かみさんと電話で,話しているのを見ると“電話の向こうにいるのはパットン将軍か?”と思うSと1時に某駅で待ち合わせて撮影に向かう。手伝ってもらうことはないが、ヒマだというし、一年は会ってないので撮影後旧交を暖めようという算段である。『大鴉』の背景の撮影。これは嵐の夜の出来事である。いくらかでもマシだろうと曇天日を待っていたのだが、現場は赤味を帯びた室内光に、全開のドアや窓から入る青みを帯びた曇天の外光が、想像以上の混ざり具合である。撮らないことには始まらない。しかしそんな状態ではあるし、シチュエーションは決まっている。数打って当たる物でもなし、20数カットで終了。時間にして3、40分だろうか。 この時間で開いてる店を探すが焼き肉屋しかない。例によってパットン将軍とSとの“二等兵物語”をひとしきり訊く。かみさんにパットン将軍って誰?と訊かれたというので、いつかナイチンゲールと並び称された人物。と書いておいたのだが。どうやらSがいいつけただけで、ブログは見ていないようである。元々マゾ体質のSであるから、まずまずの家庭生活といったところであろう。Sと別れて画材屋で絵の具を買い、地元に帰って二カ所程顔を出し、背景の制作。前日ほとんど寝てないのだから、一度寝りゃいいものを、あんなめちゃくちゃな光をどうすれば良いか。ハードルが高過ぎて頭が冴え々。 『大鴉』はポーの出世作といっていい詩である。ポーの謎の最期を描いたフィクション『ポー最期の5日間』では、酒場でツケをため揉め事を起こすポーに酒場は酒を出そうとしない。そこでポーはこの詩の続きを言えた者に酒を奢ると客に向かって叫ぶ。結果一人いたわけだが、つまりエドガー・ポーにとって『大鴉』とはそんな作品というわけである。 画像を見ると上からの室内光に、床に当たった外光が上に向かって反射している。そこで外光の成分を強調し、色調を変え、下から室内を照らす、赤々とした暖炉の光に変えた。やればできるものである。気がついたら今日も夜になっていた。
※世田谷文学館にて展示中
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