伊勢在住の友人にお願いして探してもらった海女の着る磯着だが、ご主人が釣り好きで、地元の釣具屋には昔ながらの海女の使う水中眼鏡『磯メガネ』を売っていると聞いた。『潮騒』の初江の使う水中眼鏡として戦前製のものを入手済であったが、デザインといい、ゴムの感じといい、明らかに現在の物と違って味があるのだが、ただ海女が仕事に使う物と考えるとどうも脆弱な感じである。さらに気になっていたのは、鼻が外に出るタイプの物だ、ということである。昔の写真を見ると、海女が必ずしも鼻が隠れるタイプのメガネを使っているわけではないのだが、これだと水圧によって顔にメガネが押し付けられるのを、鼻からの息でメガネ内の圧を調節することができない。ゴムでなく金属製だった頃はそうとう痛かったようだが、そのうち革製の小さな風船をメガネに付け、その中の空気をメガネ内に押入れて圧を調節するという工夫がなされたようだが、鼻までメガネ内に収まっていれば、自分の呼吸で圧を調節できるわけで、何故それに気がつかなかったのか不思議な気がする。磯着と一緒に磯メガネも送ってもらうことにした。 『潮騒』といえば有名な焚き火のシーンの観的哨がある。大砲の着弾地点を観察する施設だが、未だに神島には残っているようで、いつか撮影に訪れたいと思っていたが、ただのコンクリートの廃墟で、ジェット戦闘機F-104と違って、わざわざ本物にこだわらず、でっち上げたほうが良いような気がしている。
『中央公論Adagio』以外では数年ぶりに新作をアップした。
過去の雑記
HOME