【愁嘆声】『寒気氾濫』(1997年)47頁
参加者:渡部慧子、鹿取未放、鈴木良明(紙上参加)
レポーター:渡部慧子
司会と記録:鹿取 未放
◆大雪の為、勉強会の日程を急遽変更。鈴木良明の(意見)は、事前送付のものです。
110 ひとり夜にうずくまるとき闇よりも真っ黒なもの 犀のにおいす
(レポート)(2014年2月)
夜になってひとりうずくまるときがあるのだが、それは闇より黒く「犀のにおいす」と孤独を詠っていよう。犀のごとくひとりゆけと仏陀は言ったが、存在の寂しさにたえて修行せよとの意味へ掲出歌を広げなくてもよいと思う。作者自身のその時の孤独を、人間としての美醜や、智恵を捨てたものとして、動物も自分も同じところにいる感があったのではないか。「真っ黒なもの」と突き放している。いずれにせよ「犀のにおいす」とは観念にたよらず、すぐれた結句となっている。
(慧子)
(意見)(2014年2月)
犀は、「地下に還せり」のなかでも、「犀の放尿」として詠われているが、この歌でも孤独の象徴としての犀に自らを重ねて詠んでいる。夜の底でひとり眠りに就くとき、闇よりも真っ黒なものに向き合っている孤独な姿(しかし独り生く気概を持つ)が、そこにはある。(鈴木)
(発言)(2014年2月)
★「人間としての美醜や、智恵を捨てたものとして」というところが分からないんだけど。
(鹿取)
★学んできた智恵とか、美醜とかは関係なく人間も動物と同じだということです。(慧子)
★生命を持つ存在として人間も動物も同じ、というのはよく分かります。孤独とか寂しいという
ような概念で捉えられる以前の、意識にはのぼらない原初的な存在そのものの感じを犀のにお
いとして捕らえていて、「観念にたよらず、すぐれた結句」というのは全く同感です。(鹿取)
★鈴木さんは向き合っていると書いているけど、私は動物と向き合ってはいなくて、動物のよう
に動物と同じ孤独感でもって自分もそこにいると思います。動物になりきっていて自分を対象
化してしないんです。鈴木さんのは知が勝った解釈です。(慧子)
★人間も動物も、どの個であっても「闇よりも真っ黒なもの」である、そしてそれはいわ
ば「犀のにおい」がしている、動物だ人間だという点に差異はない、ということですか?
人間が学んできた智恵や知識を取り去って、とさっきおっしゃったのはそういうこと
ですか。それならよく分かります。(鹿取)
★ あと細かいことですけど、鈴木さんの「夜の底でひとり眠りに就くとき」は、うずくま
るとは姿勢が違うので、眠るときとは違うかなあと思いました。(鹿取)
参加者:渡部慧子、鹿取未放、鈴木良明(紙上参加)
レポーター:渡部慧子
司会と記録:鹿取 未放
◆大雪の為、勉強会の日程を急遽変更。鈴木良明の(意見)は、事前送付のものです。
110 ひとり夜にうずくまるとき闇よりも真っ黒なもの 犀のにおいす
(レポート)(2014年2月)
夜になってひとりうずくまるときがあるのだが、それは闇より黒く「犀のにおいす」と孤独を詠っていよう。犀のごとくひとりゆけと仏陀は言ったが、存在の寂しさにたえて修行せよとの意味へ掲出歌を広げなくてもよいと思う。作者自身のその時の孤独を、人間としての美醜や、智恵を捨てたものとして、動物も自分も同じところにいる感があったのではないか。「真っ黒なもの」と突き放している。いずれにせよ「犀のにおいす」とは観念にたよらず、すぐれた結句となっている。
(慧子)
(意見)(2014年2月)
犀は、「地下に還せり」のなかでも、「犀の放尿」として詠われているが、この歌でも孤独の象徴としての犀に自らを重ねて詠んでいる。夜の底でひとり眠りに就くとき、闇よりも真っ黒なものに向き合っている孤独な姿(しかし独り生く気概を持つ)が、そこにはある。(鈴木)
(発言)(2014年2月)
★「人間としての美醜や、智恵を捨てたものとして」というところが分からないんだけど。
(鹿取)
★学んできた智恵とか、美醜とかは関係なく人間も動物と同じだということです。(慧子)
★生命を持つ存在として人間も動物も同じ、というのはよく分かります。孤独とか寂しいという
ような概念で捉えられる以前の、意識にはのぼらない原初的な存在そのものの感じを犀のにお
いとして捕らえていて、「観念にたよらず、すぐれた結句」というのは全く同感です。(鹿取)
★鈴木さんは向き合っていると書いているけど、私は動物と向き合ってはいなくて、動物のよう
に動物と同じ孤独感でもって自分もそこにいると思います。動物になりきっていて自分を対象
化してしないんです。鈴木さんのは知が勝った解釈です。(慧子)
★人間も動物も、どの個であっても「闇よりも真っ黒なもの」である、そしてそれはいわ
ば「犀のにおい」がしている、動物だ人間だという点に差異はない、ということですか?
人間が学んできた智恵や知識を取り去って、とさっきおっしゃったのはそういうこと
ですか。それならよく分かります。(鹿取)
★ あと細かいことですけど、鈴木さんの「夜の底でひとり眠りに就くとき」は、うずくま
るとは姿勢が違うので、眠るときとは違うかなあと思いました。(鹿取)