このたびヘンミの No.40 計算尺を手に入れました。まずはその写真をご覧ください。
写真の上側はケースです。かなり草臥れています。下側はもちろん計算尺本体。片面ですが,長さは10インチあります。
なお,No.40 には中尺の裏側にも目盛りがありますが,ここでは省略します。
この計算尺,”SUN”と引用符が付いています。
お分かりいただけますか?
これは終戦前のものだそうです。(以前,わたしは「戦前」と書きましたが,正確には「終戦前」だとのこと。わたしは「戦前」は「戦中」も含むと思っていたのですが,そうではないようです。訂正します。)
なぜこの計算尺が欲しかったか?それは,この計算尺には A, B, C, D の4つの尺しかないからです。
A 尺と B 尺は C 尺と D 尺の2乗目盛りになっています。そして,A 尺と D 尺は固定尺,B 尺と C 尺は中尺(滑尺)です。
その後の計算尺にはたくさんの尺があって,たとえば No.259D という両面型のものは下の写真のようになっています。
上側の写真を見ると,L, K, A [B, T, S, ST, C] D,DI, LL0, LL/0 の12の尺があり,下側のほうには LL/1, LL/2, LL/3, DF [CF, CIF, CI, C] D, LL3, LL2, LL1 の12尺があります。ここで,[ ]内は中尺であることを示します。いずれも,A, B, C, D が混じって見られます。
実は,A, B, C, D には意味がなく,その他の名前には意味があります。
L 尺 常用対数(Log)
K 尺 3乗(Cubic, この場合頭文字の C を使ったら最初からあった C 尺と区別がつかなくなるので同音のまたはドイツ語由来の K を採用。)
T 尺 正接(Tangent)
S 尺 正弦(Sine)
以下省略します。ということで,ABCDだけ意味がなく,単にABC順に命名しただけのようです。
わたしは以前からこのABCDに疑問を持っていました。そして今では計算尺の原点はこのABCDの4つの尺ではなかったかと思っています。
もちろん,計算尺の歴史は調べたのですが,何だかあまりにも詳しすぎて大きな流れが捉えられませんでした。
C 尺と D 尺があれば掛け算と割り算ができます。そして当時一般に難解だったのは平方根ではなかったでしょうか?それは A, B 尺と C, D 尺とがあればできます。もちろん2乗もできますが,2乗など同じ数を掛ければいいのですからこのことが A, B 尺の導入にはあまり関係なかったのではないでしょうか?要するに最初の計算尺は「乗除と平方根」を簡単に求めるための道具として考案されたのではないかと思うのです。
今日では死語となったとも言える計算尺。なかなかどうしてその誕生とその後の発展には興味津々たるものがあります。
以上