勿忘草 ( わすれなぐさ )

「一生感動一生青春」相田みつをさんのことばを生きる証として・・・

秋は来(き)ぬ

2013-10-04 22:27:11 | Weblog

卯の花の 匂う垣根に
ほととぎす 早も来鳴きて
忍音もらす 夏は来ぬ

 唱歌「夏は来(き)ぬ」で歌われるように「ほととぎす」は夏の鳥である。その鳴き声は「キョッキョッ キョキョキョキョ」と聞こえるようだが、人間の言葉に当てはめる「聞きなし」では「ホ・ト・…・ト・ギ・ス」とか「トッキョキョカキョク」や「テッペンカケタカ」などがある。

 今日の東京は肌寒いと感じるほどの気候だったが、いよいよ秋は来(き)ぬである。つまり本格的な秋が来たのである。ベランダの植木たちも夏の配置から変えようと、昨日大きなプランターの向きを変えた。すると紫陽花の葉陰にひっそりと咲くホトトギスの花を見つけた。


 鳥のホトトギスは夏を告げる鳥として知られ、その年に初めて聞く鳴き声を「忍び音」いうそうだが、秋に咲くホトトギスの花は忍ぶように日陰に咲く。花言葉を「秘めた意志」というように、その控えめさは、これ見よがしに咲く花よりも好きである。

 葉陰に咲いた一輪のホトトギスの花も、今日はしぼんでしまったが、もしプランターの向きを変えなかったら、せっかく咲いた花も誰にも見られずに寂しく散ってしまっただろう。


 花のホトトギスは鳥のホトトギスと同名であり、花びらの小紫点が鳥のホトトギスの毛の模様と同じところからきているらしい。鳥のホトトギスにはこんな逸話もあるそうだ。

 貧しい兄弟がいました。目の悪い兄は家に閉じこもって暮らしていたが、弟は兄のために美味しい山芋を掘ってきては食べさせ、自分はしっぽばかり食べていました。目の見えない兄は心が荒み、弟は隠れて美味しいものばかり食べていると思い込み、ある日、弟の腹を裂いて殺してしまいました。すると突然目が開き見えるようになりました。弟の腹にあったのは粗末な山芋のしっぽだけ。兄は弟に「すまない、すまない」とつぶやきながら、魂がぬけて鳥になって飛んで行きました。その鳥がホトトギスであり、「オトウトコイシ(弟恋し)」と鳴くようになったとか。

 ホトトギスの鳴き声はいろいろな「聴きなし」があるが、そういえば「鳴いて血を吐くホトトギス」などという言葉もある。我が家のホトトギスの花は、辛うじて僕の前に姿を現し、忍び寄る秋の風にひっそりと散っていった。今宵はセンチメンタルな秋の夜である。