かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

ブログ版 渡辺松男の一首鑑賞 2の100

2018年09月07日 | 短歌一首鑑賞
  ブログ版渡辺松男研究2の14(2018年8月実施)
    【はだか】『泡宇宙の蛙』(1999年)P69~
     参加者:泉真帆、A・K、T・S、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:泉真帆    司会と記録:鹿取未放


100 穴ぼこの底から空を見上げてみよときどき雲のとおるゆたけさ

     (レポート)
 「穴ぼこ」は何か地中に棲む生き物の巣なのかもしれない。地下に苦しむ人々の喩ともとれるが、それはやや偏った鑑賞かもしれない。しかし、光の届かない小さなところ、わずかな希望から雲のゆたかな動きをみるというのは、単に空を見るよりさらに豊かさを増すだろう。(真帆)


     (当日意見)
★私は穴ぼこは自分で掘ったもののようにイメージしていました。(鹿取)
★臭くみると、人間は穴ぼこにいて、空には神様や仏様がいて永遠なるものがあるんですよ、
 という感じだけど、そうじゃないんだと思う。昔、子ども時代落とし穴を作ったことがある
 んですよ。それで、人が落っこちると喜んでいた。そういう穴ぼこから空を見たら雲がすー
 と通っていく、それだけなんです。でも渡辺さんにしては「ゆたけさ」ってここまで言うか
 なって思った。雲が通って行くだけでいい。もちろん、おっしゃりたいことは分かるしこう
 いう世界大好きなんだけど、自分が存在するって大したことではないんだねって。形而上学
 的な事とか永遠とか、この人のそういうところが好きなんですけど。(A・K)
★「壺中の天」を私は思いましたが。(慧子)
★私はA・Kさんと違って「ゆたけさ」に眼目があると思ったのです。先日、飛行機に乗って
 雲を見ました。夕焼けに染まってそれはそれは美しかった。上にも下にも雲が見えたのです。
 穴から見上げるのと、飛行機から下の雲を見下ろすのは違いますが。(真帆)