かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

馬場あき子の外国詠218(中国)

2017年10月03日 | 短歌一首鑑賞

  馬場あき子の旅の歌29(2010年6月実施)
     【李将軍の杏】『飛天の道』(2000年刊)176頁
      参加者:Y・I、T・K、曽我亮子、T・H、藤本満須子、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター:T・H
      司会とまとめ:鹿取 未放


218 杏仁水あえかに冷えてのみどゆく鳴沙山の月見しは嘘ならず

      (レポート)
 今、先生は、中華料理の後に出される杏仁水を召し上がっていられる。それは冷たく心地よい。私が鳴沙山の上に上った月を見たのは、夢ではない、本当なのだ、と信じられないような仕合わせを感じておられる。(T・H)


     (まとめ)
 出だしが、杏仁水、あえかにと頭韻を踏んでいる。あえかに、の柔らかな語感が、一首に夢のようにはかない気分を醸し出している。216番歌(鳴沙山を静かに上る秋の月砂のみを照らし来しおそろしさもつ)、217番歌(鳴沙山に怪異のごとき月出でてアメリカにうすい朝かげさすや)では「鳴沙山」に昇る怪異のごとくおそろしい月を見ていたのだが、それがはるか異界のできごとだったように、あるいは夢の中のできごとだったように感じられたのだろう。だから「嘘ならず」とだめ押しをしているのだ。どこかオアシス都市に移動してからの感慨だろうか。夢から覚めて放心したような気分を、上の句の柔らかなフレーズがよく伝えている。(鹿取)



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2 コメント

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杏仁水とは? (中来田明男)
2017-10-04 00:10:06
さて、食後のデザートのようなものなのか?「あえか」にというので、おそらくキンキンに冷えているわけではなさそうですし、咳止めの薬なら冷やす必要もなさそうです。「杏仁」の味のする飲み物なのかもしれません。(杏仁露という缶入りの飲料を飲んだ記憶がありますが)
作者はどこで「杏仁水」の冷たさを感じていらっしゃるのかで風景も変わってきそうです。

https://baike.baidu.com/item/%E9%9C%B2%E9%9C%B2%E6%9D%8F%E4%BB%81%E9%9C%B2/5530203

また、「杏仁」の読み方も気になるところですが、スルーされるところかもしれません。
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杏仁水 (鹿取未放)
2017-10-04 19:31:59
中来田さま
コメント、ありがとうございます。
検索したら確かに杏仁露というのは出てきましたね。
どんな味でしたか?
こんど先生に聞いておきますね。
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