渡辺松男研究30(2015年8月)【陰陽石】『寒気氾濫』(1997年)104頁
参加者:石井彩子、M・S、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:石井 彩子
司会と記録:鹿取 未放
248 砂袋に砂満たされてあるときのエロスのような重さ持ち上ぐ
(レポート)
安部公房の『砂の女』を思わせる、「男」にとって「砂」は自由を奪うものであるが、やむを得ず同棲することになった「女」は「砂」に順応している。砂袋一杯の変容自在な砂は、それにまみれて生活をする「女」のとりとめのない肉体、エロスを思わせる、持ち上げる行為は「男」が砂を穴から掻き出す行為でもある。(石井)
『砂の女』:海辺の砂丘に昆虫採集にやって来た男が、女が一人住む砂穴の家に閉
じ込められ、様々な手段で脱出を試みる物語。不思議な状況設定を写
実的に表現しながら、砂の世界からの逃亡と失敗を繰り返していた男
がやがて砂の生活に順応し、脱出の機会が訪れても逃げない姿に、市
民社会の日常性や、そこに存在する人間の生命力の本質と真相が象徴
的に描き出されている。(Wikipedia)
(当日意見)
★砂袋というのは持ち上げると形がぐにゃっとなったりするので、それで作られた歌だと
思います。(M・S)
★変容自在な砂袋をイメージしているのです。(石井)
★砂の重さに愛の重さを偽しているのかなと思いました。小説はエロスでしょうが、この
歌は愛について考えているのかなと思っていました。(曽我)
★エロスの混沌を詠っているのかなと思いました。(慧子)
★私は単純に持ち上げたときのくにゃくにゃ感と、持った方もよろめいたりするそんなイメ
ージを女性を抱いた時の感覚にみているのかなと思っていました。「砂の女」は文学的知識
しかなくて実際読んでいないので、小説との関連については、すみませんが何とも言えま
せん。(鹿取)