daisukeとhanakoの部屋

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地方再生は幻か…創業320年の老舗百貨店破産の「厳しすぎる現実」

2020年02月09日 11時50分45秒 | 山形の風景

2020年1月30日 7時0分 現代ビジネス

老舗百貨店、破産…!
山形県で唯一の百貨店、しかも初代大沼八右衛門が元禄13年(1700年)、山形市の中心地・七日町に創業、松坂屋、三越に次ぐ全国で三番目の老舗の「大沼」が、1月27日、破産を申請した。

26日で営業は停止、従業員191名は同日付けで解雇、負債総額は25億円にのぼる。記者会見した長沢光洋代表取締役は、突然の破産理由を、「昨年10月から異次元の売り上げの落ち込みがあり、民事再生法も考えたが時間がなかった」と、説明した。
日本百貨店協会加盟の百貨店がなくなる都道府県は山形が初。同時に、商品券を扱う(株)大沼友の会も破産を申請した。大沼の商品券は使えなくなり、高利回りで人気が高い百貨店の「友の会商法」にも影響は及ぶ。
百貨店のビジネスモデルが崩壊、各地で百貨店の閉店が相次いでいるが、大沼の破産は、地方中核都市の地域一番店も生き残れないという厳しさを伝えている。
破産に至る経緯を辿ろう――。
老舗デパート「大沼」
信用不安説が何度も流され…
大沼は、2000年に売上高200億円を誇り、その頃まで「大沼」の包装紙はステータスだった。しかし、そこをピークに郊外の大型商業施設やネット通販に客足を奪われ、18年2月期には81億円まで売り上げを落とし、16期連続の減収、4期連続の赤字だった。
経営再建が急がれ、17年12月、創業家から投資ファンド「マイルストーン・ターンアラウンド・マネジメント(MTM)」への経営権譲渡が決まり、18年4月、株式を100%減資のうえ、MTMが出資して子会社とし、借入金は山形銀行などが債権放棄、再スタートを切った。
だが、MTMには「ターンアラウンド」をさせるだけの実力はなかった。盛岡市の商業施設「ななっく」、箱根の老舗旅館「俵石閣」、熊本駅前のホテル「ザ・ニューホテル熊本」、共同投資の兵庫の百貨店「ヤマトニシキ」などを抱えていたが、いずれも再建に苦労していた。
苦境を象徴するように、MTMは大沼再建のために6億円を用意、山形本店と米沢店を改装、服飾から食品に重心を移して収益力向上を目指すとしていたが、6億円の予定が3億円しか集まらず、それも借入金の返済や諸費用に回し、“真水”の再生費用は4100万円に過ぎなかった。
その実態が明らかになると、「MTM自身が火の車で、資金繰りのために、大沼という名門のハコを利用している」(地元金融関係者)という批判が高まり、地元紙などでバッシングが続いた。
信用不安説が何度も流され、19年2月20日には、佐藤孝弘山形市長、清野伸昭山形商工会議所会頭(当時)などが記者会見を開き、「山形から百貨店の灯を消すな」「大沼で買い物をして支えていこう」と、市民に異例の呼びかけをした。
一方で、MTMに対する幹部社員・従業員の反発はやまず、3月22日、従業員らでつくった大沼投資組合(株)が、経営権を取得したうえでMTM社長でもある早瀬恵三社長を解任した。
解任された社長が語ったこと
この時、筆者は本サイトで<山形激震…創業320年の百貨店を解任された社長の「悔悟と言い分」>(19年3月26日配信)と題して、インタビューを掲載した。
早瀬氏は、資金不足や大沼再建を託した人の人選を誤るなど「多くの反省点はある」としたものの、「地方再生というスキームに無理があるのではないか」という質問に対しては、こう強気に答えた。
「実売の商業施設全体が曲がり角に来ていますが、そのなかから復活の芽は生まれ、新たなビジネスが立ち上がっています」
だが、早瀬氏は「復活の芽」を生むことは出来なかったし、早瀬氏の後任となった大沼幹部の永瀬孝氏も、立て直すには至らず、6月に入ると、元社長の長沢光洋氏が共同代表に返り咲いた。
体制は変わったが、大沼の高コスト体質は変わらず、市長などの呼びかけに対する反応も一瞬に終わり、退潮は止められなかった。苦境を見越した取引先は支払いサイトの短縮を求め、資金繰りは悪化。県内でホテルや不動産業を営むスポンサーによって支えられる状況が続いた。
地方再生は幻だったのか
8月に入ると米沢店を閉鎖。七日町本店での復活を図るが、本店も老朽化し、魅力を取り戻せず、「七日町全体の一体再開発」という計画も掛け声だけで、前に進める人材も資力もなかった。
そうしたなか10月に入ると、スポンサー企業に本店の土地建物を売却。そこで得た資金を支払いに回すなど、いよいよ崖っぷちに追い込まれ、そこに消費税アップの波が襲って困窮する。
年末年始は、歳末セールや初売りなどでしのぐが、1月27日の段階で500社への支払いがあり、約4億円の債務を返済するメドは立たなかった。スポンサーへの支援を求めるにも限界があるとして、長沢社長は、26日の段階で破産を決めた。
友の会の積立金が3億6000万円で商品券の発行残高が5億円。半額は保全されるが、取引先だけでなく、顧客にも大きな迷惑をかける破産となった。今後、各百貨店の「友の会」にも影響を及ぼすのは必至だ。
創業家がギブアップしてからの2年間に、MTMやスポンサー企業が登場、経営幹部は新機軸を打ち出そうとしたが、いずれもうまくいかず、破産に向けて落ちていく状況を止められなかった。
MTMとそれを引き継いだ経営陣の能力不足、再生へ向けての資金不足は否めない事実で、地方再生が幻とはいえないが、百貨店を中核にした地方再生がかなり難しいことは、大沼の事例が示す。
今後も全国の地方百貨店で、同様の事例が発生するのは避けられまい。