地震の1週間後のことだ。
海岸の瓦礫を撤去していたら、仏さまがお出ましになった。
よく見ると左手の薬指がなかった。
その日はもう一人の仏さまを見つけてしてしまったが、その方も左手の薬指がなかった。
考えたくはないが、誰かが刃物で指を切って指輪を盗んでいるのかもしれない。
連絡してやってきた警官に聞いたら、薬指だけ無い仏様は珍しくないそうだ。
遺体の指は膨らんでいて指輪は抜けないから、盗むなら切らないといけないのだ。
ときには左手首のない仏さまもいるそうだ。時計を盗るのだという。
同じ日本人がやっているとは思いたくない。
俺は、遺体を仏さまと見ない外国人の仕業と考えるようにしている。
そうでないと、日本人のため、郷土のため、と思ってやっている事がむなしくなるから。