かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

ブログ版  馬場あき子の外国詠 91(スペイン)

2018年09月24日 | 短歌一首鑑賞
 ブログ版馬場あき子の外国詠10(2008年7月9月実施)
  【西班牙 2 西班牙の青】『青い夜のことば』(1999年刊)P55~
    参加者:N・I、M・S、崎尾廣子、T・S、藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:T・H    司会とまとめ:鹿取 未放


91 母たちは巨鯨 娘はガレの蝶 あした西班牙の陽にひかりあふ

      (レポート)
 ガレ:(1846~1942)フランスのガラス工芸家。アール・ヌーボー様式の代表者の一人。
 スペインの母親達は食べ物のせいか巨鯨のようだ。それに比し娘達は何と華奢で繊細な曲線を持ちスマートなことだろう。ガレの蝶細工のように美しくスペインの陽光の下、光り輝いている、と馬場は街を行き交う人々を眺めながら感慨にふけっている。(T・H)

     (まとめ)
 娘を「ガレの蝶」ととらえたのが的確である。若い女性はきゃしゃで美しく華麗なのである。豊かな体躯の母ときゃしゃな娘がお互いに陽光のもと輝いているのもよい。蝶のような美だけを肯定せず、あくまで母と子が等価であるところが面白い。 
 なお、この一連、構成が見事である。ジパングとしてマドリッドに花を浴びている軽い緊張から始まり、西洋の象徴のような尖塔に圧倒され、緊張の極みに日本初の遣欧使節としてスペインへ渡り洗礼を受けた支倉常長のことを深く思索する。さらに緊張は続き美術館へ行ってグレコやゴヤと対峙する。そして最後に緊張から解放され、人々の中に個は埋没し、街を歩く母子を軽やかに描写する。この息の抜き方が読者をほっとさせる。(鹿取)


ブログ版  馬場あき子の外国詠 90(スペイン)

2018年09月24日 | 短歌一首鑑賞
 ブログ版馬場あき子の外国詠10(2008年7月9月実施)
   【西班牙 2 西班牙の青】『青い夜のことば』(1999年刊)P55~
    参加者:N・I、M・S、崎尾廣子、T・S、藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:T・H    司会とまとめ:鹿取 未放


90 胸や肩や寛(くつろ)かに着て街をゆく巨鯨のやうな母の貫禄

     (レポート)
 スペインの女性は、若い時はスマートだが年をとると貫禄満点の姿に変貌する。凄いなあと馬場も感心して見ている。(T・H)


     (まとめ)
 「寛かに」がゆたかな体躯にひらひらとうすものをひっかけている西洋の婦人の様を見事に言い得ている。「巨鯨のやうな」も微笑ましい。悪意や揶揄ではなく、優しい視線が感じられる。(鹿取)