私が大学2年の夏でした。仙台の子平神社のお祭りの日ですから7月20日のことです。
私の親友のT君は、当時付き合っていた短大の女の子に、お祭りの露店で200円の指輪を買ってあげたのです。
数日後、その子はT君のアパートに鉢植えのくちなしの花を抱えてやって来ました。
T君は花の名前も、花言葉も知らなくて、「この花の花言葉って何?」と聞いたそうです。その子は恥ずかしそうに「自分で調べて・・・」と言いました。
当時はパソコンも花言葉辞典もなくて、T君は気にはなっていたけど(めんどうくさいので)調べもしないでいました。
くちなしの甘い匂いは6畳のアパートには強すぎて、ベランダに出していたら水遣りも忘れて、いつのまにか枯らしてしまったのでした。
その枯れた花を見て、その子はT君の部屋に来なくなりました。
T君が花言葉も調べないでいたのも悪かったのです。
何年か後、私は本屋でくちなしの花言葉を調べました。それは「とっても幸せ」でした。
T君がもう少し早く、もう少し真面目に調べていたら彼の人生もまた違っていたかもしれません。
結局T君は別の女性と結婚し、現在神奈川県に住んでいます。去年娘さんがお嫁に行ったとメールが来ました。娘さんも彼氏に花をあげたりしたのでしょうか。
毎年今頃、くちなしの香りをかぐたびに、私はT君とその子のことを思い出すのです。