かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

ブログ版  馬場あき子の外国詠 83(スペイン)

2018年09月16日 | 短歌一首鑑賞
 ブログ版馬場あき子の外国詠10(2008年7月9月実施)
  【西班牙 2 西班牙の青】『青い夜のことば』(1999年刊)P55~
    参加者:N・I、M・S、崎尾廣子、T・S、藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:T・H    司会とまとめ:鹿取 未放

          
83 ジパングは感傷深き小さき人マドリッドにアカシアの花浴びてをり

      (レポート)
 「ジパング」はいうまでもなくマルコポーロが『東方見聞録』において、日本を指した言葉。ここでは詠者である馬場を指しているのか、同行者全員を指しているのか。「感傷深き小さき人」日本人は確かにヨーロッパ人、とりわけスペイン人よりは身体的に小さい。今、詠者である馬場はマドリッドの大きなアカシアの木の下で、その花びらを浴びつつ、日本人とヨーロッパ人の精神構造の違い、地理的・風土的な違いを、しみじみと感じている。今回のスペイン旅行詠で、馬場はジパングという言葉を使うことによって、日本とスペインとの歴史的な背景にまで思いを致している。その心のあり方が「感傷深き小さき人」に表現されていると思う。(T・H)

  
     (まとめ)
 2首前では「ジパングの国より来たる感情の溺れさうなる西班牙の空」と詠ってジパングと空を取り合わせていたが、この歌ではアカシアとの取り合わせ。空の歌よりも感傷が限定できそうだ。「感傷深き小さき人」は花を浴びているのは同行者も同じだが、「感傷深き」を考えると作者のことと限定して考えたい。ちなみにアカシアは古代イスラエル人には聖木であったそうだ。(鹿取)