馬場あき子の外国詠(2009年7月)【ムスタン】『ゆふがほの家』(2006年刊)92頁
参加者:泉可奈、T・S、T・H、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:渡部 慧子
司会とまとめ:鹿取 未放
154 夢と思ひしヒマラヤの雄々しきマチャプチャレまなかひに来てわれを閲せり
(レポート)(2009年7月)
「夢」とはヒマラヤについて多くの人が冠する言葉であるが「夢と思ひし」は「ヒマラヤの雄々しきマチャプチャレ」にまで掛かっていよう。宗教上の理由から登山許可の出されていない聖なる山が「まなかひに来て」のとおり作者に近づいてきた。もちろん、高速で近づくと自分の方か相手方なのか、錯覚を起こすこともある。
さてそのマチャプチャレが「われを閲せり」と作者を見て調べているという。雄々しい聖者ならばありうる話だ。だが作者も相手の意中をちゃんとみてとって呑まれてしまってはいない。
スケールの大きさに擬人法という手法さえかすんでしまって、実感として壮大な気分がつらぬかれている。(慧子)
(まとめ)
ヒマラヤを現地で眺めるなどということは夢にすぎないと思っていたが、はからずもヒマラヤにやってくることができた。そのヒマラヤの中でも雄々しきマチャプチャレが今まなかいに存在する。そして「お前は何者だい?」とでもいうような感じで目の前に聳えていたというのだろう。小さな人間である〈われ〉はここではしっかりとマチャプチャレに対峙しているようだ。(鹿取)
*「魚のしっぽ」という意味のマチャプチャレの秀麗な姿を写真で示せばよく分かるのですが、
当時はデジカメではなかったので掲載できません。ご存知でない方は、ぜひネットの旅行記な
どでヒマラヤの山々の姿をご覧になってください。