川村元気がプロデュースした映画「告白」、というつながり。
第1章から6章までどこを読んでも背筋がブルっとするような内容ですが
衝撃だったのは、ただ淡々と森口先生がしゃべるだけの第1章。
小説としてこの1章だけでも充分震撼とさせるものがありますし、この後プラス5章もあるけど・・・
という何か嫌な予感を感じさせてたまま、ああやっぱり、そしてこれぞイヤミスという展開でした。
ただこの1章で語られている内容はとても濃く、生徒に向かって話している内容であるのに
彼女はこのときもう「先生」という立場を捨てているように見えます。
教師という仕事についての考え、ドラマと現実の違い、年齢で区切る少年法、
マスコミの報道の仕方などについて、通常言いたくても言えないような本音でズバズバ切り込む強さに、
娘を殺された母親の全身にたまった冷たいエネルギーを感じました。
「あなたの望む猟奇的殺人事件なんかにはしません。」
「警察に真相を話さなかったのは、AとBの処罰を法に委ねたくなかったからです。」
「罪の重さを知り、それを背負って生きてほしい。」
これが先生のねらいであり、このあとのプラス5章はこのためにあります。
結果、AとBを待ち受けた未来は悲惨であるものの、たとえそれがもっと悲惨になろうと先生の
気が済むかどうかにはまったく無関係なのです。
最終的にAは愛してきた母親を許せなくなる、先生は夫が最期においてまで教師であったことを
許せない、そんな状況にたどりつくことになった二人は似ているのかもしれません。
Aにとっては母親を殺すより、自分が死んだ方がラクなわけです。
だからこそ、爆弾で自分も吹っ飛んで終わり、などという甘い結末にさせない、という先生の
執念がラストにつながるのも自然なことのように思えてしまうのがまたコワイところです。