馬場あき子の外国詠11(2008年9月実施)
【西班牙3オリーブ】『青い夜のことば』(1999年刊)P58~
参加者:F・I、N・I、T・K、N・S、崎尾廣子、T・S、
藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:渡部慧子 まとめ:鹿取未放
93 乾大地赫ければ半裸かがやかせオリーブ植うる南へ南へ
(レポート)
「乾大地」とは92番歌(ラ・マンチヤはゆけどもゆけども向日葵の黄の荒寥に陽の照るところ)のラマンチャをも含むメセタの乾燥型大地を指していよう。さらにこの地方の写真の赤い大地を、代表的景として紹介している。それを「赫ければ」と詠っているのだが、その正体は次のように説明されている。イベリア半島は、〈石灰岩、泥灰岩、粘土など海底堆積物〉が変動により半島内部のメセタをなし、〈石灰岩、泥灰岩、粘土など海底堆積物〉が激しい風化をうけたことによる石灰岩中の不純物に由来していると。
また「赫」は、(勢い盛んなさま、明らか、かがやか、怒る)という意味を持ち、赤の(あきらか、あらわ、緋・紅・朱などの総称)の意より力が強く、作者の大地への畏敬をこめたこだわりの方言であろう。
一方「半裸かがやかせオリーブ植うる」とは高温乾燥の大地に働く人々へ涙ぐましい思いを起こさせ美しい賛歌となっている。その賛歌は「南へ南へ」の結句に収斂されている。(慧子)
(当日発言)
★スペインという土地の宿命(崎尾)
★(慧子さんの評「涙ぐましい思いをおこさせ」に関して)どのフレーズがそうなのか、自分は そういう感想を持たない。(藤本)
(まとめ)
この歌も明るい牧歌的イメージなのか、貧しさゆえに苦労している農民の姿なのか意見が分かれた。私は赫い大地と人間が対峙している力強い風景をうたっているように思う。「南へ南へ」は大地の広さと移動のダイナミックさを伝えて躍動感がある。半裸をかがやかせて乾大地と格闘している人間の姿は、慧子さんの評のように、ある意味で涙ぐましいともいえる。 (鹿取)
行けど行けど乾く山々頂きを占めて列よしおさなきオリーブ
影山美智子