知人から目覚まし時計の修理を頼まれました。
なかなか綺麗な時計です。しかし,よく見ると錆や傷,汚れなどが認められ,長年働いてきた年輪を感じます。
シチズン製ですね。型式などはわかりませんが,背面にNO.51060とあります。
同じく背面に「創立30周年」と書かれています。創立がいつだったか正確にはわかりませんが,(インターネットで調べた結果)1940年だったとすればその30年後は1970年。その頃の時計なのでしょうね。金属製の外装がプラスティックのものに置き換えられつつあった時期にあたります。
1970年と言えば,日本が初めて人工衛星「おおすみ」の打ち上げに成功した年でもありますね。国際標識は「1970ー11A」でした。1970年に11番目に打ち上げられ,軌道分類はAと言う意味です。今でも覚えています。人工衛星を自力で打ち上げた4番目の国でした。つまり,ソ連ー米国ーフランスー日本です。ところが,もう随分以前にある中国人(大学の副教授)にこのことを話したところ,かれは「4番目は中国」と言い張りました。たしかに同時期に中国が人工衛星を打ち上げた記憶はありますが,わずかに日本の方が早かったはずです。歴史認識とは難しいものです。
歴史認識の難しさと言えばつぎのようなこともありました。
1980年代韓国の中央博物館に行ったとき,唐の壁画の模写か写真が展示されていました。その絵は唐の役人3人と外国からの使節3人が描かれていました。その外国からの使節は北方から来た人,西域から来た人と東の方の国から来た人のようです。前2者はその風貌・衣服から明瞭です。問題は最後の人。何とそこには「朝鮮からの使節」だと書かれていました。
実はことき以前にこの壁画をわたしは北九州市立美術館の開館記念講演で見たことがありました。そのときの館長の解説では件の人物は日本人で遣唐使であろうとのことでした。
歴史上の人物でも国によって全く認識が異なることをこのとき思い知らされました。
脱線してしまいました。
背面です。つまみ類などすべてそろっています。
さて,その症状ですが,まったく動きません。ゼンマイは一杯に巻き上げられています。振っても音がしませんので部品が外れているのではないようです。
では,中身を検めましょう。
裏側からねじを4本はずしてプラスティックケースを二つに割ります。時刻合わせのつまみの固定ねじは逆ねじなので要注意です。
ほこりなどなく(当然少しはありますが,)綺麗な状態です。油切れかな?と思いながら側面から周囲を見回すと,
あ!これはいけません。テンプが転がっています。テンプにつながっているひげゼンマイは斜めに伸びています。このひげゼンマイが傷んでなければいいのですが。とにかくテンプとひげゼンマイを引っ張り出して元の位置に納めなければなりません。
ピンセットでつまんで引っ張りますが,どうしてどうしてびくともしません。どうりで振っても音がしなかった訳だ。ピンセットをラジオペンチに持ち替えてひげゼンマイを傷めないよう注意しながら引き出すことに成功。上下の軸受けに納めますが,これがなかなか大変。
まあ,それでも何度か挑戦した結果元の鞘に収まりました。
すぐに動き出すと思いきや,動きません。そうです。油切れです。
すべての歯車の軸受け部分に注油するとコチコチと小気味よい音で動き始めました。
以上