計算尺を使ったことのある人なら,「ずらし尺」に√10切断とπ切断の2種類あることを
ご存知であろう。このずらし尺は,目外れを起こしたときに計算を継続させるための工夫
であるが,なぜ2種類あるのか?長年疑問であった。「π切断では技術計算に向いている」
と説明されているが,取扱説明書にも詳しい説明はないし,インターネットで調べても見
つからなかった。
このたび改めてこのずらし尺を使って計算したところ,π切断では予想に反して正しい
計算結果が得られないことがあった。計算尺ではある程度の誤差は承知の上で計算するの
であるが,この誤差はちょっと大きすぎる。(このとき,学生時代の試験の答案で,先生
から「ちょっと誤差が大きすぎる」と指摘されたことを思い出した。もしかしたら,ずら
し尺を使ったためではなかったか?)
そこで,今回自分なりにこのずらし尺について考察してみた。
まず,ずらし尺だが,これは計算尺の上側に配置されている。

上の写真で,DF, CF, CIF尺がそれである。ずらし尺でない本来の尺は下側のCI, C, D尺であ
る。通常の乗除算ではCI, C, D尺を使う。なお,CF, CIF, CI, C尺は滑尺に配置されている。
(その他は固定尺である。)
済みません。写真の中の文字が崩れていました。π切断の説明はつぎのとおりです:
π切断の計算尺
上から LL/1, LL/2, LL/3, DF
CF, CIF, CI, C (滑尺)
D, LL3, LL2, LL1
ずらし尺は√10またはπで左右を入れ替えた対数目盛である。視覚的にはそうであるが,
数式では√10またはπを加算した対数目盛と捉えられる。すなわち,
√10切断でのDFおよびCF尺は+√10であり,π切断では+πである。また,CIF尺はCI尺
を左右反転させたようであるが,正確にはCI尺の逆数で目盛ったものである
√10切断では√10の逆数は
1/√10 = 10/√10 = √10 (計算尺では「位」は任意。よって,1はまた10でもある。)
であるから,左右反転させた場合と完全に一致する。
一方,π切断では
1/π = 0.318
となって,両端はπとはならない。この点が√10切断の場合とは異なる。
以下,長々と記述することは避け,問題の核心部分のみを示す。予想した結果が得られ
なかったのはCIF尺を用いた乗算であった。(これ以外は問題ないとは限らない。)例題
で説明しよう。
例.2×6の計算
√10切断の場合とπ切断の場合の結果を下の写真に示す。

√10切断の場合は正しい結果12が得られている。しかし,π切断の方は11.84となっており,
誤差が大きい。
このことを数式で検証してみる。
まず,√10切断では,
log 2 + { log 6 - log (10/√10) } + log √10 = log 2 + log 6 = log (2×6) = log 12 → DF
となって,真数12が答えとして求まる。
一方,π切断では,
log 2 + { log 6 - log (10/π) } + log π = log ( 2×6 ) + log ( π**2/10 )
= log ( 12 × π**2/10 ) → DF
以上からπ切断では π**2/10 だけの誤差が発生していることがわかった。計算すると,
12 × π**2/10 = 11.84
となり,計算尺による結果と一致する。(π**2はπの二乗を意味する。)
代数式ではつぎのようになる。
まず,√10切断では,
log D + { log CIF -log √10 } + log √10 = log ( D・CIF ) → DF(答え)
π切断では,
log D + { log CIF - log ( 10 / π ) + log π = log D + log CIF + log ( π**2 / 10 )
= log ( D・CIFπ**2 / 10 ) → DF(間違った答え)
と表せる。
以上のとおり,√10切断では正しい答えが得られるが,π切断では答えが間違って得られ
ることがある。π切断のずらし尺を使うときはくれぐれもご注意を!
以上
前回記事への補足
百合のような花はキツネノカミソリでしょう。

