすがに小津のヤカンの赤は有名であったが。
山口百恵主演の『潮騒』(75')を観る。当時百恵ちゃんはピンと来なかったのだが。原作通り三重県の神島で撮影されており、焚き火のシーンで有名な監的硝も出てくる。初江は漁師の娘なのだが、魚を刺身にするシーンで小指を立て、ノコギリのようにギコギコと切っていた。こういうことで笑われたくないので、私はつい小津のカーディガンの色を訊きにいってしまうのである。

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