かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

ブログ版 渡辺松男の一首鑑賞 2の107

2018年09月14日 | 短歌一首鑑賞
  ブログ版渡辺松男研究2の14(2018年8月実施)
    【はだか】『泡宇宙の蛙』(1999年)P69~
     参加者:泉真帆、A・K、T・S、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター:泉真帆    司会と記録:鹿取未放


107 川となり家族は眠る月夜にて水こぼしつつ川うらがえる

      (レポート)
 お父さん・子どもたち・お母さん。布団に寝るさまを川の字で寝るというが、その家族の川が、寝返りをうちながら月夜にしんしんと寝ているのだ。寝返るさまを「川うらがえる」と表現し、水こぼすという。「月夜」が効果的で美しいポエムに仕上がっていて、余韻がすばらしいと思う。


     (当日意見)
★きれいですよね。きっと月光が差したんでしょうね、それで光る感じがして。川の字になったこ
 の家族だけではなく他の家族にも、人類にも広がっていく普遍性を持っている。裏返るも詩的で、
 ここに時間があって永遠性というものも  考えられる。ほんとうに好きな歌です。(A・K)
★「水こぼしつつ」はどういう状態なんですか?(T・S)
★月の光が当たっているので、それが水に濡れたような感じになる。月夜という場面設定が用意周
 到ですね。一首の中に透明な月の光がスーと流れているような感じがする。川も2回使っている
 けれど嫌な感じがしないし。(A・K)
★いつも月夜の川を見てるんでしょうね。理科少年だったのかなと思いました。(T・S)
★でも、この人のいい歌って難しい言葉を絶対に使わないんですよね。(A・K)
★うーん、松男さんの歌に難しい言葉が全くでてこない訳でも無いですけど。精神現象学的な巨大
 ビルとか、意馬心猿のごときものがビルを高くするとか難しい概念の言葉が出てきて、うわあぁ
 ~となった歌も第一歌集にはありましたけどね。まあ、今のはいい歌という限定付きだから違う
 けど。(鹿取)