馬場あき子の外国詠3(2007年12月実施)
【阿弗利加 1サハラ】『青い夜のことば』(1999年刊)P159~
参加者:N・I、Y・S、崎尾廣子、T・S、高村典子、藤本満須子、
T・H、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:藤本満須子 司会とまとめ:鹿取未放
22 行けば足下に崩るる砂ある赤きサハラ糞ころがしを生かし沈思す
(まとめ)
サハラ砂漠はアフリカ大陸の三分の一近くを占める、沙漠は全体としては堅固でも人が歩こうとして踏めば砂は崩れる。何も生まないと作者がうたったサハラは、黙って糞ころがしを生かしてもいる。もちろん恐ろしい蠍などもいるのだが、糞ころがしというある意味こっけいな生態をもつ小動物だからこそ、沙漠が生かすと詠むにふさわしいのだろう。(鹿取)
(レポート)
結句の「生かし沈思す」の主語は赤砂のサハラである。20番歌にもスカラベはうたわれ、また同行した清見糺氏の歌〈スカラベ〉一連を読むとその様子が活写されている。
サハラを「愛はとうに滅べり」とうたいながらも、そのサハラの砂は「糞ころがしを生かし沈思す」とうたわざるを得ない作者、古代エジプトでは太陽神の象徴として崇拝され、ミイラの心臓の上に置かれたものは復活を祈願する……
まさに深い沈黙のなかにある沙漠、そして「沈思す」るのも作者でもあるのか。(藤本)