実は目撃したとき,瞬時にそう思ったのですが,キツネノカミソリにしては時期が早すぎる
と思ったのです。また,色が少し違っているような気もしました。
大キツネノカミソリかも?
以上補足
ご存知であろう。このずらし尺は,目外れを起こしたときに計算を継続させるための工夫
であるが,なぜ2種類あるのか?長年疑問であった。「π切断では技術計算に向いている」
と説明されているが,取扱説明書にも詳しい説明はないし,インターネットで調べても見
つからなかった。
このたび改めてこのずらし尺を使って計算したところ,π切断では予想に反して正しい
計算結果が得られないことがあった。計算尺ではある程度の誤差は承知の上で計算するの
であるが,この誤差はちょっと大きすぎる。(このとき,学生時代の試験の答案で,先生
から「ちょっと誤差が大きすぎる」と指摘されたことを思い出した。もしかしたら,ずら
し尺を使ったためではなかったか?)
そこで,今回自分なりにこのずらし尺について考察してみた。
まず,ずらし尺だが,これは計算尺の上側に配置されている。

上の写真で,DF, CF, CIF尺がそれである。ずらし尺でない本来の尺は下側のCI, C, D尺であ
る。通常の乗除算ではCI, C, D尺を使う。なお,CF, CIF, CI, C尺は滑尺に配置されている。
(その他は固定尺である。)
済みません。写真の中の文字が崩れていました。π切断の説明はつぎのとおりです:
π切断の計算尺
上から LL/1, LL/2, LL/3, DF
CF, CIF, CI, C (滑尺)
D, LL3, LL2, LL1
ずらし尺は√10またはπで左右を入れ替えた対数目盛である。視覚的にはそうであるが,
数式では√10またはπを加算した対数目盛と捉えられる。すなわち,
√10切断でのDFおよびCF尺は+√10であり,π切断では+πである。また,CIF尺はCI尺
を左右反転させたようであるが,正確にはCI尺の逆数で目盛ったものである
√10切断では√10の逆数は
1/√10 = 10/√10 = √10 (計算尺では「位」は任意。よって,1はまた10でもある。)
であるから,左右反転させた場合と完全に一致する。
一方,π切断では
1/π = 0.318
となって,両端はπとはならない。この点が√10切断の場合とは異なる。
以下,長々と記述することは避け,問題の核心部分のみを示す。予想した結果が得られ
なかったのはCIF尺を用いた乗算であった。(これ以外は問題ないとは限らない。)例題
で説明しよう。
例.2×6の計算
√10切断の場合とπ切断の場合の結果を下の写真に示す。

√10切断の場合は正しい結果12が得られている。しかし,π切断の方は11.84となっており,
誤差が大きい。
このことを数式で検証してみる。
まず,√10切断では,
log 2 + { log 6 - log (10/√10) } + log √10 = log 2 + log 6 = log (2×6) = log 12 → DF
となって,真数12が答えとして求まる。
一方,π切断では,
log 2 + { log 6 - log (10/π) } + log π = log ( 2×6 ) + log ( π**2/10 )
= log ( 12 × π**2/10 ) → DF
以上からπ切断では π**2/10 だけの誤差が発生していることがわかった。計算すると,
12 × π**2/10 = 11.84
となり,計算尺による結果と一致する。(π**2はπの二乗を意味する。)
代数式ではつぎのようになる。
まず,√10切断では,
log D + { log CIF -log √10 } + log √10 = log ( D・CIF ) → DF(答え)
π切断では,
log D + { log CIF - log ( 10 / π ) + log π = log D + log CIF + log ( π**2 / 10 )
= log ( D・CIFπ**2 / 10 ) → DF(間違った答え)
と表せる。
以上のとおり,√10切断では正しい答えが得られるが,π切断では答えが間違って得られ
ることがある。π切断のずらし尺を使うときはくれぐれもご注意を!
以上
前回記事への補足
百合のような花はキツネノカミソリでしょう。

実は目撃したとき,瞬時にそう思ったのですが,キツネノカミソリにしては時期が早すぎる
と思ったのです。また,色が少し違っているような気もしました。
大キツネノカミソリかも?
以上補足
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