かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

渡辺松男の一首鑑賞 305

2016年04月26日 | 短歌一首鑑賞

 渡辺松男研究37(16年4月)
    【垂直の金】『寒気氾濫』(1997年)126頁
     参加者:石井彩子、泉真帆、M・S、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:泉 真帆
     司会と記録:鹿取 未放

305 髄膜炎四十一度でわが見しは重油うずまくごとくなりけり

      (レポート)
(解釈)髄膜炎で四十一度の高熱を出している作者は、どろどろと重く、窒息してしまいそうな重油のうずまく中にいる。
(鑑賞)「重油うずまく」は、戦艦大和の護衛艦「矢矧」が、撃沈され、兵が沖縄の海に投げ出され、重油まみれに沈んでゆく場面を思った。(真帆)


      (当日発言)
★これはこのまま実感かなあと思いました。私も腎盂腎炎で四十一度以上の熱出したことありますけど、こんな感じだったから。
 入院していた時、遠く離れた道路を夜中に車が通る音が耳元で鳴る轟音に聞こえました。(鹿取)
★これは分かりやすい歌です。重油が渦巻くような朦朧とした感じがうまく表現されている。真帆さんみたいにそこから社会詠の
 ようにとるのもありかなと思います。(石井)
★水に重油が渦巻いていろんな色に見える、あの気持ち悪いような感覚。(鈴木)